eぶらあぼ 2018.11月号
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62アレクセイ・リュビモフ ピアノ・リサイタル~ヒストリカル・インストルメントを求めて~ロシアの鬼才がショパンの愛したピアノを弾く特別な一夜文:寺西 肇11/2(金)19:00 サントリーホール ブルーローズ(小)問 M.C.S. Young Artists 050-3479-9826 http://www.mcsya.org/ 歴史的演奏法の興隆を受け、ポーランド国立ショパン研究所が「ショパン国際ピリオド楽器コンクール」を新たに創設。今年9月にワルシャワで第1回を開催、今後は5年ごとに実施される。その審査員の一人に選ばれたのが、世界的な名ピアニストとして活躍する一方で、ロシアにおける歴史的鍵盤楽器の先駆者としても知られるアレクセイ・リュビモフ。審査員就任を記念し、エラールのフォルテピアノを駆り、ショパン「バラード」など珠玉の名曲を弾くリサイタルを開く。 リヒテル亡き後、ロシア・ピアニズムを体現できる“最後の巨匠”と目されるリュビモフは、ソビエト時代からシェーンベルクやシュトックハウゼンなど、20世紀作品をロシア初演するなど、モダン・ピアノで先鋭的な活動を展開。と、同時に早くから歴史的鍵盤楽器の演奏にも手を染め、フォルテピアノでモーツァルトやショパンを録音。エイジ・オブ・インライトゥメント管弦楽団など、主要な古楽アンサンブルとも共演を重ねている。 今回のリサイタルでは、サントリーホールが“秘蔵”する、1867年製エラールを使用。パリのエラール社製の楽器は、ショパンなどが愛用したことで知られる。その特徴は、何といっても、現代の楽器には決して出せない、まろやかな音色。印象的な響きを操り、ショパンの「バラード」全4曲やベートーヴェン「ソナタ第30番」、ドビュッシー「前奏曲集」からの抜粋を紡ぐ。また、第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクールで、第2位となった川口成彦がゲスト出演することが急遽決定。リュビモフとの連弾などを披露する、内容盛りだくさんのステージとなる。©F.Sechet東京オペラシティ Bビー・トゥー・シー→C 益田展のりゆき行(ギター)聴いた後にポジティヴなものを感じてほしい文:飯尾洋一11/10(土)14:00 長崎ブリックホール 国際会議場問 NBCソシア095-826-530411/20(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 http://www.operacity.jp/ 「バッハからコンテンポラリーへ」をテーマに掲げる東京オペラシティの名物リサイタル・シリーズ「B→C」。11月は気鋭のギタリスト、益田展行が登場する。 益田は2003年東京国際ギターコンクールで1位なしの2位を獲得した後、ケルン音楽大学ギター科、ワイマールのフランツ・リスト音楽大学ギター科に学び、数々の国際コンクールで上位入賞を果たしている。ドイツでは「古楽、とりわけバッハをしっかりと学びたい」と考え、チェンバロやフラウト・トラヴェルソの教授から演奏解釈や作品様式について指導を受けたり、副科としてリコーダーのレッスンまで受けたという。デビューCDでもバッハをとりあげた。 そんな来歴を考えれば、「B→C」シリーズへの出演者としてこれほどふさわしい人もいない。バッハの作品からは、デビューCDにも収められた無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番と無伴奏チェロ組曲第6番が選ばれた。これら無伴奏作品やリュートのために書かれたバッハの作品は「ギターで演奏しても作品の本質を損なうことはない」という。 コンテンポラリー作品では、武満徹の死を悼んで書かれたブローウェルの「HIKA(悲歌)」、その武満徹の「すべては薄明のなかで」、そしてブリテンの「ダウランドによるノクターナル──『重き眠りよ来たれ』にもとづくリフレクションズ」が演奏される。静謐な詩情にあふれた作品が目立つ。プログラム全体のテーマは「闇から光へ」。「聴き終えた後になにかポジティブなものを感じてほしい」という奏者の願いが込められている。同公演は益田の出身地、長崎でも行われる。©TAKUMI JUN

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