eぶらあぼ 2019.4月号
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188SACDCDCDCDラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番/反田恭平ハイドン:交響曲集 Vol.6/飯森範親&日本センチュリー響フランク&ヴィエルヌ ヴァイオリン・ソナタ集/イブラギモヴァ&ティベルギアンマリンバのための協奏曲集/布谷史人ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番、ピアノ・ソナタ第2番(1931年改訂版)、10の前奏曲 op.23-2,4反田恭平(ピアノ)アレクサンドル・スラドコフスキー(指揮)ロシア・ナショナル管弦楽団ハイドン:交響曲第39番・第61番・第73番「狩り」飯森範親(指揮)日本センチュリー交響楽団イザイ:悲歌的な詩/フランク:ヴァイオリン・ソナタ/ヴィエルヌ:同/ブーランジェ:ヴァイオリンとピアノのための夜想曲アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン)セドリック・ティベルギアン(ピアノ)ヴィヴァルディ:協奏曲RV443/セジョルネ:マリンバと弦楽のための協奏曲(2015年版)/信長貴富:マリンバ協奏曲「混線するドルフィン・ソナー」布谷史人(マリンバ)ヨハネス・シュレーフリ(指揮)ベンヤミン・ヌス(ピアノ)マンハイム・クアプファルツ選帝侯室内管弦楽団日本コロムビアCOCQ-85458 ¥3000+税収録:2018年10月、いずみホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00687 ¥3200+税Hyperion/東京エムプラスPCDA68204 ¥2857+税OEHMS/ナクソス・ジャパンOC1891 輸入盤/¥オープン変幻自在な表現力と深い精神性。左右の指がユニゾンで主題を奏でる、協奏曲冒頭の24小節を聴いただけで反田恭平の非凡さを思い知らされる。反田は高校在学中に日本音楽コンクールで優勝、現在はショパン音楽大学で学びつつ、精力的に演奏活動を展開する注目の俊英。かつてはサッカー少年で、手首を骨折した経験も。“英才教育”と無縁だったからこそ、しなやかな感性を直に反映した音楽創りが可能になったのか。ソロの佳品も交え、次々に現れる超絶技巧は、決して曲芸的に“処理”されることなく、音楽的な必然性と奏者自身の内面に裏打ちされる。バックのオケも彫りの深い好演。 (寺西 肇)モダン楽器を使いながら、歴史的情報に基づき(HIP)、ノンヴィブラート主体の響きで精緻に造形されて、とても好感が持てる。基本的に反復記号は全て敷衍し、反復の度に少しずつ装飾などを加える。飯森は練習前にそれらを全て楽譜に細かく書き込んで団員に渡しておくという。第39番は疾風怒濤期の短調シンフォニーで、冒頭から爽やかな疾走感が聴き手の心を捉える。緩徐楽章の反復では思い切りパウゼを取る。第61番ではフルートとティンパニが加わり、表現の幅が一段と広がる。「狩り」は、円熟期に近づいた作品で、強弱・音色対比や凝った展開が聴きもの。 (横原千史)全編期待を裏切らぬ出来栄え。フランクは特に第1楽章が秀逸で、ゆったりと間を取ったティベルギアンの幻惑的な前奏に続き、イブラギモヴァが放つ香気漂う音色が素晴らしい。この楽章全体でデュナーミクをかなり抑え気味にしているが、終始ノーブルな表情を纏ったその演奏はあらゆる同曲の演奏中でも最高位に置かれるべきもの。本CDでもう1つの柱となるのがフランクの影響をも感じさせるヴィエルヌのソナタだが、こちらは逆に劇的で非常にスケールが大きい。これら大曲2曲を挟んで最初と最後に置かれたイザイとブーランジェは、サロン風の甘さとそれだけでない深みもある佳品。選曲も良い1枚。 (藤原 聡)世界的に活躍するマリンバ奏者布谷史人の新アルバムは、テイストの異なる3曲を収録。ヴィヴァルディの協奏曲はリコーダーのための可愛らしい曲だが、玉を転がすようなコロコロとしたマリンバの音色に移すという発想がうまくはまった一例。セジョルネの協奏曲は中低音域の深い音色が、弦のラテン風の情熱や哀愁に厚みを加える。布谷のために書かれた信長貴富「混線するドルフィン・ソナー」では、爽やかな作曲センスが25分間にわたり冴える。群れを成し、波を切って泳いでいくイルカの群れがありありと浮かんできた。ソリストと積極的に対話する管弦楽も、ディスクを一層価値あるものにしている。(江藤光紀)

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