eぶらあぼ 2019.1月号
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56©HIDEKI NAMAI阪田知樹 ピアノ・リサイタル リストへの誘い2019.2/11(月・祝)13:00 横浜みなとみらいホール中野翔太・松永貴志・阪田知樹 ピアノ・トリオ・スペクタクル2019.3/8(金)13:30 東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040/神奈川芸術協会045-453-5080(2/11のみ)https://www.japanarts.co.jp/阪田知樹(ピアノ)若きヴィルトゥオーゾが挑むオール・リストと“3台ピアノ”!取材・文:飯田有抄Interview 阪田知樹は2016年フランツ・リスト国際ピアノコンクールでアジア人男性初の優勝者に輝き、世界の注目を集める新世代のヴィルトゥオーゾだ。「11度(ドからオクターブ上のファまで)の和音」が弾ける大きな手に恵まれた阪田が、得意のリスト作品によるリサイタルを2月に行う。 「75年の生涯を送ったリストの多面的な創作をご紹介しようと、3部構成のプログラムを組みました。人気の高い『ラ・カンパネッラ』は、通常よく演奏される1851年のバージョンと、もっと若い頃の1838年のバージョンの両方を弾きます。後者はあまりの超絶技巧に、アラウやホロヴィッツといった往年のピアニストたちも『演奏不可能』と語ったもの。『パガニーニによる超絶技巧練習曲』の第3番として収められていますが、同じ曲集から第4番『アルペジオ』も続けて演奏します。これはおそらくリストの全作品の中でもっとも難しい作品。録音も数少なく、生演奏はほとんどされない曲ですので、ぜひお聴きいただきたいです」 第2部は30分の大曲、ロ短調ソナタだ。数年前からレパートリーに加えたという阪田は「ベートーヴェン以降のソナタの伝統を受け継ぎながら、ロマン主義的なファンタジーを飛翔させた作品。ピアノ音楽史においても重要であり懐の深い曲」と捉える。 第3部では、歌曲やオペラをピアノ作品に編曲したリストにも光を当てる。 「 『歌劇《ノルマ》の回想』は、リスト国際コンクールで演奏し、審査員と聴衆が総立ちになって喝采してくださった思い入れのある曲です。マリア・カラスの名演の録音は、私自身の表現力の糧となり可能性を広げてくれました」 リストの「演奏スタイル・音楽語法・教育者としての側面を伝えることをライフワークとしていきたい」と言う阪田だが、作曲や即興演奏にも能力を発揮している。その一面を披露するのが、3月に行われる中野翔太、松永貴志と3台ピアノで共演する公演「ピアノ・トリオ・スペクタクル」だ。 「3台ピアノによるガーシュウィンの『ラプソディ・イン・ブルー』は、即興を大いに交えて演奏します。お二人との共演は初めてなので、どんな演奏となるのか楽しみです。中野さんとは2台ピアノでミヨーの『スカラムーシュ』も共演します。理屈抜きに幸せを感じられる大好きな作品です。ソロではリストの『愛の夢 第3番』やショパンの『バラード第1番』といった名曲も演奏しますので、多くの方に楽しんでいただきたいです」日本モーツァルト協会 第606回 演奏会グラン・パルティータの編曲版も! 色とりどりの室内楽を楽しむ文:寺西 肇 夭折した天才作曲家の音楽の本質に迫ろうと、研究者や愛好家で組織され、60年以上にわたって活動を続けている日本モーツァルト協会。第606回の例会(演奏会)に、ドイツ・ベルリンを拠点に活躍するオーボエの名手、渡辺克也が登場し、珍しい五重奏版による「グラン・パルティータ K.361」をはじめ、珠玉の室内楽作品を披露する。 東京藝大在学中に新日本フィルに入団、1990年に日本管打楽器コンクールを制して渡独、ベルリン・ドイツ・オペラ管などを経て、現在はソリスツ・ヨーロピアンズ・ルクセンブルクで首席を2019.2/19(火)18:45 東京文化会館(小)問 日本モーツァルト協会03-5467-0626http://www.mozart.or.jp/渡辺克也 ©Kiyoshi Kamatani務める渡辺。今回は漆原朝子(ヴァイオリン)、松実健太(ヴィオラ)、向山佳絵子(チェロ)、鷲宮美幸(ピアノ)という豪華な顔ぶれと共演する。 ピアノ四重奏とオーボエの編成による「グラン・パルティータ」は、ハンブルクで活躍した作曲家、C.F.G.シュヴェンケ(1767~1822)の編曲。13の楽器で紡がれる原曲とは異なる、新たな魅力が発見できそう。さらに、「オーボエ四重奏曲ヘ長調 K.370」でも渡辺の美音を堪能。30歳で書かれた傑作「ピアノ四重奏曲変ホ長調 K.493」も添える。

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