eぶらあぼ 2019.3月号
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80billboard classicsナイマン、グラス & ラフマニノフ premium symphonic concert“浸れる”近代&現代の大作を集めての好企画文:江藤光紀3/2(土)14:30 Bunkamuraオーチャードホール問 パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831http://billboard-cc.com/classics/ 20世紀以降のいわゆる“現代音楽”においても、美しい旋律、心地よいハーモニーは絶えることなく希求されている。 “浸れるクラシック”を探しているリスナーにこそお勧めしたいのが、「ナイマン、グラス&ラフマニノフ」だ。 イギリスのマイケル・ナイマンは、同一のリズムパターン上で刻々と移り変っていくミニマル・ミュージックを映画音楽に応用し、1993年公開の映画『ピアノ・レッスン』をヒットさせ、世界的に知られるようになった。その音楽を、4楽章の堂々たるコンチェルトに仕立てたのが「ピアノ協奏曲」。大管弦楽をバックに歌われる雄大な〈楽しみを希う心〉のメロディが沁みる。 アメリカの代表的ミニマリスト、フィリップ・グラスからは、ヴィヴァルディの「四季」を下敷きに、アメリカのヴァイオリニスト、ロバート・マクダフィのために書かれたヴァイオリン協奏曲第2番「アメリカの四季」。ヴァイオリン独奏部と合奏部が交互に、リズミカルに現れる。 最後を締めるのが、“遅れてきたロマン派”などとも称されるセルゲイ・ラフマニノフの代表作「交響曲第2番」。耽美の極致を行く濃厚な旋律が、管弦楽の骨太のサウンドを背景に歌われる。交響曲の醍醐味と現代性を一つながらに体験させてくれる曲だ。 神奈川フィルを指揮する湯浅卓雄はナイマンとも交友が深く、現代の音楽の特性を知り尽くしている。才色兼備の二人のソリスト、ピアノのアンナ・フェドロヴァ、ヴァイオリンの南紫音は、今後の活躍を約束されたライジング・スターたちだ。寄せては返す心地よい波動で、耽美の世界へとあなたを誘ってくれるだろう。左より:湯浅卓雄 ©Peter Devlin/南 紫音 ©Shuichi Tsunoda/アンナ・フェドロヴァ ©Bernardo Arcos MijailidisMusic Program TOKYO Jazz meets Classic小曽根 真 & スコティッシュ・ナショナル・ジャズ・オーケストラジャズ・テイストで聴くクラシックのライトな名曲たち文:藤本史昭5/18(土)17:00 東京文化会館 5/19(日)15:00 オリンパスホール八王子問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 http://www.t-bunka.jp/ ピアニストの小曽根真をホストに、世界の一流ジャズマンをゲストに迎え、ジャズとクラシックの刺激的な邂逅を演出する「Jazz meets Classic」。今年はそのゲストにはじめてビッグバンドが登場する。 そのビッグバンドとは、スコティッシュ・ナショナル・ジャズ・オーケストラ。名前のとおりスコットランド出身のプレイヤーを中心に組織されたオーケストラで、創設者でリーダーのトミー・スミスは、1980年代、小曽根がゲイリー・バートンのグループに在籍していた時の同僚。ここ数年は、モーツァルトのピアノ協奏曲第9番「ジュノム」(小曽根編曲のジャズ版)での共演など意欲的なコラボレーションを通してふたたび親交を深めている。 プログラムも興味深い。これまでこのシリーズで選ばれるのは、ショスタコーヴィチやプロコフィエフ、バルトークなどの難曲大曲が常だったが、一転、今回は子ども向け、教育目的に演奏される機会が多いサン=サーンス「動物の謝肉祭」とプロコフィエフ「ピーターと狼」が取り上げられるのだ。とはいえ、前者は小曽根の、後者はスミスの編曲によるものだから、それがスリリングなジャズ・テイストを多分にはらんだものになることはまちがいなし。さらに後者では、名優、橋爪功がナレーションをつとめるというから、これは演劇ファンも見逃せまい。進化を止めることなく新たな感動を創造し続ける「Jazz meets Classic」。期待は膨らむばかりだ。橋爪 功小曽根 真 ©中村風詩人

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