eぶらあぼ 2019.4月号
87/221

84ケヴィン・ケナー(ピアノ) with ワルシャワ・ソロイスツ室内楽版で露となるショパンの協奏曲のリリシズム文:伊熊よし子7/15(月・祝)14:00 東京文化会館(小)問 アイエムシーミュージック03-6907-2535 https://www.imc-music.net/ 1990年にチャイコフスキー国際コンクール第3位、ショパン国際ピアノコンクール最高位に輝いたケヴィン・ケナーは、演奏家と教育者の両面で活発な活動を展開している。彼はショパン・コンクール以来2014年までの24年間、2曲の協奏曲の室内楽版の校訂を行ってきた。室内楽版はピアノとオーケストラとの共演ではなく、弦楽器5人との共演。ピアニストが表現したい繊細なニュアンスが可能になる。ショパンの時代にはこうした室内楽のスタイルで演奏することも多かった。 その第1番をワルシャワ・フィルのコンサートマスターを長年務めたツェギエルスキを筆頭に同オーケストラの精鋭メンバーで結成されたワルシャワ・ソロイスツと共演し、ピアノ六重奏版で演奏することになった。さらにユゼフ・ノヴァコフスキのピアノ五重奏曲も披露される。 ショパンのピアノ協奏曲第1番は、室内楽版で演奏されると各楽器の音が明確に聴こえ、ショパンの新たな魅力に触れる思いがする。小さな編成で演奏されていたショパン時代の姿が蘇るからである。一方、ポーランドの作曲家ノヴァコフスキ(1800~65)のピアノ五重奏曲は、2003年にアンジェイ・ヴルベル教授によりベルリン国立図書館で完全なる楽譜が発見された。約40分の大作で、ロマンにあふれ、繊細で抒情的な楽想を備えている。ケナーの穏やかで真珠の粒のような美しいピアニズムにピッタリな作品で、芳醇な弦楽器の響きを特徴とするワルシャワ・ソロイスツとのアンサンブルが聴きどころ。 ケナーは11年からチョン・キョンファとの共演でさらに音に磨きがかかり、成熟度が増している。長年の研究の成果に期待がかかる。©Shawn Clark《響の森》 Vol.44 「コバケン 名曲アラカルトⅡ」真夏に響く爽やかな名曲たち文:東端哲也8/1(木)19:00 東京文化会館問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 http://www.t-bunka.jp/ 上野の森にあるクラシックの殿堂、東京文化会館を会場にしたコンサート・シリーズ《響の森》。44回目となる8月には、“炎のマエストロ=コバケン”こと小林研一郎が再び登場、東京都交響楽団を指揮する。 今回は、昨年6月の「コバケン 名曲アラカルト」企画に続く、待望の第2弾。前回はオーケストラ曲としてスメタナやブラームス作品をセレクトし、またヴァイオリニストの南紫音をソリストに迎えたベートーヴェンやサン=サーンス作品などが好評を博したのも記憶に新しい。 今回まず目を惹くのは、ロッシーニ《セビリアの理髪師》とウェーバー《魔弾の射手》ら傑作オペラの有名な序曲たち。特に《セビリアの理髪師》は同会場で6月に開催される「ららら♪クラシックコンサート Vol.5」でも“コバケン”が東京フィルハーモニー交響楽団を指揮して演奏する予定があり、響きの違いを楽しむのも一興だ。他にもチェコ・フィルとの名盤で知られるシベリウスの交響詩「フィンランディア」や折りに触れて振り続けてきたラヴェルのボレロなど、いずれも熱きマエストロの面目躍如な演目揃い。 そして、とっておきは昨年リサイタル&CDデビュー25周年を迎え、日本ゴールドディスク大賞を受賞したアルバム『シネマ』も好調なギタリスト、村治佳織をソリストに迎えたロドリーゴのアランフェス協奏曲。作曲者のお墨付きを貰った、彼女のキャリアを代表する楽曲だけに期待が高まる。村治佳織 ©Ayako Yamamoto小林研一郎 ©K.Miura

元のページ  ../index.html#87

このブックを見る