eぶらあぼ 2019.4月号
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92大澤美穂(ピアノ)セカンド・アルバムは憧れの作曲家ショパンの名作を集めて取材・文:長井進之介Interview ピアニストの大澤美穂は桐朋学園大学、同大学研究科を経て、ブリュッセル王立音楽院を修了。ベッツィ・ディオングル賞ピアノコンクール(ベルギー)第1位や第10回園田高弘賞ピアノコンクール第2位をはじめ、国内外で多くの上位入賞を果たしている。幅広いレパートリーを活かした数々の企画リサイタルを開催するなど多彩な演奏活動を展開する彼女が、オール・ショパン・プログラムで自身にとって2枚目となるアルバムをリリースする。 「私にとってショパンは、小学3年生くらいの頃に『小犬のワルツ』を弾けるようになってから、“次はこの曲、次は…”という想いが今でも溢れ出るほど、ずっと憧れ続けている、大好きな作曲家です」 英雄ポロネーズ、バラード第1番や舟歌など、名曲揃いのプログラムだ。 「この一枚を聴けばショパンの様々な魅力が伝わる…そんなアルバムにしたかったんです。ポーランドを愛したショパンのマズルカやポロネーズは必ず入れたかったですし、甘美さ、繊細さ、ドラマティックな一面…あらゆる面をお見せできたらと思っています。アルバムの曲順を決めるのが大変だったのですが、緩急をつけながら、自然な流れができればと思いながら選んでいきました」 「舟歌」は今回特に収録したかった作品だという。 「小さい頃には気づかなかったショパンの新たな魅力が、この曲からたくさん見えてきました。ショパンは20歳のときには既に完成した作品を書いていますが、そこから様々な経験を積み、精神的に更に成熟していきましたよね。『舟歌』はそれが如実に表れている作品だと思います。病やジョルジュ・サンドとの関係の悪化に苦しんだショパンの、あらゆる想いがつまった作品ではないでしょうか。これを今の私なりの表現でお伝えしたいと思いました。たくさんの名演奏がある中、あえてこれらの名曲をCDにする意味はそこにあると思っています。これからも挑戦し続けていきたいです」 日本で大学を卒業してからはベルギーで研鑽を積んだ大澤だが、なぜ留学先をベルギーにしたのだろうか。 「ある作曲家や国に特化するというよりも、様々な作品に取り組みたかったんです。ベルギーでは素晴らしい先生と出会うことができ、奏法や音色が大きく変わりました。この地で学んだことは今回のショパンにも大きく活かすことができたと思います」 大澤のこれまでの歩みにも重なるように配置されたショパンの名曲たちを、美しく優雅なピアニズムで存分に堪能していただきたい。ジョン・健・ヌッツォ(テノール) リサイタルツアー2019洗練を増した声、自在になった歌で、いよいよウィーンを歌う文:香原斗志 「最近、ヌッツォがいいよ!」という声を、ここ2、3年よく耳にする。そのたびに筆者も首肯する。もちろん、ヌッツォは以前から抜群の知名度を誇る。2000年にウィーン国立歌劇場にデビューし、その後、ザルツブルク音楽祭やメトロポリタン歌劇場などで活躍した記憶もいまだに鮮明である。 だが、筆者個人としては、16年にリリースされたアルバム『イタリアン・アリア』(フォンテック)に一層の衝撃を受けた。以前から美声であったが、発声が一段と深くなり、高い声域への移行も自然になり、響きも輝きを増していたからだ。声が洗練され、歌が自在になっていた。同年にドミンゴと共演したビゼー《真珠採り》の二重唱も、絶品5/10(金)東京文化会館(小)(Ro-Onチケット047-365-9960)、5/16(木)横浜みなとみらいホール(小)(神奈川芸術協会045-453-5080)、6/16(日)福島市音楽堂(024-531-6221)、6/22(土)兵庫県立芸術文化センター(小)(大阪アーティスト協会06-6135-0503) http://www.jkn-tenorissimo.com/であった。 とはいえ、ヌッツォの原点はウィーン。滝本紘子のピアノで歌う今年のリサイタルのテーマは、いよいよウィーンだという。しかも、ゲストはウィーン国立歌劇場と専属契約を結んでいたバリトンの甲斐栄次郎。プログラムは、シューベルト「美しき水車小屋の娘」(抜粋)やレハールの喜歌劇の名ナンバーなど(予定)。これは期待を膨らませずにはいられない。CD『大澤美穂 Plays ショパン』コジマ録音 ALCD-7232¥2800+税4/7(日)発売

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