eぶらあぼ 2019.4月号
69/221

66©Rikimaru Hotta第21回 別府アルゲリッチ音楽祭5/12(日)~6/2(日) しいきアルゲリッチハウス、ビーコンプラザ、iichiko総合文化センター 他問 アルゲリッチ芸術振興財団0977-27-2299 https://www.argerich-mf.jp/伊藤京子(ピアノ/別府アルゲリッチ音楽祭総合プロデューサー)アルゲリッチと発信するベートーヴェンの芸術と人類愛取材・文:伊熊よし子Interview 昨年、第20回のメモリアル・イヤーを迎えた別府アルゲリッチ音楽祭。大分は日本における西洋音楽発祥の地と言われ、ローマと大分との縁も深く、16世紀半ばに守護大名・大友宗麟が聖フランシスコ・ザビエルを庇護したことでも知られる。そうした歴史を踏まえ、同地で育まれている音楽祭は「アルゲリッチの出会いの場」との意味合いから、2018年12月にはローマ公演が実現。アントニオ・パッパーノ指揮サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団とアルゲリッチ、ミッシャ・マイスキー、竹澤恭子、豊嶋泰嗣が共演し、大成功を収めた。教育プログラム「ピノキオコンサート」も開催され、アルゲリッチと伊藤京子が出演。同音楽祭は「育む」「アジア」「創造と発信」を目的に掲げており、ローマでは「アルゲリッチ音楽祭」を世界へと発信することが実現したことになる。 第21回のテーマは「悠久の真実~ベートーヴェン」。2020年のベートーヴェン生誕250年を念頭に置いてベートーヴェンをシンボリックにとらえ、のちに続くさまざまな作曲家の作品がプログラムに登場する。総合プロデューサーのピアニスト、伊藤京子が語る。 「ベートーヴェンが生涯をかけて探求した人類愛と総監督のアルゲリッチが希求する世界平和実現への願いを込め、ベートーヴェンのアニバーサリーイヤーに先駆けてテーマとしました。ベートーヴェンの精神を反映し、彼に続く多くの作曲家たちが引き継ぎ、探求し続けた“悠久の真実”は芸術の根本であり、いまなお作品を通してメッセージが伝えられています」 今回は5月12日から6月2日まで11公演が組まれ、オーケストラ・コンサートはシャルル・デュトワ指揮東京音楽大学シンフォニーオーケストラ、ソロはアルゲリッチとマイスキーが務める。「未来プロジェクト」は「平野啓一郎 ベートーヴェンを語る」が組まれ、「室内楽コンサート」ではアルゲリッチ、豊嶋泰嗣らがベートーヴェン他の作品を演奏する。 「心の育みを目的とした大人とこどものための音・学・会『ピノキオコンサート』も今年は100回目を迎え、東京公演も行います。昨年から音楽祭運営に大分市が加わり、今年は平和市民公園能楽堂で『スペシャル・カルテット~弦楽器の魅力』を予定しています」 常に「社会の中の芸術」を考慮し、世界に目を向けている同音楽祭。音楽祭アドバイザリー・コミッティを務めるアントニオ・パッパーノにはファンクラブ「Pappano’s Club Cantabile」も発足した。さらなる飛躍に期待したい。第484回 日経ミューズサロン ラルフ・ゴトーニ スペシャル・ピアノ・トリオフィンランドと日本の名手が醸し出す三重奏の極致文:笹田和人 フィンランドを代表するピアノの名手であり、世界の一流オーケストラのシェフとしても高く評価されるラルフ・ゴトーニ。そんな彼が、並々ならぬ思いを込めて結成した“究極のピアノ三重奏団”が日本へ初上陸し、室内楽の真髄というべき、名演を紡ぎ出す。 彼がメンバーに選んだのは、チューリヒ室内管などのコンサートマスターを歴任、ベルリン芸大教授を務め、昨年にはオーパス・クラシック賞の初の受賞者となるなど、気鋭のヴァイオリニストとして活躍する息子のマーク・ゴトーニ。そして、名指揮者・近衞秀麿を祖父に持ち、国際的に活躍するチェリストの水谷川優子だ。 彼らは結成から15年以上をかけ、欧州から中東そしてアジアなど世界中を巡っており、ミューズサロンのステージは日本とフィンランドの外交樹立100周年を彩るものともなる。愛称のついたベートーヴェンのピアノ三重奏曲の傑作、第4番「街の歌」と第5番「幽霊」に、20世紀の室内楽史に大きな足跡を残す、沈痛な雰囲気に満ちたショスタコーヴィチの同第2番を挟み込む。5/7(火)18:30 日経ホール問 日経公演事務局03-5227-4227http://www.nikkei-hall.com/左より:ラルフ・ゴトーニ、マーク・ゴトーニ水谷川優子 ©sakiko nomura

元のページ  ../index.html#69

このブックを見る