eぶらあぼ 2018.12月号
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62©Yasuo Fujii札幌交響楽団 東京公演 20192019.1/30(水)19:00 サントリーホール問 カジモト・イープラス0570-06-9960 http://www.sso.or.jp/マティアス・バーメルト(指揮)札響との東京デビューは人気有名曲で取材・文:宮本 明Interview 「札幌交響楽団の魅力を、もしひと言でいうなら、音楽に対する真摯な姿勢です」 今年4月に札響の首席指揮者に就任したマティアス・バーメルト。来年1月にはこのコンビでは初めての東京公演に臨む。 「私がどのオーケストラにも求めるのは、忠実なダイナミクスと的確なアーティキュレーション。そして、オーケストラにアーティキュレーションを意識させるのに、モーツァルトほどぴったりな作曲家はいません。彼の作品では、一つひとつの音にどんなカラーを持たせるかが、とても重要だからです。私はザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団やロンドン・モーツァルト・プレイヤーズで、モーツァルトを自分のものとして演奏してきたので、とても近しさを感じています」 東京公演はそのモーツァルトから始まる。弦楽とティンパニのための「セレナータ・ノットゥルナ」。 「とても美しいチャーミングな曲です。札響には非常に優れた弦楽器奏者が集まっています。もちろん、それをさらに良くすることはできるでしょう」 ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番では注目のピアニスト岡田奏をソリストに迎える。北海道出身。初共演だが、東京公演の前に小樽と苫小牧で共演する。 「地元出身の若い音楽家を紹介するのは重要な仕事です。ベートーヴェンは彼女に選んでもらいました。若い人には、やりたいこと、一番自信のあることをどんどんやりなさいと言っています」 そしてメインはブラームスの交響曲第2番。ブラームスの他の3曲の交響曲とはまったくキャラクターの異なる、ハッピーな作品だと語る。 「21年かかって完成した交響曲第1番と対照的に、たったひと夏で書き上げた作品。非常に晴々とした音楽で、ブロンドの髪を風になびかせた、青年時代の非常にハンサムな若いブラームスのイメージに近いと思います。晩年の、しかめつらをして、でっぷりと太ったひげ面の老人の肖像ではなく」 モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスというドイツ音楽の王道プログラム。 「保守的と感じるかもしれませんが、東京での私たちの初コンサート。しかも1回だけの公演ですので、札響に何ができるのかを東京のみなさんにお見せするために、このレパートリーを選びました」 スイス・ベルン近くの小さな町の出身の76歳。長い音楽人生の中、「いま円熟の段階に差し掛かったところだよ」と笑う。その円熟をたっぷり満喫させてくれる王道プログラムに期待が集まる。アンドレアス・シュタイアー プロジェクト10アンドレアス・シュタイアー(チェンバロ) バッハと偉大なる先駆者たち――鍵盤語法の多様性を探る文:寺西 肇 歴史的鍵盤楽器の世界的な達人、アンドレアス・シュタイアーが、トッパンホールで遂行中のプロジェクトの第10回目が12月に開催される。バッハが“鍵盤音楽の集大成”としてしたためた「平均律クラヴィーア曲集」を軸に、多様な側面からその源流を探り、さらに未来へと至る、200年の壮大な音の旅へと聴衆をいざなう。 ステージは、まず、各24曲が全ての調性を網羅する「平均律」の構想の源流として、16世紀イギリスのジョン・ブルによる「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ」を披露。12/18(火)19:00 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター  03-5840-2222http://www.toppanhall.com/そして、第1・2巻から計7曲を厳選し、そこに込められた多彩な創意の源流を、様々な時代や地域の作品を併せて味わうことから、読み取ってゆく。 ベームの作品からは、“前奏曲+フーガ”の構成を。バッハが鍵盤独奏用に編曲したヴィヴァルディからはイタリア趣味、フランス様式はクープラン、半音階的な進行はスウェーリンクから。あるいは、第1巻の終曲に漂う死の予感は、フローベルガーに。さらに、長男フリーデマンの作品で、大バッハの“未来性”を実感。そう、これは知的な冒険旅行なのだ。

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