eぶらあぼ 2018.11月号
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46ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団ブラームス円熟期の傑作と甘く切ないラフマニノフの魅力を存分に文:柴辻純子第665回 定期演奏会 11/3(土・祝) 18:00 サントリーホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp/第110回 新潟定期演奏会 11/4(日)17:00 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館問 りゅーとぴあチケット専用ダイヤル025-224-5521 http://www.ryutopia.or.jp/ 音楽監督ジョナサン・ノットとの5シーズン目も順調な東京交響楽団。すでに2020年3月までの次のシーズンのプログラムも発表され、ますます好調、快進撃を続けている。ノットが登場する11月定期公演は、ブラームス「ピアノ協奏曲第2番」とラフマニノフ「交響曲第2番」の大作2曲を組み合わせたプログラム。ロマンティシズム溢れるこれらの作品に、ノットがどのようなアプローチをみせるのか楽しみである。 円熟期のブラームスによる名曲のひとつ「ピアノ協奏曲第2番」は、独奏ピアノとオーケストラが対等に結びつけられた、4楽章構成の交響的な協奏曲。第1番のような重苦しさはなく、ハンガリー・ジプシー風の民族的な要素や、イタリア旅行の経験を反映した明るい色彩感が全体を支配する。 ピアノは、1981年生まれのドイツのヒンリッヒ・アルパース。初来日のアルパースは、ハノーファーとニューヨークのジュリアード音楽院で研鑽を積み、現在はベルリンを拠点に活動している。古典から現代音楽までレパートリーは広い。抜群のテクニックと深い抒情性を備えた彼の演奏に期待が高まる。 そして後半は、ラフマニノフ「交響曲第2番」。むせぶような甘く切ない旋律が繰り返される第3楽章「アダージョ」が有名だが、全曲を通じてしなやかな旋律が大きな起伏を描き、ラフマニノフ熟練の管弦楽法が輝きを放つ。ノットの明晰な指揮で、東響の弦楽器の艶やかな音色や管打楽器の明快さが、壮大な音楽のなかで際立つだろう。ヒンリッヒ・アルパースアンドレア・バッティストーニ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団魅惑のオペラ・アリア・コンサート感動のクライマックスが延々と続く魅惑の2時間半文:香原斗志11/20(火)19:00 横浜みなとみらいホール問 横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000 http://www.yaf.or.jp/mmh/ かつて「三大テノール」の競演が一世を風靡したように、時にオペラ・アリア・コンサートは、上質なオペラ公演もおよばないほどの感銘を聴き手に与える。ただし、「時に」と書いたように条件がある。三大テノールのような圧倒的な歌声のシャワーはその一つだが、もっと根源的な条件もある。アリア・コンサートはオペラのクライマックスを集めたもの。心揺さぶられる名場面ばかりなのだから、演奏次第では感動がとめどなく押し寄せる、というわけだ。 このコンサートがそれに該当することは容易に予想できる。まず、テンションの高いバッティストーニの指揮がある。このマエストロは、作曲家の意図を正確に汲み、大きなスケールで、細部は緻密に、と曲の魅力を幾重にも塗り上げる天才。日ごろ、最も好きなオペラ作曲家はプッチーニで、ほかにヴェルディ、マスカーニ、チレア…と公言するが、その思いに忠実に、好きな作曲家の名作から、ここぞというクライマックスばかりを並べてきた。しかも管弦楽は東京フィル。バッティストーニは首席指揮者として、オペラの経験豊富なこのオーケストラと盤石の体制を築いている。名場面の一つひとつが耀かない可能性など、どうして想像できようか。そのうえ、イタリア伝統の発声を継承するマリア・テレーザ・レーヴァとジャンルーカ・テッラノーヴァに、ドラマティックな表現で右に出る者がいない清水華澄、ノーブルなイタリア声の上江隼人というソリスト。歌声のシャワーも最初から約束されている。ジョナサン・ノット左より:アンドレア・バッティストーニ ©Takafumi Ueno/マリア・テレーザ・レーヴァ/清水華澄 ©Akehiko Matsumoto/ジャンルーカ・テッラノーヴァ/上江隼人
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