eぶらあぼ 2018.11月号
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52ミクローシュ・ペレーニ ベートーヴェン・チェロソナタ全曲演奏会巨匠チェリストが放つ渾身のベートーヴェン文:江藤光紀第1日 2019.2/14(木) 第2日 2019.2/15(金) 各日19:00 浜離宮朝日ホール問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990 http://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/ ミクローシュ・ペレーニのチェロは大地に足をしっかりとつけ、フレージングを隅々まで磨き抜き、豊かな低音から音が上がるにつれてぐんぐんと伸びていく。聴き手の居住まいをたださせる折り目正しい演奏から、曲のこうあるべきという理想が立ちあがる。今回フライヤーに一文を寄せている長谷川陽子をはじめ、同業チェリストからの評価もめっぽう高い名匠で、音楽に向かう全人的な姿勢も尊敬を集めているのだろう。 さて、浜離宮朝日ホールでは2014年に息子のピアニスト、ベンジャミンとの競演で、15年にはバッハの無伴奏ソナタで、いずれも2日間にわたりその至芸にじっくりと向かい合う機会を作ってきた。今回はチェロ・ソナタ全5曲にモーツァルトとヘンデルの主題による3つの変奏曲、さらにホルン・ソナタの編曲版と、ベートーヴェン尽くしの2日間だ。 共演はペレーニとほぼ同世代・同郷のブダペストに生まれたイムレ・ローマン。日本でも演奏者・教育者として足跡を残してきたべテランだ。ペレーニは1979年にはデジュー・ラーンキ、さらに2000年代前半にはアンドラーシュ・シフと、いずれもハンガリーを代表するピアニストとこれらの録音を残している。今年70歳を迎えたペレーニにとっては愛着もひとしおのプログラムだろうが、ベートーヴェンのチェロ・ソナタは生涯にわたって書き継がれ、それぞれの時代の創作様式を反映しているだけに、ほぼ20年の間隔で残されてきた過去の録音と比較すれば、作曲家と演奏家の省察の歩みをたどることもできよう。イムレ・ローマンジョルディ・サヴァール(ヴィオール) & エスペリオンⅩⅪ即興と舞曲の愉悦──レジェンドが紡ぐスペイン黄金世紀の音楽文:寺西 肇スペイン黄金世紀の舞曲 フォリアとカナリオ ~旧世界と新世界~11/22(木)19:00 浜離宮朝日ホール問 日本アーティストチケットセンター03-5305-4545 http://www.nipponartists.jp/11/24(土)15:00 三鷹市芸術文化センター問 三鷹市スポーツと文化財団0422-47-5122http://mitaka-sportsandculture.or.jp/geibun/他公演 11/25(日)伊丹アイフォニックホール(072-780-2110) ヴィオラ・ダ・ガンバ(ヴィオール)の名手にして、その復権の立役者であり、古楽ムーヴメントの興隆にも大きな役割を果たしてきた、スペインの鬼才ジョルディ・サヴァール。自らのアンサンブル「エスペリオンⅩⅪ」を率いて来日し、ルネサンスからバロックにかけて全ヨーロッパを席巻した「フォリア」と「カナリオ」、2つの舞曲を縦糸、2人のスペイン王による治世を横糸に、しなやかで鮮烈な響きの世界を編み上げる。 バロック前期に隆盛を極めたものの、輝かしい音色で音量に優るヴァイオリン属に弦楽器の主役の座を奪われたヴィオラ・ダ・ガンバ。しかし、サヴァールは半世紀以上にわたり、忘れ去られた技法や楽曲の復活に尽力、その魅力を伝えてきた。1974年には古楽集団「エスペリオンⅩⅪ」を創設し、生き生きと血の通った快演を展開。今回、エスペリオンを帯同しての来日は13年ぶり。豊かな響きを纏った音空間が、久しぶりに国内で体感できる。 今回のテーマは、15世紀にイベリア半島で生まれた3拍子の舞曲「フォリア」と、アフリカに近いカナリア諸島に起源を持つ舞曲「カナリオ」。そして、スペイン王カルロス1世と、その息子で、新大陸まで含めた大帝国を築いたフェリペ2世が治めた“黄金世紀”こと15~16世紀が舞台に。ディエゴ・オルティスやアントニオ・デ・カベソンら、これらの時代に活躍した大作曲家の作品から伝承曲まで、バロック・ハープのアンドルー・ローレンス=キングらとともに自在な即興を交えて披露。グルーヴ感みなぎる熱演に、“古い音楽”の既成概念は覆ってしまうだろう。ジョルディ・サヴァールアンドルー・ローレンス=キングミクローシュ・ペレーニ ©Andrea Felvégi
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