eぶらあぼ 2018.12月号
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86©Mami Yasui東京オペラシティ B→C(ビートゥーシー) 高野麗音 ハープリサイタル12/18(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 http://www.operacity.jp/高野麗音(ハープ)バッハも驚く? 超絶技巧満載のハープの現代曲取材・文:原納暢子Interview 次代を担う若手が、バッハと現代音楽がクロスするプログラムを組む、東京オペラシティの人気企画「B→C」に、ハーピストの高野麗音が登場する。 ハープというと、概して夢心地の天上の音楽を連想するが、高野は多様な現代曲が得意。東京藝術大学3年生でパリ国立高等音楽院に留学してから現代ものに開眼したという。 「留学中、毎週現代曲を勉強していくレッスンがあったことがきっかけでした。今回は、ハーピストと関わりを持つ作曲家やハーピストとの共同作業で生まれた曲を選びました。それはまた、私が人生の節目節目で出会った作品でもあります」 それらがヴァリエーション豊かでチャレンジ精神旺盛なプログラムを構成している。 「例えば、フランスで活躍した作曲家のマリユス・コンスタン(1925~2004)が名手フランシス・ピエールの協力で作った『アルパリセ』はトライアングルのビーター(金属のばち)1本で面白い音が鳴るところがあるなど、様々な特殊奏法を聴かせます。昔はチューニングキーを使ったそうですが、最近のものはゴムコーティングされているので、ビーターを使っています」 作曲家・台信遼(1982~)の「円柱」はリルケの詩にインスパイアされている。 「私のリサイタル用に台信さんが書き下ろしてくれました。倍音が多く、それがつながっていくイメージです。彼はパリ留学時代、毎日のように一緒に練習していた友人のひとりです」 とりわけ気合いを感じるのは、ハインツ・ホリガー(1939~)の「前奏曲、アリオーソとパッサカリア」。 「オーボエの名人で作曲家の彼が、ハーピストだった亡きウルズラ夫人に書いた曲で、左右の手で強弱が違ったりして難しいです」 楽譜を見ると、強弱のみならずクレッシェンドとデクレッシェンドを左右で同時に弾くなど超絶技巧を必要とする箇所が多数ある。 高野はホリガー作品にとても縁があるそうだ。 「サントリーホールの『サマーフェスティバル2015』で、オーボエ・ヴィオラ・ハープによる『トリオ』をご本人と演奏したのですが、ホリガーさんの頭脳明晰さと耳の良さに驚きました。その後『コンポージアム2017』で多彩な作曲技法が駆使された大曲『スカルダネッリ・ツィクルス』日本初演にも参加したのです。ホリガーさん指揮による2時間半休憩なしの、まさに極限状態の中での演奏でしたが、本当に感動しました。今まで知らなかったものを見てしまった感じがします」 他にも、米国で活躍したハーピスト、カルロス・サルセード(1885~1961)の「バラード」も披露。 「ペダル操作での転調がたくさんあって、これも難曲です。でもハープのことを多くの人に知ってもらいたい。その素晴らしさを幅広く伝えられる演奏を目指します!」 バッハは「フランス組曲第6番」を取り上げ、武満作品ではフルートの森川公美と共演も。渾身の演奏を期待したい。第480回 日経ミューズサロン ヨハネス・フライシュマン(ヴァイオリン) & 村田千佳(ピアノ) ニューイヤーコンサート今までにない新鮮なコンテンツのステージ文:宮本 明 ワルツやオペレッタだけが新年のウィーン音楽ではない。ウィーンのヴァイオリニスト、ヨハネス・フライシュマンと、ウィーンで学び、その音楽を知り尽くしたピアニスト村田千佳のデュオが贈る日経ミューズサロンのニューイヤーコンサートは、J.シュトラウスⅡはもちろんのこと、シューベルトからクライスラー、R.シュトラウスまで、さらには新作の世界初演(作曲:ヘルムート・スティピッチ)と、古典から現代まで、ウィーン音楽を自由に幅広く切り取った内容だ。2019.1/8(火)18:30 日経ホール問 日経公演事務局03-5281-8067http://www.nikkei-hall.com/4人のバレエ・ダンサーも華を添える。 フライシュマンは1983年ウィーン生まれ。ウィーン・フィルはじめヨーロッパのオーケストラで引っ張りだこの実力派で、オーストリア外務省の音楽大使として世界中を飛び回る一方、ウィーンの伝統大衆音楽シュランメルに取り組むグループや、エレクトリック・クラシカル・バンド「Symphoniacs」に参加するなど、活動域は広大だ。村田と彼が組むこの公演、一味も二味も違ったニューイヤーコンサートになるに違いない。村田千佳ヨハネス・フライシュマン ©Lukas Beck

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