eぶらあぼ 2019.3月号
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86©Kazashito Nakamura東京オペラシティ B→C(ビートゥーシー) 佐藤彦大 ピアノ3/16(土)15:00 盛岡市民文化ホール(小)問 盛岡市民文化ホール019-621-51003/19(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 https://www.operacity.jp/佐藤彦ひろお大(ピアノ)バッハからコンテンポラリーを経由してラフマニノフへ取材・文:伊藤制子Interview 日本音楽コンクール優勝をはじめ、内外の輝かしいコンクール歴をもち、ソロやオーケストラとの共演でも活躍中の佐藤彦大が東京オペラシティの「B→C」シリーズに登場する。 「幼稚園でオルガン伴奏の讃美歌をうたったことから音楽に関心をもつようになりました。ピアノを始めたのは小学校1年の時。学校でトルコ行進曲の演奏を聴いたのがきっかけです」 東京音大では野島稔に、その後のモスクワ留学でエリソ・ヴィルサラーゼに師事した。 「野島先生のレッスンでは、『レガート奏法の基礎になるので鍵盤をきちんと押さえなさい』といつも言われていました。ヴィルサラーゼ先生からは『テンポ通りに、レガートに』と徹底的に教わりました。ルバートを最小限にして、音楽の芯を通すことが大事という教えです。モスクワは日本のように恵まれた環境ではなく、例えば、音楽院のピアノは荒れたものが多かったのですが、みなそうした楽器を巧みにコントロールしているので驚きました。そして、音の響きをソプラノ(高音部)からつくりあげていき、音を遠くまで飛ばすことなどもモスクワで学びました」 「B→C」のプログラムは、「鐘」をキーワードに組み立てている。 「デュティユーのソナタは、バッハのパルティータ第4番からスムーズにつながり、さらに第3楽章のコラールに鐘のイメージもあるので選びました。西村朗先生のピアノ曲は大学時代から弾いていましたが、先生の音楽にはフランス音楽のように音がたちのぼってくるイメージがありますね。『神秘の鐘』は第3曲でダンパー・ペダルを踏んで低音を響かせる部分があり、曲が“ラのシャープ”で終わるのですが、ここから最後のラフマニノフのソナタ第2番(1931年改訂版)へと自然に流れていけるように思いました。実は、モスクワに行ってから、ラフマニノフのイメージが変わったのです。かつては、ややナルシストと感じていたのですが、今は音楽へのひたむきな純粋さをより感じます」 近年は教育活動も加わり多忙な佐藤だが、新しいレパートリーへの意欲も見せた。 「今後はシューベルト、ブラームスの後期の小品、デュティユーのピアノ曲なども弾いてみたいですね。作品をシンプルに聴かせつつ、自分らしい説得力のある演奏ができたらいいと思っています。また今回の『B→C』は同一プログラムで出身地の盛岡でもリサイタルがあります。現代音楽を聴いてもらえる機会は盛岡ではかなり少ないので、来てくださる方たちの期待に応えられれば嬉しいです」新作楽劇《影ようごう向のボレロ》戊辰戦争を背景に“人の仁”を問う総合舞台劇文:伊藤制子 1868年から翌年にかけ、京都鳥羽伏見から函館まで広がった戊辰戦争。中でも現在の福島県白河市は数多くの戦死者が出た激戦地だ。戊辰戦争150周年を迎えた今年度、戦没者を悼み、平和を祈念する新作楽劇《影向のボレロ》が3月24日、白河市で初演される。「影向」は神仏が仮の姿で現世に来臨することを意味し、「ボレロ」はラヴェルの名作に由来する。全4幕11場から成り、和太鼓の林英哲、福島フィルに加えて、プロのバレエダンサー、白河で活動する役者、そして群衆として市民や中高生、市民合唱らが出演するなど、3/24(日)14:00 白河文化交流館コミネス問 白河文化交流館コミネス0248-23-5300http://www.cominess.jp/市民総参加型の大作だ。ナレーター(春風亭昇羊)が史実を語るなか、一組の親子の視点を通して物語が展開され、ダンスと音楽が挿入されるスタイル。新撰組もダンスや芝居で登場する。昨年急逝した松下功が担当する予定だった音楽は、高弟の川島素晴が引き継ぎ、松下作品の編曲と新たに書き下ろした管弦楽曲と合唱曲で構成し、指揮も担う。多くの力が結集した《影向のボレロ》。戊辰戦争150周年にふさわしい催しになろう。林 英哲 ©M.Tominaga川島素晴

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