eぶらあぼ 2019.2月号
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31原ハーゼルシュタイナー麻理子(ヴィオラ) & 上野通明(チェロ) × ダニエル・ゼペック(ヴァイオリン) & オリヴィエ・マロン(チェロ)俊英&達人が挑む大作&秘作文:柴田克彦2/9(土)15:00 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 http://www.toppanhall.com/ トッパンホールの魅力のひとつに、卓抜な審美眼で選ばれた演奏家たちによるオリジナル企画の室内楽がある。「原ハーゼルシュタイナー麻理子(ヴィオラ)& 上野通明(チェロ) × ダニエル・ゼペック(ヴァイオリン)& オリヴィエ・マロン(チェロ)」は、その好例だ。本公演は同ホールに出演を重ねる原と上野を軸にした企画。原は、アントワン・タメスティらに次ぐ世代の旗手として日欧で活躍し、ドイツ・カンマーフィルの客演奏者の経験もある。上野は、2014年のブラームス国際コンクールで優勝後、着実に成長を続ける俊才。室内楽では主奏と助奏のバランスが絶妙な二人だ。彼らの共演者としてオファーを受けたのがゼペック。ドイツ・カンマーフィルのコンサートマスターのほか、アルカント・カルテットやソロで(同ホールでも)活躍しながら、一途に“音楽する”達人だ。そこにシューベルトの弦楽五重奏曲でアルカントQと共演しているマロンが加わる。 プログラムは、何と前半がバッハ/シトコヴェツキ編の「ゴルトベルク変奏曲」。弦の絡みが独自の妙味をなすこの名編曲は、精緻極まりない場面の連続だけに、二人とゼペックのコラボの成果が注目される。次のゼペック&マロンが奏でるシュルホフの二重奏曲も興味津々。そしてアレンスキーの弦楽四重奏曲第2番が最後に来る。チャイコフスキーを追悼した同曲は、チェロ2本の変則四重奏。それゆえの重層感が比類なく、聖歌等を主題とする音楽はすこぶる美しい。だが生演奏は稀なので、この曲を聴くだけでも足を運ぶ甲斐がある。これは、顔ぶれも演目も実に濃密な、音楽的感興溢れる公演だ。上野通明©Masayuki Ikedaニコラス・コロン(指揮) 東京都交響楽団新世代指揮者の才気が光る古典と新古典文:オヤマダアツシ第873回 定期演奏会Cシリーズ 2/2(土)14:00 東京芸術劇場コンサートホール問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp/ シャープでスマートな指揮姿と、若きサイモン・ラトルを連想させるヘアスタイル、オペラを含む古典から現代までの幅広いレパートリー、同じ年(1983年生まれ)のロビン・ティチアーティと共に創設したオーロラ管弦楽団(室内オケ)での活躍、そして2018シーズンからはハーグ・レジデンティ管弦楽団の首席指揮者に。常に若い才能へ目と耳を配っているイギリスの音楽界にあって、もっとも注目される一人が、東京都交響楽団の2月定期演奏会Cシリーズに登場するニコラス・コロンだ。 まだ日本ではノーマークに近いのだろうが、イギリス国内では若い世代の作曲家たちからも信頼されて指揮を任され、欧米各地のオーケストラや歌劇場に客演している、要注目のヤング・マエストロである。30代中盤という充実期を迎えている彼の存在は、熱心な日本の音楽ファンにもっと知られていい。プログラムは、その豊かな音楽性を発揮するのに適しているストラヴィンスキーのバレエ組曲「プルチネルラ」と「火の鳥」。さらには1992年生まれの俊才ピアニストであり、来日のたびにファンを増やしているキット・アームストロングが、明るく爽快でスポーティな印象さえ感じてしまうハイドンのニ長調協奏曲を演奏する。 若い世代の二人による共演も楽しみだが、多彩な音楽へと対応する都響のフレキシブルな演奏によって、幸福な気分を味わえるコンサートになるであろうことは間違いない。さあ、発見する愉しみを胸に東京芸術劇場へ。キット・アームストロング ©Jason Aldenニコラス・コロン ©Jim Hinsonダニエル・ゼペック©Julia Baierオリヴィエ・マロン ©Aline Fournier原ハーゼルシュタイナー麻理子 ©Xiomara Bender

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