eぶらあぼ 2019.2月号
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27チョン・ミョンフン(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団“特別なコンビ”が導く魂の浄化文:柴田克彦第916回 サントリー定期シリーズ 2/15(金)19:00 サントリーホール第917回 オーチャード定期演奏会 2/17(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール第123回 東京オペラシティ定期シリーズ2/20(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 http://www.tpo.or.jp/ チョン・ミョンフンと東京フィルは特別な関係にある。ポスト(現在は名誉音楽監督)を保ち続けて18年。昨年取材した際に彼は「オーケストラとは最初の共演で知り合い、友達から親友になり、最終的には家族になります。私は意味深い関係を長く続けてきた東京フィルを“日本の家族”と呼んでいます」と語っていた。“家族”になった近年の両者は、一段高い境地に達している。パッショネイトな面は不変だが、以前に比べて肩の力が抜けた、スケール大にしてニュアンス豊かな表現を聴かせるようになった。 演奏会形式の《フィデリオ》や姉キョンファとのブラームスのヴァイオリン協奏曲などの雄弁な演奏で感銘を与えた今シーズンの最後を飾るのは、2月のマーラーの交響曲第9番。当コンビのマーラーもまた特別だ。2001年「復活」の感動的熱演以降、毎回濃密な演奏を聴かせ、16年の第5番、17年の「復活」では、まさしく一段上の名演を展開している。それだけに究極の交響曲=第9番への期待は絶大だ。 緩-急-急-緩の異例の構成で「死に絶えるように」終わるこの特別な交響曲。マエストロ・チョンは「この曲で明確なのは、人生が終わりに来ているということ。第1楽章の冒頭から心臓の鼓動が弱々しく刻まれ、ヴァイオリンのフレーズが『さようなら』と言っています」と話していた。10年以上前の彼とN響や東京フィルのライヴは、前半抑え気味で、後半に人生最期の情熱をぶつけるような演奏だったが、“家族”と奏でる今回は果たしてどうなるのか? “特別なコンビ”が披露する“特別な作品”に“特別な注目”が集まる。チョン・ミョンフン ©上野隆文東京文化会館 舞台芸術創造事業 日本・ハンガリー国交樹立150周年記念くちづけ~現代音楽と能~異種のフィールドが交錯する未体験の空間文:伊藤制子3/9(土)16:00 東京文化会館(小)問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 http://www.t-bunka.jp/ 日本の伝統芸能である能とハンガリーの現代音楽との出会いが、斬新な領野を切り開く注目のコンサートである。東京文化会館の舞台芸術創造事業として3月に開催される「くちづけ~現代音楽と能~」は、ハンガリーを代表する世界的巨匠エトヴェシュ・ペーテルの2作品を中心としたプログラムで、両国の国交樹立150周年を祝す記念すべき企画である。 日本初演となる「くちづけ」は幕末の日本を舞台にした官能的な愛の物語『絹』(アレッサンドロ・バリッコ著)からインスピレーションを受けた意欲作。もうひとつは1973年に書かれ、やはり日本文化に触発された「Harakiri」。両作に出演するのはエトヴェシュ作品に精通している青木涼子。異色の能アーティストとしてこれまで数多くの現代作品を成功へと導いてきた青木と演出の平田オリザが、エトヴェシュの世界に新鮮な光を当ててくれるだろう。 この2作に加えて、企画アドバイザーをつとめる細川俊夫の作品と、彼とエトヴェシュの推薦による両国の若手作曲家の新作も披露される。中堀海都の「二つの異なる絵」とバログ・マーテーの「名所江戸百景」で、どちらも委嘱世界初演となる。とりわけ現在ニューヨークで活動する中堀の作品を日本で聴ける機会は少ないので楽しみだ。演奏は、フルートの斎藤和志、打楽器の神田佳子、そしてチェロの多井智紀ら、現代作品を得意とする奏者たちによるアンサンブル。 現代音楽と能、そして日本とハンガリーの架け橋となるスリリングなひとときになるだろう。左より:エトヴェシュ・ペーテル ©Marco Borggreve/平田オリザ ©T.Aoki/青木涼子 ©Hiroaki Seo

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