eぶらあぼ 2019.5月号
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31ピエタリ・インキネン(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団日本とフィンランドを繋ぐスペシャル・コンサート文:江藤光紀第711回 東京定期演奏会6/7(金)19:00、6/8(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 https://www.japanphil.or.jp/ 現在、多くのフィンランド出身の指揮者や作曲家が国際的に活躍しているが、1917年独立の比較的“若い国”で、人口も500万程度であることを考えると、フィンランドは驚異的なクラシック大国と言えまいか。そのライジング・スターが日本フィル首席指揮者のピエタリ・インキネン。好調の両者が6月定期でフィンランド・プロをお披露目するが、実は今年は、日本がこのヨーロッパで一番近い国と外交関係を樹立して100年というアニヴァーサリー・イヤーで、ひっぱりだこの人気指揮者と好調オケのコンビは、祝祭を寿ぐにまことにふさわしい。 フィンランド音楽といえばシベリウスだ。民族叙事詩『カレワラ』の場面を描いた「組曲『レンミンカイネン』―4つの伝説」では、北欧の黄泉の川を描いた美しい「トゥオネラの白鳥」がとりわけ有名だが、他の曲にも若き日の才気、後年の交響曲につながるアイディアがみられる。全曲が通して演奏されるのは珍しいから、この機会に『カレワラ』のストーリーを頭に入れ、シベリウスが描く北国のドラマを楽しもうではないか。 前半は現代もの。ヘルシンキ・フィルがシベリウス生誕125年を記念して委嘱した湯浅譲二「シベリウス讃―ミッドナイト・サン―」に続き、インキネンの先輩格として活躍する指揮者・作曲家エサ=ペッカ・サロネンの「ヴァイオリン協奏曲」。独奏の諏訪内晶子は以前、サロネン自身の指揮でオーケストラと丁々発止を繰り広げ、ジャズ風の第3楽章では白熱のあまり弦をぶち切ってしまったという逸話がある。インキネンとの共演ではどんな音楽になるのだろう。アポロン・ミューザゲート弦楽四重奏団芸術の神の名を冠した精鋭クァルテットが再びの来日!文:宮本 明6/7(金)19:00 紀尾井ホール問 紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061 http://www.kioi-hall.or.jp/他公演 6/1(土)名古屋/宗次ホール(052-265-1718)、6/3(月)武蔵野市民文化会館(小)(完売)、6/6(木)鶴見区民文化センター サルビアホール(045-511-5711) 今年は日本・ポーランド国交樹立100周年。全員がポーランド出身のアポロン・ミューザゲート弦楽四重奏団が、シューベルト2曲と、母国の大作曲家ペンデレツキで紀尾井ホールに登場する。 難関ミュンヘンARD国際音楽コンクール2008年の覇者(同年第3位は日本のウェールズ弦楽四重奏団)。やや変わった(?)長い名前は、自分たちの方向性を示すような言葉を求めて行き着いた。ギリシャ神話の芸能・芸術全般の神アポロンは、ジャンルを超えて幅広い音楽活動を展開する彼らにふさわしい。アポロンが女神ムーサたちのリーダーであることを示すフランス語が「Apollon Musagète」。ストラヴィンスキーの作品名にもなっている。つまり「“ミューズを率いるアポロ”弦楽四重奏団」だ。 現在シューベルトの弦楽四重奏曲全曲録音に取り組んでいる彼ら。紀尾井ホールでは、その最初(第1番)と最後(第15番)を聴かせる。第1番はシューベルトがまだ神学校に在籍していた10代前半の初期作品。聴く機会の少ないレア作品だが、彼らによれば、至るところに、より深く哲学的な後期の四重奏曲との関連が示されていることに驚かされるという。ペンデレツキの弦楽四重奏曲第3番「書かれなかった日記のページ」(2008)は、自身の75歳を記念して、実に40年ぶりに書いた弦楽四重奏曲。調的な旋律線も多用される新ロマン主義的作風。 実力派たちの示す、弦楽四重奏の最前線を聴きたい!諏訪内晶子 ©吉田民人ピエタリ・インキネン ©山口 敦

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