eぶらあぼ 2019.3月号
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46ピエタリ・インキネン(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団相思相愛コンビにとって初となる欧州ツアーと同演目を披露文:オヤマダアツシ第709回東京定期演奏会 4/19(金)19:00、4/20(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 https://www.japanphil.or.jp/ 2016年9月に首席指揮者へ就任したピエタリ・インキネンとの蜜月時代も、2020/21シーズンまで延長が決定。このコンビにおける独自のサウンドを築いた日本フィルハーモニー交響楽団だが、その成果のひとつが4月2日から14日に行われる13年ぶりの欧州ツアーだろう。中でもインキネンの故郷であり、日本フィルとはシベリウスの演奏等で関係が深いフィンランドでのコンサート(なんと初訪問!)は、楽団史の中でもモニュメンタルな出来事に違いない。 このツアーから帰国直後の4月19日&20日、サントリーホールで行われる定期演奏会はツアーの興奮さめやらぬ雰囲気にあふれ、未来への希望に満ちた名演が期待できそうだ。後半に演奏されるシベリウスの交響曲第2番はそのシンボル的な曲であり、ツアー中も繰り返し演奏されるだけに熟成した状態で東京へ持ち帰ってくることが予想される。指揮者はもちろん、楽員の思いがこもったその音楽を聴き逃す手はないだろう。 ゲスト・ソリストには英国ピアノ界の至宝であり、ツアー最終公演(エディンバラ)でも共演するジョン・リルが登場。味わい深いベートーヴェンを好む方には、なんとしても聴いていただきたい巨匠である(今回は協奏曲第3番)。武満徹の名作「弦楽のためのレクイエム」も含め、ツアーの報告会ともいえるプログラムだが、あらためてインキネン&日本フィルの蜜月を再確認するコンサートにもなるだろう。あなたも興奮の輪の中へ。ミハイル・プレトニョフ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団トランペット15本の咆哮! 超弩級のシンフォニーを体験文:飯尾洋一3/13(水)19:00 サントリーホール3/15(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール3/21(木・祝)15:00 Bunkamura オーチャードホール3/23(土)15:00 文京シビックホール問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 http://www.tpo.or.jp/ 東京フィルハーモニー交響楽団の指揮者陣にあって、ひときわ野心的なプログラミングで目をひくのが、特別客演指揮者のミハイル・プレトニョフ。ロシア音楽の奥深さを知らしめる伝道師のごとく、実に多彩な曲目を取りあげてくれる。3月の定期演奏会ではチャイコフスキーのスラヴ行進曲とヴァイオリン協奏曲(独奏はユーチン・ツェン)に、ハチャトゥリアンのバレエ音楽「スパルタクス」より「アダージョ」と交響曲第3番「交響詩曲」が演奏される。 なんといっても目をひくのはハチャトゥリアンの「交響詩曲」。なにしろ15本のトランペットが鳴り響くというド派手な作品で、オルガンまで加わって、異様なテンションの高さで盛り上がる一大スペクタクルなのだ。ロシア革命30周年のために書かれたとあって、その祝祭性は並大抵のものではない。あまりに思い切りのよい作風で暴れすぎたのか、結局はジダーノフ批判で「形式主義」の烙印を押されてしまうのだが、今となってはこれも異形の交響曲に与えられた勲章のようなもの。実演で聴ける機会は貴重だ。 チャイコフスキーで独奏を務めるユーチン・ツェンは2015年チャイコフスキー国際コンクールでヴァイオリン部門最高位を獲得した台北出身の新星。勢いのあるソロを聴かせてくれそうだ。 なお、文京シビックホールでも、ほぼ同一のプログラムが演奏されるが、こちらは協奏曲がグラズノフのヴァイオリン協奏曲となっている。これもまた意欲的な選曲で興味深い。ジョン・リルピエタリ・インキネン ©山口 敦ユーチン・ツェン ©Vincent Huangミハイル・プレトニョフ ©上野隆文

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