eぶらあぼ 2018.12月号
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57©Martin Richardson大阪フィルハーモニー交響楽団第524回 定期演奏会 2019.1/17(木)、1/18(金)各日19:00 大阪/フェスティバルホール第51回 東京定期演奏会 2019.1/22(火)19:00 サントリーホール問 大阪フィル・チケットセンター06-6656-4890  カジモト・イープラス0570-06-9960(1/22のみ)http://www.osaka-phil.com/尾高忠明(指揮)これまでの私と違った音を聴いてほしい取材・文:柴田克彦Interview 2018年4月から大阪フィルの音楽監督に就任した尾高忠明。手応えは予想以上だという。 「ちょっと上出来すぎるかなと思うくらい。4月に、ブルックナーの交響曲第8番でスタートを切った(ライヴCDがリリースされた)のですが、皆さんよく弾いてくださって、3回目を終えたベートーヴェン・チクルスでは、指揮台から飛ばされるほどの音圧に驚いています。それに、私が特に大事にしているブルックナーやエルガーでは、作品に合ったいい意味での涙ぐむような浪花節が出てくるのです」 19年1月には新コンビ初の東京公演を行う。メインは、まさにそのエルガーの交響曲第1番。尾高は同曲を「100回以上演奏し、CDも3種録音している」。 「東京の大半のオケでもやっていますが、『大阪フィルでは、また違ったエルガーの1番を聴けますよ!』と声を大にして言いたい。浪花節の良さが出た、エルガー・ファンも喜ぶ演奏になると思い、あえて1月定期で取り上げ、東京にも持っていくことにしました。この曲はロマンティシズムが魅力。そこにエルガーがよく書いているノビルメンテ=紳士らしさがあります。しかし英国人の激しさも含まれており、その粗野に近い音も面白い。しばらく遠ざかっていたので、新鮮な気持ちで大フィルと演奏できるのが嬉しいですね」 一曲目は、武満徹の「トゥイル・バイ・トワイライト」。 「読響の委嘱作品ですが、初演後お蔵入りになっていたのを私が再演しました。とても美しい曲なので、ぜひこちらも大阪フィルの演奏で東京のお客様に聴いていただきたいと思います」 もう一つは、神尾真由子がソロを弾くブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番。 「『トゥイル・バイ~』は、武満さんがドイツ・ロマン派を聴き始めてから書いた作品で、ブルッフと相性が良く、エルガーもドイツ・ロマン派から影響を受けていて、こちらとも合う。そうした関連性の妙を考えた選曲です。ブルッフは神尾さんのような音の豊かな奏者が合っていますし、少し前に共演したとき、さらに成長されていたので、今回も楽しみです」 尾高は「大阪に部屋を借りて」大阪フィルの活動に力を注いでいる。 「大阪フィルはいま若い奏者がどんどん入っています。朝比奈先生が培われた豪快で大きなうねりをもって歌う個性に磨きをかけながら、体験を積んだベテランの奏者と優秀な若手奏者にコミュニケーションをとってもらうための良い触媒でいたいと思っています。ちなみに来年度は『合唱曲を含むブラームス・チクルス』を予定していますよ」 首都圏のファンは、「今までの私と全然違った音を皆さんがどう思ってくださるか、とても楽しみ」と語る東京公演にぜひ足を運びたい。前橋汀子カルテット夢のカルテットが紡ぐ究極の傑作文:柴田克彦 日本を代表するヴァイオリニスト・前橋汀子は、かなり前の取材時に「今後の目標は弦楽四重奏団を組んでベートーヴェンを演奏すること」と語っていた。そして2014年に「前橋汀子カルテット」を結成し、それを実現した。メンバーは、第2ヴァイオリンが久保田巧、ヴィオラが川本嘉子、チェロが原田禎夫と室内楽の経験も豊富な実力者ばかり。しかも一線級のソリスト3人を、東京クヮルテットに創設以来30年在籍した原田が支える構成は、豊かな表現力と構築性を兼ね備えており、2019.1/29(火)19:00 Hakuju Hall問 Hakuju Hallチケットセンター  03-5478-8700http://www.hakujuhall.jp/ファンならずとも聴いてみたいと思わせる。実際、結成後は次々にチケットが完売し、大きな話題を呼んだ。 そんな彼らが1月、昨年に続いてHakuju Hallに登場する。演目は、ラズモフスキー四重奏曲の中でも繊細で内省的な第8番と、切れ目のない全7楽章が思索的かつ自在に流動していく第14番。中期&後期のベートーヴェンの弦楽四重奏の究極ともいえる短調作品2曲を、豪華メンバーが奏でる本公演は、エキサイティングかつ至高の一夜となること必至だ。

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