eぶらあぼ 2018.12月号
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44 オペラを映画館で観るライブビューイングというスタイルは、近年かなり定着してきたようだ。だが、オペラのライブ録画を自宅のテレビで観るということになると、NHKのBSでも放送はあるものの「もっと1年を通してたくさん観たい!」と思う人もいるのではないだろうか。それを叶えてくれるのがWOWOWの『メトロポリタン・オペラ』である。 WOWOWでは何年も前から、ニューヨークのメトロポリタン・オペラ(MET)のライブビューイングのシリーズが放送されており、自宅にいながらにして世界最高峰のオペラハウスの舞台を体験できる。DVDなどが随分普及してきたとはいえ、映像化される演目はごく限られたものであることを思うと、WOWOWのこのシリーズはオペラ好きにとってはとても嬉しいものだし、また普段あまりオペラに馴染みのない人でも、「テレビでなら観てみよう」と思われるのではないだろうか。 そしてこの12月から、いよいよ2017-18シーズンの放送が始まる。まず初回は、流麗で美しいメロディが特徴のイタリア・ベルカントオペラの傑作、ベッリーニの《ノルマ》(新演出)。現地METでのシーズン・オープニングを飾ったこのプロダクションは、デイヴィッド・マクヴィカー演出によるもので、舞台上に作り上げられた神秘的な森のセットが物語に奥行きを与えている。あらゆるソプラノ中でも最も難しいといわれるノルマ役のソンドラ・ラドヴァノフスキー、恋敵であるアダルジーザ役のジョイス・ディドナートという二大ベルカントの女王が激突する様を大いに堪能したい。 2019年1月には、ブロードウェイミュージカル『ライオンキング』の演出家であるジュリー・テイモアが演出を手がけたモーツァルト《魔笛》が登場する。豪華なセット、カラフルで目を引く衣裳、パペッテレビの前でMETの傑作舞台を堪能文:室田尚子WOWOW メトロポリタン・オペラ 特集サイトhttp://www.wowow.co.jp/stage/met/※放送日時などの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。トなどを使った仕掛け満載の舞台は、数あるMETの舞台でも1、2を争う華やかさ。また“世界一のパパゲーノ”とも評されるマルクス・ヴェルバの同役はとてつもなくチャーミングで、何度も《魔笛》を観た人でも魅了されてしまうこと請け合いだ。 春以降に放送されるマスネ《サンドリヨン》(MET初演)も見逃せない一作。有名な「シンデレラ」の物語をオペラ化したもので、キラキラと輝くような絵本の世界が舞台上に出現する。演出は名匠、ロラン・ペリー。衣裳もオシャレで美しく、またセットも非常にセンスがいい。ジョイス・ディドナートのサンドリヨン、アリス・クートの王子様、キャスリーン・キムの妖精とキャスト陣も揃っている。日本ではなかなか上演の機会のないこうした作品がテレビで観られるのは本当にありがたい。上記の3作は特におすすめしたい傑作だ。 他にも、特筆すべきはブロードウェイのスター、ケリー・オハラが出演するモーツァルト《コジ・ファン・トゥッテ》、オペラ帰りのホームパーティで、閉じ込められた紳士淑女の地獄を描いたルイス・ブニュエルのスリラー映画をオペラ化したトーマス・アデス《皆殺しの天使》(MET初演)、バリトンに転向した後も精力的に活動を続けるプラシド・ドミンゴ主演のヴェルディ《ルイザ・ミラー》、現在人気急上昇中のソプラノ、ソニア・ヨンチェヴァがタイトルロールを歌うプッチーニ《トスカ》(新演出)など、見逃せない名作が目白押しだ。 METならではの舞台と衣裳の豪華さ、そして音楽の美しさが一体となった「オペラ」の魅力をぜひWOWOWで発見してほしい。WOWOWの「メトロポリタン・オペラ 2017-18シーズン」《サンドリヨン》©Bill Cooper/Royal Opera House

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