eぶらあぼ 2019.2月号
35/171

323/9(土)14:00 府中の森芸術劇場 ウィーンホール問 チケットふちゅう042-333-9999 http://www.fuchu-cpf.or.jp/theater/府中の森クラシックコレクション 上原彩子 ピアノリサイタルロマン派作品に内包された感情の起伏を繊細に描き出す文:長井進之介©K.Miura 第12回チャイコフスキー国際コンクールのピアノ部門で女性として、また日本人初の第1位に入賞したピアニストの上原彩子。ソロはもちろん、海外の一流演奏家、オーケストラとの共演も数多く、世界的に活動を展開する彼女が、多くの国際的な演奏家が出演してきた「府中の森クラシックコレクション」に登場する。演奏曲はモーツァルトの「ピアノ・ソナタ第10番 ハ長調 K.330」にシューマンの「ウィーンの謝肉祭の道化 op.26」、ブラームスの「6つの小品 op.118」、そしてリストの「巡礼の年 第2年『イタリア』より 第7番“ダンテを読んで~ソナタ風幻想曲”」。ドイツ・ロマン派の作品を中心としたプログラムが揃った。チャイコフスキーなどロシアもののイメージが強いが、繊細で美しい音色と豊かな歌心に溢れた上原のピアニズムはこれらの作曲家と相性がいい。特にリストは作品の内包する感情に深く切り込んだ演奏を聴かせてくれるはずだ。2/19(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 東京オペラシティチケットセンター  03-5353-9999https://www.operacity.jp/東京オペラシティ Bビートゥーシー→C 安達真理(ヴィオラ)超絶的な現代曲を一挙公開文:柴田克彦撮影:山田 翔 ヴィオラの限界に挑む…まさしくそれが東京オペラシティ「B→C」の安達真理のステージだ。彼女は、日欧でソロと室内楽活動を行うほか、インスブルック響副首席やバンベルク響客演首席奏者を務め、現在はP.ヤルヴィ率いるエストニア祝祭管でも活躍している。 本演目を安達自身の言葉と共に紹介すると、“B”=バッハは、「全体的に憂いを感じ、ヴィオラの音色に合っている」無伴奏チェロ組曲第2番と鍵盤楽器用の「半音階的幻想曲」。これらも意欲的だが、“C”=コンテンポラリーはさらに凄い。「難しい重音をひたすらfffのトレモロで演奏する」ベリオの「セクエンツァⅥ」、「エレクトロニクスと室内楽をするような」藤倉大の作品、「音たちがパズル、カラクリのように積み重ねられる」リゲティのソナタ、「際立って透明感のある」ペルトの「フラトレス」に、若き鬼才・坂東祐大の新作を加えた、超絶技巧の難曲オンパレード。 この「これでもかというほど濃い」と自ら語るプログラムを、彼女の濃密かつナチュラルな演奏で堪能し、ヴィオラの可能性を実感したい。3/5(火)19:00 東京文化会館(小)問 東京コンサーツ03-3200-9755http://www.tokyo-concerts.co.jp/近藤伸子 ベートーヴェンシリーズ Ⅰ作曲家に深く没入し、作品の本質に迫るピアニストが新シリーズを始動文:笹田和人 近藤伸子は、シュトックハウゼンをはじめとする現代作品の紹介に力を注ぐ一方、古典作品でも秀演を重ね、足掛け17年に及ぶ大バッハの鍵盤作品シリーズを2015年に完結させた実力派ピアニスト。全32曲のソナタを軸に、「ディアベッリ変奏曲」など主要ピアノ作品や室内楽も取り上げる、ベートーヴェンシリーズを新たにスタートさせる。 第1回では、楽聖が若き日に作曲したピアノ・ソナタ第1番を。そして、40代後半で完成され、当時の最新型ピアノの表現力を最大限に生かした後期の大傑作、ソナタ第29番「ハンマークラヴィーア」を披露。さらに、佐藤まどか(ヴァイオリン)と藤森亮一(チェロ)、2人の弦の名手を迎えて、ピアノ三重奏曲第1番を弾く。 ベルリン芸大などに学び、20世紀のピアノ作品シリーズを手掛けるなど、先鋭的な演奏活動を展開する一方、国立音大教授として、後進の指導にもあたる近藤。2017年からの1年間、大学の長期国外研究員としてベルリンに滞在し、ベートーヴェンの作品研究とコンサートを行った。帰国後の初リサイタルともなる今回。その成果も存分に反映されるだろう。

元のページ  ../index.html#35

このブックを見る