eぶらあぼ 2018.11月号
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59舘野 泉(ピアノ) バースデー・コンサート左手のために書かれた委嘱4作品を初演文:飯田有抄11/9(金)19:00 東京文化会館(小)問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp/ 82歳を迎える舘野泉が「バースデー・コンサート」を開く。脳溢血で倒れ、「左手のピアニスト」として復帰してから15年。舘野の揺るぎない音楽への愛、優しさと強さに満ちた人間性、しなやかで深みある演奏に惹かれる世界中の作曲家たちが、彼に「左手のための」ピアノ作品を捧げ、90曲もの新作が生まれてきた。 この「バースデー・コンサート」では、そうした一連の作品が演奏される。今年8月に急逝した作曲家・末吉保雄も、舘野のために作品を残した一人。藝大同期生であり、深い親交のあった末吉の作品「土の歌・風の声」「いっぱいのこどもたち」を、当初の予定を変更してプログラムに加える。さらに、没後10年となるフィンランドの作曲家で、全ピアノ曲を舘野に捧げたノルドグレンの「振袖火事~小泉八雲の『怪談』によるバラードⅡより」も取り上げ、二人の大切な友人を偲ぶ。 コンサート後半は3曲の初演作品。一柳慧の「FANTASIA 左手のために」、吉松隆の「金魚によせる2つの雨の歌」、そしてcobaの「謝肉祭 左手のピアノとフルートのために」だ。いずれも「舘野泉左手の文庫(募金)」助成作品として書かれた意欲作である。coba作品はフルートとのデュオ。共演者には、ジャンルの垣根を越えて幅広いレパートリーで注目されるフルーティスト・藤井香織が登場する。「左手のためのピアノ音楽」という確固たる一つの音楽的世界を築いた舘野の響きに、改めて耳を傾けたい。©山岸 伸東京バレエ団『ザ・カブキ』世界に誇る日本人バレエの金字塔、再び!!文:高橋森彦12/15(土)、12/16(日)各日14:00 東京文化会館問 NBSチケットセンター03-3791-8888 http://www.nbs.or.jp/stages/2018/kabuki/ あの『忠臣蔵』がバレエに!? 20世紀を代表する名振付家であるモーリス・ベジャールが1986年、東京バレエ団に振り付けした『ザ・カブキ』(音楽:黛敏郎)は、初演時に一大センセーションを巻き起こした。以後現在までに日本を含む16ヵ国で197回上演され、数々の著名歌劇場でも披露し、世界に誇る名作の誉れ高い。 物語は歌舞伎の『仮名手本忠臣蔵』に基づく。現代の青年が江戸時代にタイムスリップし、主人公の由良之助となり四十七士を率いて主君の仇を討つ——。日本人の忠誠心を扱った物語を歌舞伎の所作や様式美を大胆に生かしながらバレエの技法で描き、和魂洋才の極みといえる。 由良之助が主君の仇を討つことを決意する際の7分半に及ぶ凄絶なソロ、四十七士が壮麗なフォーメーションを組んでの討ち入りなど躍動感あふれる踊りは見どころだ。また主君の未亡人である顔世御前が内に秘めた思いを繊細に物語る舞いや運命に翻弄されるおかると勘平の悲劇といった人間ドラマの名場面に事欠かない。 今回は由良之助役をバレエ団の大黒柱としての貫禄が出てきた柄本弾、しなやかな踊りで魅せる秋元康臣が競演し、顔世御前を上野水香、奈良春夏がダブルで務めるなど多士済々の演者たちが『忠臣蔵』の世界を鮮やかに彩る。 2019年7月、ウィーン国立歌劇場とミラノ・スカラ座で久々に上演予定。初演から30年以上経てなおも世界を魅了し続ける東京バレエ団のお家芸を堪能したい。Photo:Kiyonori Hasegawa
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