eぶらあぼ 2019.3月号
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45英国ロイヤル・オペラ2019年日本公演名匠が二大名作で聴かせる“壮麗で熱い音楽美”文:岸 純信(オぺラ研究家)《オテロ》9/14(土)、9/16(月・祝) 神奈川県民ホール、9/21(土)、9/23(月・祝) 東京文化会館《ファウスト》9/12(木)、9/15(日)、9/18(水) 東京文化会館、9/22(日) 神奈川県民ホールセット券 3/23(土)、単独券 4/13(土)発売問 NBSチケットセンター03-3791-8888 https://www.nbs.or.jp/ 英国ロイヤル・オペラ(ROH)と音楽監督アントニオ・パッパーノは、オペラ界に一大進歩をもたらした。彼らは「大スターを起用し、名作に新たな光を当てる」ことで、多くの人の眼を集めることに成功。客席のエレガントな装いもこの歌劇場の勢いを裏打ちするものだろう。貴族的なカップルから自由な学生層まで、みな、「ハレの日の楽しみ」を堪能しようという空気を漲らせているのである。 さて、そのROHが9月に4年ぶりの来日を果たすことに。指揮はもちろんパッパーノ。日本公演をキャリアの集大成とすべく、彼は「壮麗で熱い音楽美」に満ちた二大名作を用意した──ヴェルディの《オテロ》とグノーの《ファウスト》である。 《オテロ》といえばイタリア・オペラの究極の悲劇。嫉妬深い部下に騙されて、妻の愛を疑った武将が破滅するまでを猛烈な勢いで描いている。今回の主演は、テノール界の奇跡たるグレゴリー・クンデ。若い頃は超高音をひときわ鮮烈に響かせた彼も、今では「最も逞しい声」を要するオテロ役の第一人者である。圧倒的な迫力に期待したい。 そして《ファウスト》は、フランスもの最大のヒット作。若返った博士が乙女と愛し合うが、最後は神に裁かれるという大歌劇である。こちらは情熱と若々しさが光る人気テノール、ヴィットリオ・グリゴーロと、人気バリトンのイルデブランド・ダルカンジェロなど超豪華な顔合わせ。華やかな面差しと熱い声の“一大競演”を見逃してはならない!アンジェラ・ゲオルギュー & トーマス・ハンプソンスペシャル・コンサート イン ジャパン 2019世界最高峰の歌と声の魅力に全方位的に酔いしれる一夜文:香原斗志3/6(水) 19:00 サントリーホール問 チケットスペース03-3234-9999http://www.ints.co.jp/ 大変な二人である。METやウィーン国立など超一流歌劇場のここぞというガラに欠かせないバリトンのハンプソン。英国ロイヤル・オペラの《椿姫》で衝撃を与えて以来、世界の一線を走り続け、日本でも一昨年、《トスカ》で近年例がない長いカーテンコールを浴びたソプラノのゲオルギュー。ソロで聴いても贅沢なのに、デュオ・コンサートが実現する。それも世界に先駆けて一夜だけ。 ハンプソンは1曲目の《エロディアード》から、ロマンティックな美声に酔わせてくれそうだ。《マクベス》や《オテロ》のアリアで、屈折した心情を深く掘り下げるだろう。また、ジャズのスタンダード・ナンバーにも期待。ゲオルギューは得意の《アドリアーナ・ルクヴルール》のほか、十八番の《トスカ》の〈歌に生き、愛に生き〉も歌う。客席の喝采が今から聴こえるようだ。 デュエットでも畳みかける。《シモン・ボッカネグラ》の父娘が再会する二重唱で胸がいっぱいになり、《道化師》の二重唱では不倫カップルの甘くスリリングな駆け引きに、心が高鳴りそうだ。そのうえ数々のミュージカル・ナンバーというデザートを堪能し、《メリー・ウィドウ》のハンナとダニロの二重唱という極上の食後酒にまであずかれるとは、なんたる贅沢。手練れのユージン・コーンは東京フィルを指揮して、彼らの息にピタリと合わせてくるはずだ。 思い出すのは、かつて大ブームになった「三大テノール 世紀の競演」。歌と声の魅力にだれもが酔いしれたあのコンサートの“後継”と言ったら言いすぎだろうか。左:アンジェラ・ゲオルギュー ©Sasha Gusov 右:トーマス・ハンプソン ©Jiyang Chen左より:アントニオ・パッパーノ ©Sim Canetty-Clarke/グレゴリー・クンデ/ヴィットリオ・グリゴーロ ©Jason Bell/イルデブランド・ダルカンジェロ

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