eぶらあぼ 2018.11月号
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64CD『ARCO/死と乙女』アールアンフィニ(ソニー・ミュージックダイレクト/ミューズエンターテインメント)MECO-1050(SACDハイブリッド盤)¥3000+税©アールアンフィニストリング・クヮルテットARCO(弦楽四重奏)満を持して16年ぶりに新アルバムをリリース取材・文:宮本 明Interview 1996年創設の「ストリング・クヮルテットARCO」は、現在メンバー全員が在京オケの首席奏者たち。伊藤亮太郎(第1ヴァイオリン/N響コンサートマスター)、双紙正哉(第2ヴァイオリン首席/都響)、柳瀬省太(ソロ・ヴィオラ/読響)、古川展生(首席チェロ/都響)。 10月発売のニュー・アルバム『死と乙女』は、実に16年ぶりのリリースだ。シューベルトのタイトル曲と、ウェーベルンの「弦楽四重奏のための緩徐楽章」のカップリング。「死と乙女」を提案したのは柳瀬だった。 柳瀬「悪ガキだった4人も、年輪を重ねて40代半ば。『死と乙女』が身体に入ってくるのにちょうど適しているかなと思って。若い時は、そんなに引き出しもないし、勢いで弾いているところがあった。『死と乙女』には、それを超える表現が必要ですから」 伊藤「確かに。若い頃の勢いも失いたくないですが、それプラス、自分たちの経験が、良い方向に働いたなと思いました」 古川「それぞれが違う音楽人生を歩んでいる中でも、20年以上やってきて、持ち寄る言葉は一緒なんだ、同じ方向を向いてやってきたんだなと、改めて確認できた感じですね。方向性を共有しやすい。音がすごく混じってきたなと思います」 双紙「僕もそれを一番感じた。他の3人を本当に聴き合える。ああ、こいつが今こう弾いてるから俺はこう弾こうとか。『聴く場所』が揃ってきたような気がしました」 ウェーベルンは十二音技法に行き着く前の初期作品。濃厚な後期ロマン派の香りが漂う美しい音楽だ。 柳瀬「『死と乙女』は、各自の個性よりも様式感とか語り口が大事だと思うのですが、ウェーベルンは、それぞれの思い入れが存分に出せる曲です」 伊藤「カップリングとしてバランスがいいね」 柳瀬「今回、シューベルトもわりと落ち着いた演奏だと思いますし、そこにこの静かなウェーベルン。落ち着いて聴いていただけるアルバムだと思います」 古川「全員が普段オーケストラでも弾いている。ソリストの集まりではなく、ずっと合奏の中で生きてきた僕たちの作る音楽をぜひ聴いていただきたいですね」 双紙「録音がすごく良くて、本当に生で聴いているような音質で聴けると思います」 伊藤「みんなの和声感とかも含めて、本当にうまく録音してもらいました。もちろん、経験とか歌い方とか、いろいろ聴いていただきたいのですが、まず現在のわれわれのサウンドを聴いてほしいですね」 シューベルトの両端楽章はとても刺激的。流麗なウェーベルンとの対置で先鋭さはいや増す。一方で同名歌曲が引用された第2楽章「死と乙女」の変奏は絶妙なテンポ感で深く沈潜してゆき、いったんト長調に転じる“天国感”はすごい。名曲の、新たな注目盤となりうる一枚だ。11/22(木)19:00 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール問 ミュージック・ペンクラブ・ジャパン事務局03-3556-0200 http://www.musicpenclub.com/ミュージック・ペンクラブ音楽賞 30周年記念コンサートTimeless, Borderlessジャズのレジェンドも登場! ジャンルを超えた刺激的なステージ文:小室敬幸 クラシックとポピュラー双方の録音や公演を表彰してきた「ミュージック・ペンクラブ音楽賞」が30周年を迎えるにあたり、ジャンルの垣根を超えた記念コンサートを開催する。出演するのは四半世紀近くにわたり日本で古楽を牽引してきた団体アントネッロと、ジャズ界のレジェンド日野皓正…意外な組み合わせと思われるかもしれないが、実はアントネッロの濱田芳通は日野の大ファン。その上、これまでもジャズピアニストと共演し、即興演奏を披露している。 一方の日野も近年、各地で吹奏楽部などの青少年たちと交流。様々なジャンルと積極的に共演を重ねているだけに待望の共演ともいえるだろう。第1部は古楽が基調となり、そこに日野と結成50周年の大ベテラン、タイムファイブ(ジャズ・コーラス)が加わっていき、第2部ではこれが反転するという。会場に足を運ばなければ、どんな音楽が聴アントネッロ日野皓正けるのか絶対に分からない、刺激的な一夜になることは間違いないだろう。
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