eぶらあぼ 2019.3月号
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59秋山和慶(指揮) 東京交響楽団異国情緒あふれる港街を音楽で巡るユニークな旅文:山田真一第669回 定期演奏会 4/21 (日)14:00 サントリーホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp/ 東京交響楽団の4月定期は、桂冠指揮者・秋山和慶による滅多に聴くことのできないとてもユニークなプログラムだ。メシアン若き頃の作品「讃歌」に続いて、ジョリヴェ「赤道コンチェルト」、レイモンド・ルシュール「マダガスカル狂詩曲」、イベール「寄港地」というもの。かなりのマニアでなければイベール以外は聴いた経験がないのではなかろうか。しかし、メシアン以外はフランス植民地時代の異国情緒溢れる音楽というなかなか心憎い組み合わせで、メシアンと共に20世紀中盤にかけての、色彩豊かな音楽ばかりだ。 「赤道コンチェルト」はアンドレ・ジョリヴェが1950年に完成させたピアノ協奏曲。ジョリヴェはエドガー・ヴァレーズの下で音楽教育を受けただけに、その音楽も強烈で前衛的なエスプリに溢れている。パリ初演では「春の祭典」以来の騒動を引き起こしたという曰く付きの作品だ。が、赤道付近に位置するアフリカ諸国や東洋の熱い情熱が否が応でも伝わって来る。難曲としても知られており、十代ながらクララ・ハスキル国際ピアノ・コンクールで優勝し一躍注目を集める藤田真央がどのように挑むかに大いに興味が湧く。ルシュールはタイトル通りマダガスカル島を風景画的に描く。ジョリヴェ同様アフリカがテーマだが、ミヨーのように土俗的なリズムを用いるというよりはイベールにも通じる印象派的な作品で耳にも優しい。そして、「寄港地」第2曲「チュニス―ネフタ」を聴けば異国情緒を満喫できることだろう。高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団熱を帯びた旋律とリズムが躍動するハンガリーの二大巨星文:林 昌英第323回 定期演奏会 3/16(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 http://www.cityphil.jp/ 元号が明治に変わった翌年の1869年、日本とオーストリア=ハンガリー帝国は修好通商航海条約に調印。今年はそれから150周年を迎え、外交関係開設記念事業が数多く行われる。中でも、ハンガリーを代表するバルトークとコダーイの作品による東京シティ・フィルの定期演奏会は、特筆されるイベントになりそうだ。 バルトークはピアノ協奏曲第2番。ピアノにとって過酷な難曲として知られる本作で、今回ソロを務めるのは小山実稚恵。指揮の高関健が「この人しかいない」と語る小山の名技で、本作の超絶技巧とエネルギーを体験できるのは嬉しい。また、第1楽章は管楽器、第2楽章は弦楽器が中心になるなど、オーケストラのユニークな扱いも注目。 そのバルトーク作品を挟むのが、コダーイの代表作2曲。最初の「ガランタ舞曲」は、次々に現れる舞曲の楽しさと熱気が格別で、思わず興奮を覚えてしまうはず。メインは第2次大戦開戦の1939年に作られた「ハンガリー民謡『孔雀が飛んだ』による変奏曲」。民謡の旋律を用い、華麗なオーケストレーションで楽しく聴ける逸品であると同時に、国内外で広がっていた独裁的な体制への抗議が込められているという懐深い大作でもある。 シティ・フィルと常任指揮者の高関の公演は、毎回明確な成果を挙げて支持を広げ続けている。本公演もあえて「孔雀変奏曲」をメインに据えるなど、明快ながら捻りも効いたハンガリー記念公演になっている。その熱い思いは、充実のパフォーマンスを通して会場を満たすはずだ。小山実稚恵 ©Wataru Nishida高関 健 ©StasLevshin藤田真央 ©Shigeto Imura秋山和慶

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