eぶらあぼ 2018.12月号
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88佐藤祐介ピアノ リサイタル シリーズ PIANO EPOCH Vol.412/14(金)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 カメラータ・トウキョウ03-5790-5560 http://www.camerata.co.jp/佐藤祐介(ピアノ)フランス音楽の秘曲と邦人新作による、才気が光るリサイタル取材・文:伊藤制子Interview 才能の煌めきを感じさせる俊英である。12月14日に「フランス音楽、時代の開拓者たち」と題したリサイタルを開催するピアニストの佐藤祐介。意外にもピアノを本格的に習い始めたのは遅かったという。 「読書が好きで音楽家の伝記などを読むうちに、クラシック音楽に興味を持つようになりました。11歳の終わりに、三善晃先生に作曲を見ていただく機会があり、それを機にピアノもきちんと習うようになりました。その後14歳の頃に受けたピアノコンクールで演奏を褒めてくださった杉谷昭子先生にレッスンをお願いし、多い時には週3回、郡山から東京までレッスンに通いました。バッハから古典、矢代秋雄、三善晃、さらにブーレーズのソナタ第1番まで本当にたくさんの曲を勉強し、コンクールに数多く挑戦したことが現在の糧になっています」 昭和音楽大学4年の時、第10回現代音楽演奏コンクール“競楽X”で優勝。審査員だった高橋アキ、上野信一らに認められ、演奏活動を始めた。今回のリサイタルでは、クープラン一族、フランス六人組を軸にしたプログラムを組んでいる。 「クープラン一族は地味かもしれませんが、音楽的に開拓者でもあると思います。今回弾くフランソワの嬰へ短調の第26オルドゥルには『病みあがりの女』『とげとげしい女』といった奇抜なタイトルの作品があって、謎めいた面白さが感じられます。フランス六人組には日常に根ざした新しさがありますが、タイユフェールの『牧歌』は耳になじみやすく、一般の音楽ファンの方が聴いても楽しめると思います。ミヨーのピアノ・ソナタ第1番はクラスターのような手法も使われているユニークな曲です」 加えて、伊藤巧真、中川俊郎への新作委嘱も予定している。 「伊藤さんにはクープラン一族への、中川さんにはオネゲルの『7つの短い小品』へのオマージュをテーマで、とお願いしました。伊藤さんの作風は、日本的な情緒も備えた独自のものです。中川さんはあらゆる音楽を知り尽くしている才人で、新作は演劇的な所作も含む曲になりそうなので楽しみにしています」 楽譜を読んでいると幸せな気分になれるという佐藤。 「あまり弾かれない曲の中にも素晴らしいものがたくさんあるので、埋もれている作品を積極的に取り上げていきたいですね。以前から多くの作曲家に新作を書いていただいていますが、伊藤さんのように互いの個性をよく知っている方に継続して委嘱し、現代のピアノ音楽のレパートリーを増やしていきたいと考えています」洋楽文庫第2章 小菅 優(ピアノ) & 石坂団十郎(チェロ)理想的なコラボで描くベートーヴェンの世界観文:林 昌英 茨城県日立市の誇る文化拠点、日立シビックセンター。その主催公演として毎年継続しているシリーズ「洋楽文庫」は、第一線のアーティストを招き、名作の魅力に迫り続けてきた好評の企画だ。12月に登場するのは、ドイツをはじめ世界的に活躍する、ピアノの小菅優とチェロの石坂団十郎。ベートーヴェン中期の充実感みなぎる傑作第3番と後年の名品第5番、ふたつのチェロ・ソナタを柱としたプログラムを聴かせる。 小菅のベートーヴェンへの情熱は強ベートーヴェン詣 12/14(金)18:30日立シビックセンター 音楽ホール問 日立シビックセンター0294-24-7720http://www.civic.jp/石坂団十郎 ©Marco Borggreveく、《ベートーヴェン詣》と銘打って彼のピアノ付き作品の全てに挑戦中。ピアノの重要性が高いチェロ・ソナタでも、絶妙な名技と感覚が冴えわたるはず。そして、日本人とドイツ人の両親をもち、数々の名奏を聴かせてきた石坂が、理想的なパートナーと共に作りあげるベートーヴェンは大いに注目。また、今回は第3番第1楽章の初稿も演奏される。彼らの演奏水準で体験できるとなれば、資料的な意味にとどまらず、作曲者の推敲を追体験するような意義深い時間となろう。小菅 優 ©Marco Borggreve ©SmilesStyleStudio

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