eぶらあぼ 2019.2月号
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140CDCDCDCD“魂のヴァイオリニスト”甦る若林暢Beans/佐藤采香&清水初海きざし~美しきままに 二十五絃箏~/山本亜美ベートーヴェン:「ワルトシュタイン」「テンペスト」/岡田博美マスネ:タイスの瞑想曲/ショーソン:詩曲/ヴィエニャフスキ:モスクワの思い出、グノーの「ファウスト」の主題による華麗なる幻想曲/ショパン(ミルシテイン編):夜想曲第20番/フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第1番若林暢(ヴァイオリン)タデウシュ・フミェレフスキ 鳥羽泰子 アルバート・ロト(以上ピアノ)久保哲朗:Beans/真島俊夫:二つの夢「ユーフォニアム・カプリチオーソ」/セムレ=コルリー:サクソルニア/ホロヴィッツ:ユーフォニアム協奏曲/スパーク:パントマイム/ウィルビー:フライト/リチャーズ:「ピラトゥス」山の歌佐藤采香(ユーフォニアム)清水初海(ピアノ)沢田穣治:“truth” in the dark/井上鑑:Sound After The Silence/溝入敬三:茉莉花~二十五絃箏のための~/森亜紀:リバーブレーション/高橋久美子:萌(きざし)~二十五絃箏のための~山本亜美(二十五絃箏)ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」・第17番「テンペスト」・第30番岡田博美(ピアノ)収録:2011年11月、五反田文化センター(ライヴ) 他ソニー・ミュージックダイレクトMHCC-30006 ¥2500+税オクタヴィア・レコードOVCC-00147 ¥3000+税コジマ録音ALCD-120 ¥2800+税収録:2017年11月、東京文化会館(小)(ライヴ)他カメラータ・トウキョウCMCD-28362 ¥2800+税2016年の早すぎる死まで長きにわたり“知られざる”存在だった若林暢。17年リリースの国内初CDが高い評価を得るなど、注目を集める彼女の新たに発見された音源が登場。11年五反田でのフォーレのソナタも魅力だが、やはり1986年にヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクールで2位に輝き、国際デビューを果たした直後にポーランドで収録されたマスネやショーソンの小品の流麗なる演奏が聴きどころ。その2年後にジュリアード音楽院ポールリサイタルホールで録られたショパンの「夜想曲」なども、若さに溢れながら音楽的なスケールの大きさに驚かされる。(東端哲也)2018年にユーフォニアムでは世界最高峰とされるリエクサ国際コンクールで日本人初優勝を果たしたほか数々の受賞歴を誇り、ぱんだウインドオーケストラの中心メンバーも務める、東京藝大出身の気鋭奏者のデビューCD。まずは、20世紀半ば以降のオリジナル曲を揃えて同楽器の真髄を存分に聴かせる内容が光る。演奏は驚きの一語。肉感的でふくよかな音色、滑らかでしなやかな歌い回し、唖然とするほど鮮やかな速吹き等の超絶技巧が終始続く。中でも定番のホロヴィッツの協奏曲やウィルビーの難曲は聴き応え満点。同楽器になじみのない方もぜひご一聴を! (柴田克彦)通常の箏の倍近い絃を持つ二十五絃箏は野坂操壽によって開発され、彼女がさまざまな作曲家とコラボすることで可能性が開かれた。今、この道を力強く進めている実力者が山本亜美だ。自身の委嘱作5曲を収めた本ディスクは、その現在を鮮やかに伝える。井上鑑「Sound After〜」では英語のテキストを箏に乗せて歌い弾く。高橋久美子「萌」はギターをつま弾くようにはじまるが、どんどんと深みを増していき、この楽器の幅広い音域と表現力を逆説的に伝える。現代音楽というジャンルのみならず、邦楽特有のイディオムからも放たれ、箏が世界言語をしゃべりはじめた。国内のみならず広く聴かれるべき一枚。(江藤光紀)精緻な技巧、美しく磨き上げられた美音によってあらゆる作品のあるべき姿を提示してくれる岡田博美。数多くのレパートリーを誇る彼だが、意外にもこれまでベートーヴェンのソナタの録音は非常に少なかった。そのため今回のディスクは“待望”といえるものである。「ワルトシュタイン」では美音を活かしながら楽曲の構造を美しく見せてくれるような演奏を、「テンペスト」における劇的でありながらもドラマに飲み込まれることのないバランス感覚を聴かせてくれた。そして第30番では岡田の魅力を特に発揮し、作品にこめられた精神性をも浮き彫りにしている。 (長井進之介)

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