eぶらあぼ 2019.4月号
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62河村尚子 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ・プロジェクト Vol.3 (全4回)「ハンマークラヴィーア」を含む中期から後期の傑作を文:飯尾洋一4/25(木)19:00 紀尾井ホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 https://www.japanarts.co.jp/ いよいよ河村尚子の「ハンマークラヴィーア」が聴けるとなれば、わくわくせずにはいられない。全4回からなるシリーズ「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ・プロジェクト」の第3回のプログラムは、第27番ホ短調、第26番変ホ長調「告別」、第29番変ロ長調「ハンマークラヴィーア」の3曲。中期から後期へと向かうベートーヴェンの三者三様の作品が並べられた。 あたかもシューベルト風のロマン性を先取りするかのような第27番、力強く雄渾な第26番「告別」、そしてもっとも長大で深遠なソナタ「ハンマークラヴィーア」。どの3曲をとっても楽しみだが、やはり「ハンマークラヴィーア」はピアニストにとってある種の頂点をなすようなチャレンジングなレパートリーと言えるだろう。とりわけ第4楽章のフーガは、聴き手にとっても作品と対決するかのような集中力が求められる。 同シリーズの前回公演では、中期の傑作群について、構築美とパッションが完璧なバランスで共存するベートーヴェンを聴かせてくれた河村。作品様式にふさわしくダイナミズムにあふれた演奏だったが、さて今回の公演ではどんなベートーヴェンを聴かせてくれるだろうか。説得力と清新さをあわせもった現代にふさわしいベートーヴェン像を築いてくれるのではないだろうか。©Marco Borggreveオラリー・エルツ(指揮) 読売日本交響楽団北欧の鬼才が放つ“今に生きる音楽”文:オヤマダアツシ第587回 定期演奏会 4/17(水)19:00 サントリーホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 https://yomikyo.or.jp/ 北欧諸国から世界へと羽ばたく才能が絶えることのない中、エストニア生まれのオラリー・エルツもまた、注目すべき指揮者である。2009年、16年に続いて3度目の客演となる読売日本交響楽団の定期演奏会は、20~21世紀の作品集でありながら非常に抒情的かつ繊細な響きを味わえるプログラムだ。 コンサートの冒頭に披露されるのは、エストニアを代表する作曲家のひとり、エリッキ=スヴェン・トゥールによる委嘱新作「幻影」(読響とエストニア国立響ほかによる共同委嘱)。その作風は同じエストニア出身のアルヴォ・ペルトを想起させ、基本的には叙情と神秘、そしてときにノスタルジーを感じさせるもの。新作ではベートーヴェンの「コリオラン序曲」がモティーフになっているとの情報だが、あとはサントリーホールの空間に響くのを待つしかない。武満徹の「星・島」(スター・アイル)、シベリウスの交響曲第5番という、それぞれ音楽が独特な世界を創造する後半の選曲も、トゥールからの流れを汲んでいるようだ。 ゲスト・ソリストとして登場するのは、ベルリン・フィルをはじめとするトップ・オーケストラに客演が続くノルウェー出身のヴィルデ・フラング。ネオ・バロックの味わいをもつストラヴィンスキーのヴァイオリン協奏曲を演奏するが、オーケストラの反応や音色も重要な合奏協奏曲の要素も強いため、読響の奮闘も楽しみな1曲なのだ。ヴィルデ・フラング ©Marco Borggreveオラリー・エルツ ©Marco Borggreve

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