eぶらあぼ 2019.7月号
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172CDCDJ.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲(ヴァイオリン版/世界初録音)/レイチェル・ポッジャーザレンプスキ:ピアノ作品集/江崎昌子ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第3番&第9番/ウェールズ弦楽四重奏団J.S.バッハ:トッカータ vol.2/家喜美子J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番~第6番(ヴァイオリン版)レイチェル・ポッジャー(ヴァイオリン)ユリウシュ・ザレンプスキ:グランド・ポロネーズ、5つの即興曲「バラと棘」、ポーランド組曲、タランテラ、子守歌江崎昌子(ピアノ)ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第3番、同第9番「ラズモフスキー第3番」ウェールズ弦楽四重奏団【﨑谷直人 三原久遠(以上ヴァイオリン)横溝耕一(ヴィオラ) 富岡廉太郎(チェロ)】J.S.バッハ:トッカータ ハ短調BWV911、同ニ長調BWV912、同ト短調BWV915、「平均律クラヴィーア曲集 第1巻・第2巻」より〈ロ短調BWV869〉〈嬰ハ長調BWV872〉〈変ホ長調BWV876〉 他家喜美子(チェンバロ)CHANNEL CLASSICS/東京エムプラスOCCSSA 41119(2枚組) ¥5333+税オクタヴィア・レコードOVCT-00162 ¥2500+税フォンテックFOCD9812 ¥2800+税レグルスRGCD-1046 ¥2900+税ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラではない。正真正銘ヴァイオリンによって演奏されたバッハの無伴奏チェロ組曲である。編曲はポッジャー自身が担当、5弦チェロで高域が多用される第6番以外は全て1オクターヴ+5度高く調弦されて演奏されている(なお、第6番では幾つかの低域フレーズでヴィオラのC弦による音が編集によって付加)。実際に聴いてみるとチェロ版とは別の曲の趣で、いつもの使用楽器であるペザリニウス1739の音色はあくまで晴朗、その表現もチェロとは異なったヴァイオリンならではの軽やかさと躍動美を追求して惚れ惚れするほど見事な演奏を披露している。必聴。(藤原 聡)江崎昌子はポーランドの作曲家の作品のスペシャリストとして活動の幅を広げ続けるピアニスト。輝きと豊かな響きに満ちた音色によって多くの作品を美しく彩り、自然かつ表情豊かなルバートは、作品の隠された魅力を引き出している。そんな彼女が今回リリースしたのはポーランドの知られざる作曲家、ザレンプスキ。彼の作品は先輩であるショパン、師であるリストの影響を受け、ポーランドの土の香りのする民俗色と共に華麗なピアニズムが光る。特に魅力的なのは印象的なタイトルの「バラと棘」。静と動のコントラスト、そして超絶技巧が駆使され、この作曲家の多面性が味わえる。(長井進之介)第3番冒頭の2音だけで独特の空気を作り上げてしまう。ウェールズ弦楽四重奏団のベートーヴェン・シリーズ第3弾は、最初に書かれた名品第3番と、中期の傑作第9番の組み合わせ。開放弦やフラジオレットを多用する澄み切ったトーン。1拍ごと、1音ごとに自在に伸縮するテンポ。4人の図抜けた和声感と技術、ストイックな鍛錬と研究なしには実現し得ない、精密極まりない演奏で、とにかく発見の連続。無二の方法論による彫琢を経て浮かび上がるのはやはり、ベートーヴェンの革新性と美しさそのもの。これを聴かずにベートーヴェンは語れない、という全集になりそうだ。(林 昌英)何と、清冽な響きだろう。当盤の第1音を聴くだけで、あなたの耳は虜となってしまうに違いない。家喜美子は、歴史的鍵盤楽器の先駆者レオンハルトの薫陶を受けた後、30年以上にわたってヨーロッパで活躍し、現在は日本を拠点に精力的な演奏活動を続ける。20代前半の青年作曲家がしたためた、覇気あふれる「トッカータ」を源流に、バッハの創造の宇宙を辿るアルバムの第2弾。楽器は今回も仏コルマールにあるオリジナルのルッカース(1624年)。独特の底鳴りする低音と、複層的な響きを湛えた高音を巧みに操り、丹念に編み込まれた対位法の網を、明快かつ風通し良く紐解いてゆく。(寺西 肇)SACDSACD

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