eぶらあぼ 2018.11月号
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39愛知県芸術劇場プロデュース モーツァルト オペラ《バスティアンとバスティエンヌ》天才少年が書いた“愛の牧歌劇”を充実の布陣で文:笹田和人11/16(金)19:00、11/17(土)14:00 18:00 愛知県芸術劇場(小)※配役などの公演詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。問 愛知県芸術劇場052-971-5609 http://www.aac.pref.aichi.jp/ “神童モーツァルト”が12歳の時に書き上げた、全1幕のオペラ《バスティアンとバスティエンヌ》。少年ならではの初々しさに満ちながらも、端々に後年を思わせる熟達した作曲技法をのぞかせる佳品が、東海地区にゆかりのキャストと指揮者により、愛知県芸術劇場小ホールで上演(ドイツ語歌唱、字幕付き・台詞は日本語)される。 このオペラのストーリーは、実にシンプルだ。最近、恋人バスティアンの態度が冷たくなったことを悩む、羊飼いの娘バスティエンヌ。自称・魔法使いのコラスに相談、「つれない態度を取れ」と忠告され、その通りにしたところ、互いに意地を張り合って喧嘩に。しかし、最後には和解、3人で喜びを分かち合うーー。 実はこの物語、ジャン=ジャック・ルソーがオペラ化するなど、フランスでは既に人気の素材だった。少年モーツァルトは、ドイツ語訳された台本に基づき、一家で滞在中だったウィーンで作曲。1768年に同地で初演された。決して技巧的ではないが、美しい旋律が散りばめられ、終曲の三重唱をはじめ、とても12歳の作とは思えぬ、聴かせどころも数多い。 今回は、バスティエンヌには三重県出身の伊藤晴と愛知県出身の柴田紗貴子、バスティアンには共に名古屋市在住の中井亮一と吉田連と、強力なダブルキャスト。コラスは全公演通しで、田中大揮が演じる。愛知室内オーケストラを振るのは、来春にセントラル愛知交響楽団常任指揮者への就任が決まっている角田鋼亮。演出には、ドイツで研鑽を積んだ、気鋭の太田麻衣子を迎える。左より:角田鋼亮 ©大杉隼平/伊藤 晴 ©Katsuhiko Kimura/柴田紗貴子/中井亮一/吉田 連 ©Kei Uesugi/田中大揮鎌倉芸術館 開館25周年記念事業アラン・ギルバート(指揮) NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団勢いに乗るシェフと名門オケが聴かせるドイツ音楽の精髄文:林 昌英11/3(土・祝)14:00 鎌倉芸術館問 鎌倉芸術館チケットセンター0120-1192-40 http://www.kamakura-arts.jp/ ドイツ北部に位置する港町にして、同国第2の都市ハンブルク。ブラームスの生地としてもよく知られる同地を拠点とするオーケストラが、NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団である。1945年の創立以来、名だたる巨匠たちを首席指揮者に迎えてきた名門楽団で、度々の来日公演でも伝統の響きを聴かせてきた。 そして、彼らはこの11月にも来日し、文化の日には鎌倉芸術館の開館25周年を記念する公演に登場する。指揮は、来年9月に同団首席指揮者就任が決定しているアラン・ギルバート。8シーズンにわたりニューヨーク・フィル音楽監督を務めたことを筆頭に、世界中のトップオーケストラに登壇し続け、今年からは東京都交響楽団の首席客演指揮者を務めるなど我が国でも親しみ深い名指揮者だ。そんな彼らがこの日に披露する演目は、ワーグナー、マーラー、そしてブラームス。ドイツ音楽の精髄と言える名作が並んだ。殊に生地の誇りをもって奏でられるブラームスの交響曲第4番は、決定的な演奏となる期待が高まる。また、今回の鎌倉公演は、同団の日本公演としては特別に求めやすい価格設定がされていることも大きな魅力だ。 同団はハンブルク北ドイツ放送交響楽団の名前で長く愛されてきたが、2017年に新設されたエルプフィルハーモニーホールに拠点を移したことで、現在の名に改称した。積み重ねてきた伝統と、そこに安住せず新しい歴史を作りあげていく覚悟——日本有数の古都・鎌倉で聴く同団の響きは、深いところで共鳴し合う、格別な体験となるだろう。アラン・ギルバート ©Chris Lee
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