eぶらあぼ 2019.5月号
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58©Marco Borggreveヴァレリー・ポリャンスキー(指揮) ロシア国立交響楽団《シンフォニック・カペレ》との共演7/16(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール(テンポプリモ03-3524-1221)、7/25(木)19:00 山口/周南市文化会館(0834-22-8787)※ポリャンスキー(指揮)ロシア国立響の公演情報については、下記ウェブサイトでご確認ください。 http://www.tempoprimo.co.jp/アンナ・フェドロヴァ(ピアノ)世界から注目を集める新鋭ピアニストがロシアの名門楽団と共演取材・文:東端哲也Interview ウクライナ出身のアンナ・フェドロヴァは、数々のピアノコンクールにて優勝経験を持ち、オランダを拠点に国際的な活動を展開している逸材。今年の3月には、湯浅卓雄の指揮で神奈川フィルハーモニー管弦楽団とマイケル・ナイマンのピアノ協奏曲を演奏し、国内でも注目を集めたばかりだ。 「ナイマンのコンチェルトでは、もちろんピアノが重要な役割を果たしますが、オーケストラのシステムに完全に組み込まれているのが面白いです。複雑なリズムが短い周期で変化してめまぐるしいけれど、とても美しい曲ですね」 7月には一転、ヴァレリー・ポリャンスキー率いる名門ロシア国立交響楽団《シンフォニック・カペレ》によるオール・チャイコフスキー・プログラムで、王道のピアノ協奏曲第1番に臨む。 「これまでに欧州をはじめ様々なオーケストラと共演していますが、そのたびに新鮮さと自由さが生まれるのを感じる名曲。今回、マエストロとも初対面ですし、実はこの曲をロシアのオーケストラと一緒に演奏するのも初めてのことなので、少し興奮しています。私にとって何か特別なものになりそうです!」 YouTube上には昨年10月のコンセルトヘボウにて、北西ドイツ・フィルハーモニー管弦楽団と同曲を演奏する彼女の熱いパフォーマンスがアップされており、これまでに50万回以上視聴を重ねている。 「初めての共演者とは、できればリハーサルの前に打ち合わせの時間を持ちたい。この曲にはピアノが優先されるべきポイントがたくさんあります。特に私はテンポには比較的こだわりがあるので、そこを理解してもらえたら理想的。でも何より、お互いの解釈が呼応し合って曲が完成されていくことが重要ですね」 あのマルタ・アルゲリッチからも絶賛されていることで知られる彼女。その豊潤で力強いピアニズムは5歳から18歳まで師事した、ルイセンコ記念キエフ音楽学校のボリス・フェドロフ(実父)によって育成されたものだ。 「親子ゆえに簡単にはいかない場面もありましたが、今では父に教わったことを感謝しています。私の好みやテクニックのほぼ全てが父譲り(笑)なのです。作曲家にこだわらず、いろんな作品を弾いてみたいのもそう。いつも今、取り組んでいる曲がいちばん好き。次のシーズンではスクリャービンやグリーグに夢中になりそうです」第89回新人演奏会昭和初期から続く、若き音楽家たちの楽壇デビューの場文:林 昌英 若い音楽家たちに演奏機会を提供する貴重な場になっているのが、読売新聞社主催による新人演奏会である。1930(昭和5)年開始の本演奏会、今では全国30以上の音楽大学から約100人が参加する大きなイベントとなっている。かつてこの舞台を経験してきた若者には作曲家の團伊玖磨、ヴァイオリンの大谷康子、ソプラノの森麻季ら、その後大活躍する音楽家の名前も連なっており、その歴史と由緒が伝わってくる。しかも会場は、やはり長い歴史とすばらしい音響を誇る東京文化会館大ホール。経験を積むのにこの上ない場として、社会的な意義も大きい。5/4(土・祝)昼の部 11:00 夜の部 17:00、5/5(日・祝)11:00 東京文化会館問 読売新聞東京本社文化事業部03-3216-8500 https://info.yomiuri.co.jp/event/music/ 一方、聴き手にとっては、ゴールデンウィークの2日間3枠の長時間、実演にたっぷり浸れる場となる。国内の各学校で優秀な成績を収めて選抜された若手演奏家たちが次々に登場して、多彩な編成の楽曲を聴かせてくれるのである。慌てて移動することなく、出演者も楽曲もお任せで、若者たちの清々しい演奏を味わう──そんな贅沢なGWの過ごし方はいかがだろうか。昨年の模様 写真提供:読売新聞社

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