eぶらあぼ 2019.6月号
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64©Marco Borggreve佐藤俊介とオランダ・バッハ協会管弦楽団9/30(月)19:00 浜離宮朝日ホール問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990 https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/※全国ツアーの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。佐藤俊介(オランダ・バッハ協会音楽監督/ヴァイオリン)音楽監督として“凱旋ツアー”を敢行取材・文:寺西 肇Interview 古楽とモダン、両方のフィールドで国際的に活躍する佐藤俊介が昨年6月、100年近い歴史を誇る名門アンサンブル、オランダ・バッハ協会の音楽監督に就任。総勢10人の器楽メンバーを率いて、就任以来初となる日本での“凱旋ツアー”を敢行する。「この“音楽”という世界を、どんどん探検していきたい」。俊英の言葉通り、大バッハの傑作を軸に、音の冒険を思わせるような、興味深いプログラムが組まれた。 「音楽監督に就いて、音楽・芸術面での方針やトレンドに直に触れられ、実績を具体的に作り上げる好機が巡ってきたと実感しています。曲の解釈、創造的な作品や共演者の選択、演奏会の在り方…そして、社会的な問題が山積する現代にあって、音楽の役割とは一体何なのか。芸術を大きく捉え、実践する可能性が出来て、日々の生活や考え方が変わりました」 1921年の創設以来、バッハの宗教声楽作品を軸に、数々の秀演を産み出してきたオランダ・バッハ協会。 「メンバー各自の経験・知識・情熱は相当なもの。奏者として長い経験を持ち、中には自分で楽器を製作する人も…。音楽史や時代奏法についての深い知識も備え、トップクラスの職人集団と言えます。声楽と器楽を擁するアンサンブルなので、レパートリーも無限。自分は特に、声楽作品の解釈と弾き振りに力を入れたい」 「バッハと他の作曲家との繋がり、そして、ひと固まりのアンサンブルとしてだけでなく、個々の奏者を披露できる曲目を心掛けた」という、日本公演でのプログラム。管弦楽組曲第1番や、チェンバロ作品からの復元稿によるヴァイオリンとオーボエのための協奏曲ハ短調などバッハの作品に、佐藤曰く「友情と音楽的な関係が深かった」というザクセン宮廷楽団のコンサートマスター、ヨハン・ゲオルク・ピゼンデルの作品も。実は、バッハの無伴奏ヴァイオリン作品は、彼のために書かれたとの説がある。 また、浜離宮朝日ホールでは、“原曲”を復元したヴァイオリン協奏曲ニ短調(第1楽章)を、現存するチェンバロ協奏曲稿(第2、3楽章)と併せて披露するユニークな試みを。さらに、ヴァイマル宮廷楽団時代の若きバッハが「新しい音楽に刺激を受け、根本的に作風を変えた」“イタリア体験”をもたらした、主君の甥ヴァイマル公ヨハン・エルンストのヴァイオリン協奏曲、そして、ヴィヴァルディの協奏曲「海の嵐」も演奏される。 古楽奏者としては、時代を下って、近年はロマン派にも取り組む佐藤。 「音楽史や時代奏法を知れば知るほど、バロック以前から後期ロマン派まで、変化もありながら、一つの伝統であることが分かります。古楽の知識が、モダンの世界に根づきつつあるのは、嬉しいことなのですが、それが一般化される中で、人々は自分で考え、真新しい解釈をしなくなる危険性が大いにあります。自己満足せず新しい発見や演奏法をどんどん試していく、実験心を持ち続けたいのです」楽壇生活40周年記念磯﨑陽一 ヴァイオリン・リサイタル with 東京ヴィヴァルディ合奏団熟成した弦の響きをじっくり味わう文:笹田和人 東京交響楽団や新日本フィルのコンサートマスターを歴任し、現在は名ソリストとして活躍する磯﨑陽一。楽壇生活40周年を記念するリサイタルで、東京ヴィヴァルディ合奏団と共演、ヴァイオリン協奏曲集「四季」全曲をはじめ、思い入れの強い佳品の数々を披露する。 桐朋学園大在学中に渡米、ジュリアード音楽院でイヴァン・ガラミアンら名伯楽に師事。帰国後は東響を経て、1979年から新日本フィルのコンマスを務め、オーケストラ共演やリサイタル活動、室内楽でも活躍。2009年の30周年記念演奏会では、井上道義指揮の新日本6/16(日)14:00 JTアートホール アフィニス問 東京ヴィヴァルディ合奏団  03-6277-8450 http://vivaldi.jp/フィルと共演、メノッティのヴァイオリン協奏曲を本邦初演し、高評を得た。 今回は、ソリストも務める「四季」全曲に、弦楽のための協奏曲ト長調「田園風」と、ヴィヴァルディの作品を。さらに、モーツァルト「ディヴェルティメント ニ長調 K.136」とエルガー「弦楽セレナード」を披露。半世紀以上にわたり、精緻なアンサンブルを追求し続けてきた東京ヴィヴァルディ合奏団の快演も相まって、美しい弦の響きが匂い立つ。東京ヴィヴァルディ合奏団磯﨑陽一

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