eぶらあぼ 2018.12月号
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182CDCDCDCDショパン:ピアノ・ソナタ第3番 ~イリュミナシオン 光り輝く事~/藤井一興南聡 作品集 Second Air.../クァルテット・レオーネ 他華麗なる舞曲/飯森範親&東京佼成ウインドオーケストラ捨てられて~イタリアのヘンデル/キャロリン・サンプソン&キングズ・コンソートF.クープラン:神秘的な防壁、キタイロンの鐘/ラモー:鳥のさえずり/モーツァルト:ピアノ・ソナタ イ短調 K.310/フォーレ:夜想曲第6番/ショパン:ピアノ・ソナタ第3番/藤井一興:宮島の鳥居に波は震える チェロとピアノのための藤井一興(ピアノ)横坂源(チェロ)南聡:第2アリア…(弦楽四重奏)、昼Ⅷ、「工房より/1a. 頭部」、「波はささやき5/ロンド・カプリチオーソ」クァルテット・レオーネ 多久潤一朗(フルート) 有馬理絵 菊地秀夫(以上クラリネット) 豊田庄吾 松本卓以(以上チェロ)甲斐史子(ヴァイオリン) 大須賀かおり(ピアノ)C.T.スミス:華麗なる舞曲、バンドへの贈りもの/P.クレストン:アルトサクソフォン協奏曲/ショスタコーヴィチ:バレエ組曲「ボルト」飯森範親(指揮)田中靖人(サクソフォン)東京佼成ウインドオーケストラヘンデル:カンタータ「捨てられたアルミーダ」「炎の中で」「高貴なる望みの子」「死に瀕するアグリッピーナ」キャロリン・サンプソン(ソプラノ)ロバート・キング(指揮)キングズ・コンソート収録:2018年3月、東京文化会館(小)(ライヴ)他マイスター・ミュージックMM-4044 ¥3000+税コジマ録音ALCD-119 ¥2800+税収録:2017年11月、東京芸術劇場 コンサートホール(ライヴ)ポニーキャニオンPCCL-50018 ¥2500+税VIVAT/東京エムプラスPVIVAT117 ¥2857+税アルバムの副題はランボーの詩集からとられたもので、ルイ14世の時代から受け継がれたフランス芸術を味わうというコンセプト。柔らかい輝きを放つ音で奏でられるクープランとラモー、瀟洒な色と落ち着きを感じるモーツァルトの「ソナタ K.310」と、香り高い音楽が続く。フォーレの夜想曲第6番は、深い歌声のような表現が印象的。ショパンのソナタ第3番は、1フレーズずつ慈しむように奏でられる。藤井自身の作である「宮島の鳥居に波は震える チェロとピアノのための」では、神々しく光る水面を表すようなピアノに横坂源のチェロが重なり、夢幻的な空気を創出する。(高坂はる香)ベートーヴェンの複合形式を参考にした約35分かかる巨大な弦楽四重奏は、高音域の音の雲から緻密な綾が絶え間なく紡ぎだされる。若手のクァルテット・レオーネが終始シャープな音像で描いている。続く「昼Ⅷ」は既存のクラリネット独奏曲、フルートとチェロの二重奏を組み合わせ、さらに三重奏部を書き足した。三重奏「工房より」は新しい創作フェーズのスタートで、逆に「波はささやき5」は、このシリーズの完結編であると同時に本盤を締めくくるロンド楽章の役割を果たす。“ワーク・イン・プログレス”的な南の音楽思考が、作品の完結性を重視する古典の“型”とキメラのような融合を果たした。(江藤光紀)2012年の『火の鳥』以来となる飯森&佼成ウインドの2作目のCD。前作で濃密な名演を聴かせた飯森は、今回も同楽団との相性の良さを示す快演を展開している。まずは「華麗なる舞曲」が圧巻。冒頭から驚異的スピードと圧倒的妙技に度肝を抜かれ、めくるめく展開に耳を奪われる。クレストンのサクソフォン協奏曲では、田中靖人の明瞭かつ豊潤なソロに酔わされ、緩急のメリハリと緻密な表現が光る「ボルト」では、曲の魅力を再認識させられる。明晰・明快にして密度の濃い演奏は栄養価満点。何より音楽に生気が溢れているので、聴いていてすこぶる愉しい。 (柴田克彦)フライブルク・バロック・オーケストラとの来日ツアーで、名唱を聴かせてくれたばかりの英国のソプラノ、サンプソン。彼女の持ち味は、透明感だけを優先するのでなく、がっちり芯のある、時にしっかりとドスを利かせて歌い込むダイナミックさだ。劇的な感情の起伏を伴う、若きヘンデルによるイタリア語カンタータは、まさにうってつけの題材。圧倒的な安定感をベースに、繊細さと大胆さを巧みに出し入れ、燃え盛る情熱も、忍び寄る孤独も、余さず表現し尽くす。バックを担うキングズ・コンソートも、英国の古楽団体にありがちの穏健なイメージを裏切る、鬼気迫る凄演を披露する。(寺西 肇)

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