eぶらあぼ 2018.12月号
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214「究極の名曲選」のタイトルは、伊達じゃない。“チャイコフスキーの運命交響曲”とも言われる交響曲第5番に、ロマンティシズムのエッセンスのようなラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」の組み合わせは、まさにロシアの美学の極み。さらに、ベートーヴェン「エグモント」序曲も。“炎のコバケン”の異名をとる小林研一郎の指揮による読売日本交響楽団、日本を代表するピアニストの小山実稚恵の妙技で味わえる。飯塚優子は大阪音楽大学卒業後にドイツで研鑽を積み、現地での演奏活動を経験した実力派ソプラノ。帰国後はソロ活動に加えて、プロデュースや講演活動など幅広く活躍する。今回のリサイタルは、プッチーニ〈愛しのお父様〉やワーグナー〈愛の死〉ほか、オペラの名アリアはもちろん、〈フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン〉などジャズから、〈踊り明かそう〉などミュージカルまで、ジャンルを超越して歌う。同時期にパリで学んだ5人の実力派ピアニストが、2013年に結成した新時代ユニット。2台10手による圧倒的なチャイコフスキーの組曲「くるみ割り人形」をはじめ、ドビュッシー「子供の領分」より(有吉亮治)やヘンゼル編のメンデルスゾーン「一年」より3曲(池村京子)、リスト編のシューベルトの歌曲(佐野隆哉)、ショパン「スケルツォ第1番」ほか(島田彩乃)、メシアン「幼な子イエスにそそぐ20の眼差し」(抜粋/宮崎明香)と各自のソロも。素敵な音のクリスマス・プレゼントが、今年も届く。共にパリで学んだピアノの宇宿真紀子とチェロの宇宿直彰による姉弟デュオ「レ・クロッシュ」。バッハ=グノーやカッチーニ「アヴェ・マリア」など聖夜に相応しい温かな調べのほか、ポッパー「演奏会用ポロネーズ」ほか技巧的な作品も。直彰がバッハ「無伴奏組曲第1番」からプレリュード、真紀子がドビュッシー「喜びの島」など、それぞれのソロもたっぷりと。クラシカル・サクソフォンの世界的奏者として、なお進化の歩みを続ける須川展也。バッハの無伴奏ヴァイオリン作品からの見事な編曲を聴く第1部、トーク・セッションによる第2部、ピアノ小柳美奈子やパーカッション山口多嘉子を交えて、吉松隆「サイバーバード協奏曲」や坂本龍一「Fantasia」と須川自身の委嘱で生まれた傑作など、同時代作品を披露する第3部と、多層的に名手の“いま”を浮き彫りにしてゆく。贅沢な一時だ。第一線で活躍中の女性奏者による好評リサイタル・シリーズに、それぞれソリストとして国際的な活動を展開する、児玉麻里&桃の姉妹が2台ピアノ・デュオで登場。「眠れる森の美女(ラフマニノフ編)」「白鳥の湖(ランゲリ/ドビュッシー編)」「くるみ割り人形(アレンスキー編)」とチャイコフスキーの三大バレエに、ドビュッシー「白と黒で」と魅力的な選曲で、息の合ったアンサンブルの妙味を知らしめる。月の12飯塚優子(ソプラノ)Les Cinq Parisiens パリ5人組土曜ソワレシリーズ「女神(ミューズ)との出逢い」第278回 児玉麻里 & 児玉 桃(ピアノ・デュオ)熱狂のロシア 究極の名曲選 小林研一郎(指揮) × 小山実稚恵(ピアノ) × 読売日本交響楽団須川展也(サクソフォン)レ・クロッシュ クリスマスコンサート~ピアノ&チェロの世界~12/2(日)14:00 紀尾井ホール12/9(日)15:00 トッパンホール12/8(土)17:00 フィリアホール12/8(土)14:00 かつしかシンフォニーヒルズ12/9(日)14:00 三鷹市芸術文化センター12/9(日)16:00 南麻布セントレホール文:笹田和人小林研一郎 ©読響小山実稚恵 ©HIROMICHI UCHIDAレ・クロッシュ©Yuji Hori©Yoshinori Kurosawa児玉麻里©Vincent Garnier児玉 桃 ©Marco Borggreve

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