eぶらあぼ 2019.1月号
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59レイフ・オヴェ・アンスネス(ピアノ)作品への敬愛がもたらす至高のピアニズム文:伊熊よし子リサイタル 2019.3/18(月)19:00 東京オペラシティ コンサートホール 問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040他公演 3/17(日)豊田市コンサートホール(0565-35-8200)ユロフスキー指揮ベルリン放送響との共演 2019.3/26(火)19:00 サントリーホール 問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040他公演 3/20(水)東京文化会館(都民劇場03-3572-4311)、3/24(日)兵庫県立芸術文化センター(0798-68-0255)、3/27(水)愛知県芸術劇場コンサートホール(CBCテレビ事業部052-241-8118)※各公演の詳細は右記ウェブサイトでご確認ください。 https://www.japanarts.co.jp/ レイフ・オヴェ・アンスネスはレパートリーをじっくりと広げていくピアニストである。リサイタルのプログラムも熟慮し、全体のバランスを考慮し、自身の「いま」を映し出すものにこだわる。今回の選曲は、シューマンが4つの音符によって情景を描き出した演劇性と物語性に富む「謝肉祭」をメインに据え、フィナーレを華々しく飾る。オープニングもシューマンの「3つのロマンス」で始め、あたかもひとつの芝居を構成しているような空気を醸し出す。これに長年弾き続け、アンスネスの子ども時代の思い出を蘇らせるヤナーチェクの「草かげの小径にて」を加え、シューマン特有の情景につながる表情を備えたバルトークの「3つのブルレスク」へと続け、各々の作品を有機的なつながりをもって組み立てている。 アンスネスのピアノはいかなる超絶技巧も実に自然で、全編は凛とした音に包まれ、余計な感情移入はいっさいなし。潔さと迷いのなさが印象的で、それぞれの作曲家への深い敬愛の念と作品への愛情が音楽に生き生きとした生命力を与えている。自身の存在よりも作品の美質を優先する演奏に聴き手は感銘を受け、ピアノを聴く至福の喜びに満たされる。 今回はウラディーミル・ユロフスキー指揮ベルリン放送交響楽団との協奏曲も予定され、長年弾き続けているブラームスの第1番が披露される。「ブラームスの内省的で滋味豊かな音楽が自分にとても合う」と語るアンスネスのコンチェルト、巨匠への道を歩む彼の真骨頂となりそうだ。©Gregor Hohenberg明日を担う音楽家たち 文化庁在外研修の成果海外で体得した高い音楽性をアピール文:林 昌英2019.2/21(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 日本オーケストラ連盟03-5610-7275 http://www.orchestra.or.jp/ 若手アーティストの海外研修を支援する、文化庁による「新進芸術家海外研修制度(旧芸術家在外研修制度)」。昭和42年より実施され、3200人以上の若い才能がこの制度から羽ばたき、国内外で活躍している。本公演は平成28・29年度に在外研修で研鑽を積んだ4人が、その成果を披露する舞台である。 といった説明だけだと少し固めの公演に見えるが、内容は予想外のひねり具合。なんと、トマジのトロンボーン協奏曲、バーバーのヴァイオリン協奏曲、サン=サーンスのピアノ協奏曲第2番、ルトスワフスキのチェロ協奏曲と、実演機会の稀少な傑作協奏曲が並ぶ。しかも、サポートを務めるのは、充実の演奏を重ねている高関健と東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団。高関はこういった稀少演目の真価を聴かせることに長けており、ソリストと作品、それぞれの最良のパフォーマンスを引き出してくれるはず。 ソロを務める4人は以下の通り。トロンボーンの森岡佐和は京都市立芸術大学卒業、オランダで学び、現在名古屋フィル団員。ヴァイオリンの清永あやは東京藝術大学大学院修士課程を首席修了、南カリフォルニア大学大学院を修了。ピアノの木村友梨香は東京音楽大学卒業、現在ベルリン芸術大学修士課程に在籍。チェロの山澤慧は東京藝術大学大学院修了後、フランクフルトにて学び、現在藝大フィルハーモニア管首席奏者、千葉交響楽団契約首席奏者。文化庁在外研修の成果と共に、彼らの清新な魅力と気迫をしっかり体感できる、期待の膨らむ公演だ。清永あや木村友梨香山澤 慧 ©Ayane Shindo森岡佐和

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