eぶらあぼ 2018.11月号
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55大宮臨太郎(ヴァイオリン)&岩崎洵奈(ピアノ)2017-2020~ベートーヴェン生誕250年を祝う2019.2/8(金)19:00 かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール問 かつしかシンフォニーヒルズ03-5670-2233 http://www.k-mil.gr.jp/11/13(火)発売CD『ジェイ・セカンド~バラード~』日本アコースティックレコーズNARD-6009¥3000+税岩崎洵奈(ピアノ)バラードはショパンの“人生”のようなものだと思います取材・文:長井進之介Interview ウィーンと日本を拠点に幅広い演奏活動を展開するピアニストの岩崎洵奈。アルゲリッチから「自然で美しい演奏」と高い評価を受け、2010年のショパン国際ピアノコンクールではディプロマ賞を獲得するなど、ショパンは彼女にとってなくてはならない存在。そんな彼女がショパンのバラード4曲を収めた3年ぶりとなるアルバム『ジェイ・セカンド~バラード~』をリリースする。 「バラードは4曲とも10代のころからずっと弾き続けてきた大切な作品で、いま出せるものを出したいと思い録音しました。これらはショパンの“人生”のようなものだと思っていて、演奏するたびに感じ方も変わっていくので、一緒に年を重ねていくような感覚があります。また、『ジェイ・ファースト』のときは“リズム”をテーマにしたのですが、今回はイメージをガラリと変えてプログラミングしたかったという想いもありました」 CDのジャケットも前回の白を基調とした華やかなものと対照的にシックな雰囲気でまとめられている。また小品が多く並んでいた前作に対し、今回はベートーヴェンのソナタ第17番「テンペスト」も収めるなど非常に重厚だ。 「せっかくウィーンに住んでいるので、その空気感を出したいなと思い、ベートーヴェンやツェルニー、グリュンフェルトの作品も入れました。『テンペスト』は32曲あるソナタの中で『第九』と同じ唯一のニ短調で、ベートーヴェンの中でとても重要な作品だと思っています」 岩崎は現在もウィーン国立音楽大学大学院で研鑽を重ねており、ベートーヴェンの演奏に力を入れているところだという。 「もともとよく弾いている作曲家ではあったのですが、先日ご縁があってイタリアのポジターノというところにヴィルヘルム・ケンプが住んでいた家があり、そこでベートーヴェンの様々な作品を扱うマスタークラスやコンサートに参加して濃い時間を過ごすなどして、最近特によく弾くようになりました。またショパンを追求していくうち、ベートーヴェンにつながるところがたくさんあるという発見もあり、非常に注目しているんです」 2019年2月には「大宮臨太郎&岩崎洵奈 2017-2020~ベートーヴェン生誕250年を祝う」と題されたオール・ベートーヴェンによるシリーズの第2回に出演予定だ。 「昨年からはじまったシリーズで、ベートーヴェンのピアノソロやデュオ、トリオに歌曲など様々な作品を通して、ベートーヴェンをより深く見つめていきます」 ベートーヴェンを探求し、さらに深みを増したショパン、そしてウィーンの空気を存分に纏った彼女だからこそ出せるものが詰まった『ジェイ・セカンド』をぜひ堪能してほしい。11/23(金・祝)14:00 王子ホール問 プロアルテムジケ03-3943-6677http://www.proarte.jp/安倍葉子 ピアノリサイタル ドビュッシー・シリーズ 2012-2018 第7回ドビュッシーとその周辺にフォーカスして文:笹田和人©篠原栄治 実力派ピアニストの安倍葉子が、ドビュッシー生誕150年の2012年から、ピアノ作品全曲演奏を軸に続けてきた「ドビュッシー・シリーズ」(全7回)が、いよいよ大団円へ。没後100年となる今年、開かれる最終回では、「映像第2集」などドビュッシー自身の作品だけでなく、編曲やオマージュ作品も取り上げ、稀代の鬼才の実像に迫る。 桐朋学園大学からパリ・エコールノルマル音楽院に学び、国際的に活躍する安倍。特に、フランス音楽のスペシャリストとして知られ、本シリーズではドビュッシー自身の作品にとどまらず、彼が影響を受け、与えられた周辺の作曲家にも目を向け、多角的にその創作の現場へと肉薄してきた。 今回はまず、バルトークがドビュッシーを偲んでしたためた「ハンガリー農民歌による即興曲」第7曲を。そして、「映像第2集」を軸に、「12の練習曲」「前奏曲集第1巻」からの楽曲など、ドビュッシーの傑作を披露。最後はイギリスのピアニスト、L.ボルヴィック編曲による、「牧神の午後への前奏曲」で締め括られる。

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