eぶらあぼ 2019.4月号
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61〈エスポワール シリーズ 12〉Vol.1― 日本歌曲 嘉目真木子(ソプラノ)人気シリーズに歌手が初登場! 声の魅力で迫る文:室田尚子4/13(土)17:00 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 http://www.toppanhall.com/ オープン2年目から始まった〈エスポワール シリーズ〉は、「若手の発掘・育成」というトッパンホールのコンセプトをもっともよく反映した企画である。今後の活躍が期待される若手演奏家とホールが、共同で企画して全3回のコンサートを行う。これまでに同シリーズに登場したアーティストには、ギターの大萩康司、ヴァイオリンの日下紗矢子、ピアノの河村尚子など、現在めざましい活躍を繰り広げている顔ぶれも少なくない。 ソプラノの嘉目真木子は、その〈エスポワール シリーズ〉12代目にして初の歌手となる。これまでそのキャリアのほとんどをオペラの舞台で培ってきた嘉目。最近では、宮本亜門演出のオペラ《金閣寺》のフランスと東京両公演に出演し、大きな話題となった。まさに「日本を代表するプリマ」に成長しつつある嘉目が歌曲のリサイタルを開くというのだから、注目しないわけにはいかない。 第1回となる今回取り上げるのは日本歌曲。瀧廉太郎、山田耕筰から、嘉目が中学・高校時代に合唱で歌い、大いに影響を受けたという木下牧子の作品まで、プログラムには彼女の知性と感性、さらには「歌」に対する姿勢がはっきりと表れたものになっている。ピアノは、〈エスポワール〉第10代のアーティストで、現在の若手ピアニストの中でも高い評価を受ける北村朋幹。「音楽」と「詩」に真摯に向き合うふたりのコラボレーションがどのような世界を生み出すのかにも注目が集まる。©Klara Beckアンドレア・バッティストーニ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団情熱全開で新時代を祝う文:柴田克彦4/16(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール4/18(木)19:00 サントリーホール4/21(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール3/25(月)発売問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 http://www.tpo.or.jp/ 平成が終わり、新天皇が即位して元号が変わる。4月の東京フィル定期では、バッティストーニが、まるでそれに即したようなプログラムを組んでいる。1937年イギリス国王ジョージ6世の戴冠式で演奏されたウォルトンの「戴冠行進曲『王冠』」と、1790年神聖ローマ帝国皇帝レオポルト2世の戴冠式祝賀演奏会で披露されたモーツァルトのピアノ協奏曲第26番「戴冠式」だ。そしてチャイコフスキーの交響曲第4番。同曲の華麗な曲調や冒頭のファンファーレもまたタイムリーと言えるだろう。 イタリアの俊英バッティストーニは、2016年同楽団の首席指揮者就任後も、数多の名演を生み出し、昨年11月の《メフィストーフェレ》、今年1月の「シェエラザード」と、直近でも活力漲る劇的演奏を展開している。彼の音楽を表す言葉といえば、情熱的、躍動的、ダイナミック、豊かなカンタービレ、雄弁…これらは祝祭的な本演目にまさしく相応しい。「戴冠式」のソロは小山実稚恵。日本を代表する名手の円熟のピアノも聴きものだ。 さらに、ロシアで長く過ごしたバッティストーニは、同国の音楽に力を注ぎ、特にチャイコフスキーの交響曲は、第5番、第6番「悲愴」共にCDとコンサートで壮絶な熱演を聴かせている。以前彼は、ロシア音楽について「メロディへの偏愛と物語性がイタリア音楽にとても近く、地中海的で激しく情熱的」と語っていた。イタリアで完成され、チャイコフスキー作品の中でもラテン的要素が強い交響曲第4番は、この言葉と前記の特長に最も適合する作品。エネルギッシュでパッショネイトなライヴへの期待に胸が躍る。小山実稚恵 ©ND CHOWアンドレア・バッティストーニ ©上野隆文

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