eぶらあぼ 2018.12月号
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84©hiromasa藤木大地(カウンターテナー)愛の喜び、音楽の喜びを心に込めて歌います取材・文:室田尚子Interview 10月にワーナーミュージックよりメジャー・デビュー・アルバム『愛のよろこびは』をリリースしたカウンターテナーの藤木大地。アルバムのタイトルになっているマルティーニの〈愛のよろこびは〉が、映画『ハナレイ・ベイ』(原作:村上春樹、監督:松永大司)の主題歌に採用されたことも話題だ。12月18日には紀尾井ホールで、メジャー・デビューを記念したリサイタルも開催される。17年4月にウィーン国立歌劇場にデビューしたニュースが日本中を駆け巡ったことも記憶に新しい。 「ウィーン国立歌劇場の舞台に立ったことは、僕の音楽家としての意識を大きく変えることになりました。自信もついたし、自分のやりたい音楽をやっていこうと思えるようになった。その結果として今回のアルバムがあり、リサイタルがあります」 アルバムのテーマは“愛と祈り”。頻繁に自然災害が起こり、また争いもなくならない世の中で、心のよりどころとなるような音楽をつくりたいという藤木の思いが込められている。その中には、シューベルトやカッチーニの〈アヴェ・マリア〉など、一般にもよく知られた曲も含まれており、一見すると聴きやすいヒーリングソング集のように思われがちだが、藤木は「このアルバムは芸術歌曲としてつくった」と言い切る。 「例えばシューベルトの〈アヴェ・マリア〉はCMにも使われたりしていますが、本来は〈エレンの歌〉という物語性の高い作品です。そうした、多くの人が持っている曲のイメージとは違うアプローチがある、ということを示すというのがこのアルバムのコンセプトであり、そこに世界中の声楽家が憧れる存在であるマーティン・カッツさんがピアノを弾いて下さっている意味があるのです」 アルバムのタイトル曲〈愛のよろこびは〉が『ハナレイ・ベイ』の主題歌に採用されるにあたってのエピソードも教えてくれた。映画の音楽プロデューサーが藤木の声を聴いて主題歌担当を決めたのは、まだアルバムの録音が行われる前の段階。実際の録音は、映画用とアルバム用と2回行われたそう。 「映画の方は監督や音楽プロデューサーからイメージの説明があり、それに忠実に演奏しました。ですから、アルバムとは全くアプローチが違います。しかも、映画とアルバムでは調性が違っていて、映画の方が音域が高い。これは、劇中で同じ曲をピアノで弾くシーンがあり、その調性に合わせているからです」 12月のリサイタル(ピアノ:松本和将)は、アルバムの曲を中心に、木下牧子・加藤昌則の日本語作品やR.シュトラウスなども演奏する予定。藤木大地の「声」が描き出す音楽の世界を存分に堪能したい。アンジェラ・ヒューイット(ピアノ) バッハ・オデッセイ8現代ピアノで探求するバッハの深き世界文:寺西 肇 粒立ちの良いタッチと流麗なフレージング、スコアの隅々まで見渡せるような透明感ある音楽づくりで、「現代最高のバッハ弾き」と称されるカナダ出身の名ピアニスト、アンジェラ・ヒューイット。4年にわたる全12回のステージで、鍵盤ソロ作品を全て完奏する「バッハ・オデッセイ8」を来年3月、東京で開く。 1985年にトロント国際バッハ・コンクールを制し、一躍注目を浴びたヒューイット。様式感を踏まえる一方、現代の楽器ならではの特性を生かした演奏2019.3/13(水)19:00 紀尾井ホール問 日本アーティストチケットセンター  03-5305-4545http://www.nipponartists.jp/は、古楽全盛の現代にあって、「モダン・ピアノによる理想的なバッハ」と評される。「オデッセイ」は、2016年にスタート。ニューヨークやロンドン、東京など世界の主要都市を巡ってきた。 本シリーズ5度目の来日となるステージは、20代の若きバッハの手になると考えられる、瑞々しい覇気と豊かな創意に満ちた「トッカータ」全7曲(BWV910~916)を披露。さらに、高い技巧と自在な発想が散りばめられた傑作「半音階的幻想曲とフーガ ニ短調 BWV903」を弾く。藤木大地 カウンターテナー・リサイタル“愛のよろこびは”12/18(火)19:00 紀尾井ホール問 AMATI 03-3560-3010http://www.amati-tokyo.com/CD『愛のよろこびは』ワーナーミュージック・ジャパンWPCS-13800¥3000+税

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