eぶらあぼ 2019.2月号
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41クシシュトフ・ウルバンスキ(指揮) 東京交響楽団快進撃中の指揮者と楽団の邂逅がもたらす“異次元級”の名演文:林 昌英川崎定期演奏会第69回 3/23(土)14:00 カルッツかわさき第668回定期演奏会 3/25(月)19:00 サントリーホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp/ 出色のパフォーマンスが続いた、東京交響楽団の今シーズン(2018/19年度)の定期演奏会。その締めくくりとなる3月定期(東京と川崎)は、クシシュトフ・ウルバンスキが3年ぶりに登場。ベルリン・フィルをはじめ世界中のトップオーケストラに客演し、現在NDRエルプフィルの首席客演指揮者を務めるなど、ますます存在感を高めている。 しかも演目は、ショスタコーヴィチの交響曲第4番。モダニズムが集約された異様な場面の連続、大編成による激烈なエネルギーの爆発、そして全体を覆う不思議なペシミズム——作曲者最大の問題作にして、異形の傑作だ。リハーサルまで暗譜で行うほど作品に没入し、切れ味鋭いサウンドでその本質を抉り出す、ウルバンスキの指揮でこそ聴きたい大作である。東響も12月、ノット指揮でヴァレーズ「アメリカ」の“美しい爆音”による驚異的な名演を披露し、研ぎ澄まされた音響に磨きがかかっている。快進撃中の指揮者と楽団の融合で、 “熱演”という言葉を超えた、異次元のショスタコーヴィチ体験への期待が大いに高まる。 演奏会前半は、16歳でベルリン・フィルと共演して以来、世界の最先端を走り続ける俊才ヴェロニカ・エーベルレをソリストに迎え、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」を。彼女の深い美音で名作を味わえるのは嬉しい好機。ただ、鬼才ウルバンスキとの共演となると、どんな演奏になるのかは全く予想できない。前後半の対比を含め、ライヴのスリリングな醍醐味を堪能できる公演となりそうだ。ヴェロニカ・エーベルレ ©Felix Broedeアレクサンダー・リープライヒ(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団個性的な3作品を並べた“攻め”のプログラム文:柴辻純子第708回 東京定期演奏会3/15(金)19:00、3/16(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 https://www.japanphil.or.jp/ 日本フィルハーモニー交響楽団3月の東京定期に、欧州で活躍する指揮者アレクサンダー・リープライヒが登場する。リープライヒは、1968年、レーゲンスブルク生まれ。ミュンヘンとザルツブルクで学び、クラウディオ・アバドとミヒャエル・ギーレンの薫陶を受けた。長年、ミュンヘン室内管弦楽団の芸術監督を務め、2012年からポーランド国立放送交響楽団の首席指揮者兼芸術監督、さらに昨年秋からプラハ放送交響楽団でも同様のポストに就いている。エネルギッシュでニュアンス豊かな音楽を作るリープライヒ。日本フィルとは初共演だが、彼の本領発揮といえる“攻め”のプログラムに期待が高まる。 ロッシーニの名曲、歌劇《泥棒かささぎ》序曲も、彼が指揮すると、遊び心溢れるスリリングな音楽として楽しめることだろう。大注目は、20世紀ポーランドを代表するルトスワフスキ(1913~94)の交響曲第3番。72年にシカゴ交響楽団の委嘱で作曲が開始されたが、中断をはさみ83年に完成した作品。いわゆる「管理された偶然性」を含み、そこでは指揮者の指示のもと奏者の自由なアドリブで進められる。人気の現代曲で、ルトスワフスキもポーランド放送響と何度も取り上げ、録音も残している。現在ゆかりの楽団を率いるマエストロが、この曲にある歓喜やエネルギーの爆発をどのように表現するのか注目したい。 後半は、ベートーヴェンの交響曲第8番。風を切って突き進む、躍動する演奏で大いに楽しませてくれるだろう。アレクサンダー・リープライヒ ©Sammy Hartクシシュトフ・ウルバンスキ ©Marco Borggreve

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