eぶらあぼ 2018.12月号
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64パーヴォ・ヤルヴィ ©Yong Bin横浜みなとみらいホール開館20周年パーヴォ・ヤルヴィ(指揮) ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団「シューベルトの新時代」マエストロの“夢”がついに実現!文:林 昌英12/8(土)15:00 横浜みなとみらいホール問 横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000 http://www.yaf.or.jp/mmh/ 慣習にとらわれないアグレッシヴな演奏で世界の注目を集め続けている、パーヴォ・ヤルヴィとドイツ・カンマーフィルのコンビ。演奏の推進力、強い表現意欲と自発性、それを高次元で具現化する技術とセンス——この団体持ち前の個性であり、2004年から芸術監督を務めてきたパーヴォの特長でもある。この幸福な出会いの成果は大きく、日本でもベートーヴェン、シューマン、ブラームスのシリーズなどのプロジェクトを実現し、鮮烈な名演の数々で多くのファンを獲得してきた。そしてこの12月には、パーヴォが「長年の夢」というシューベルトのシリーズが日本で実現する。特に、本ツアーで唯一となる、交響曲第5番と第8番「ザ・グレート」、2つの名作シンフォニーという充実のプログラムで勝負するのが横浜公演だ。 パーヴォはシューベルトの交響曲について、「従来のロマン派寄りの演奏スタイルではなく、むしろベートーヴェンの側からシューベルトにアプローチしたい」と語る。そして、横浜みなとみらいホールは、同コンビの活動初期にあたる06年にベートーヴェン交響曲全曲演奏会を実現し、最先端のパフォーマンスでその名を轟かせた舞台であり、パーヴォ自身にとっても思い入れのある場所であるという。そう考えると、シューベルトのみに絞ったプログラムをぜひ横浜で、という彼の意気込みを見出すことも可能かもしれない。力強く、シンフォニックで、それでいてしなやかな歌にあふれた“新時代のシューベルト”に満たされるべく、土曜の午後の横浜へ。ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団 ©Julia Baierアラン・ギルバート(指揮) 東京都交響楽団生命の息吹がもたらす爆発的なエネルギーを示唆する「春」の音楽文:飯尾洋一第868回 定期演奏会Bシリーズ 12/10(月) 都響スペシャル 12/11(火)各日19:00 サントリーホール問 都響ガイド0570-056-057 http://www.tmso.or.jp/ 東京都交響楽団とは初共演から「独特のケミストリー」が生まれたという首席客演指揮者のアラン・ギルバート。12月の定期演奏会Bシリーズおよび都響スペシャルでは、メンデルスゾーンの序曲「フィンガルの洞窟」、シューマンの交響曲第1番「春」、ストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」というプログラムが組まれた。 シューマンとストラヴィンスキー、ともに「春」を題材とした季節感を先取りしたプログラムであるが、うららかな春と呼ぶにはあまりにもドラマティックな2曲が並んでいるのが興味深い。生命の息吹がもたらす爆発的なエネルギーはときに力強く、眩しく、ときに面妖で、畏怖の念を呼び起こすことを示唆するかのような組合せだ。シューマンの「春」では、冒頭のホルンとトランペットによるファンファーレ風動機が春を告げるが、続くうごめくような春の胎動は過剰なまでの熱気をはらんでいる。ストラヴィンスキーの「春の祭典」で描かれるのは、複雑なリズムとハーモニーで精緻に設計された、洗練された邪教の儀式。春とはいけにえを捧げる禍々しい季節なのだ。 両曲のオーケストレーションは対照的だ。くすんだ色調が玄妙な味わいをもたらすシューマンと、原色を大胆に用いるかのような鮮烈このうえないストラヴィンスキー。作品に応じてサウンドを変化させるギルバートと都響の柔軟性にも注目したい。©Peter Hundert

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