eぶらあぼ 2018.11月号
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37デニス・ラッセル・デイヴィス(指揮) 読売日本交響楽団名匠とトップアーティストによる超・独創的なプログラム文:江藤光紀第583回 定期演奏会 11/28(水)19:00 サントリーホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 http://yomikyo.or.jp/ 2013年の「第九」で読響と初共演、その後オペラも含めて客演を重ねてきたデニス・ラッセル・デイヴィスが11月に再登場する。ひねったプログラムの定期演奏会に注目だ。 昨年亡くなった桂冠名誉指揮者スクロヴァチェフスキは作曲家でもあった。代表作の一つ「ミュージック・アット・ナイト」を冒頭に置き、厳しくも温かかったマエストロを偲ぶ。暗い情念が燃え上がる夜想で、パリに出て本格的に作曲を学び始めた直後、1940年代後半の作だが、指揮者として経験を積んでから77年に改訂されている。 続いてモーツァルト「フルートとハープのための協奏曲」。ベルリン・フィルの首席奏者として人気・実力ともに長らくフルート界の頂点に立つエマニュエル・パユが、同じくベルリン・フィルの首席を務めるハーピスト、マリー=ピエール・ラングラメと共演する。ともにフランス出身という同郷のよしみ、ゴージャスでエレガントなモーツァルトとなろう。現代曲の狭間に可憐な花を咲かせるはずだ。 40年代から50年代にかけてハリウッドで制作されたフィルム・ノワールは、時代の暗部を映し出した一連の犯罪映画を指すが、ジョン・アダムズ「シティ・ノワール」はこれにインスピレーションを受けている。重苦しい心理ドラマやつかの間の休息が、逃走劇のような息詰まるエンディングへとなだれ込む。ビッグ・バンド風の響き、サックスやトロンボーンの長いソロが、時代の音楽アイコンとして彩りを加える。フィルム・ノワールの世界観の核心をとらえた一大音絵巻を、たっぷりとした読響サウンドで体感できる贅沢!マリー=ピエール・ラングラメ©Jim Raketeエマニュエル・パユ©Josef Fischnaller licensed to EMI Classicsデニス・ラッセル・デイヴィス ©Andreas H. Bitesnichクァルテットウィークエンド 2018-2019 新旧ウィーン楽派&シューベルト後期最終回ウェールズ弦楽四重奏団シューベルト後期作品の頂に挑む最終章文:長井進之介11/24(土)14:00 第一生命ホール問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 http://www.triton-arts.net/ 2006年に結成され、08年にはミュンヘン国際音楽コンクールにて第3位入賞を果たして一躍世界的な注目を集めたウェールズ弦楽四重奏団。数々の演奏会、音楽祭への出演など、多彩な演奏活動を展開しながら、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の全曲録音に取り組んでおり、その演奏も非常に高く評価されている。メンバー全員が日本を代表するオーケストラに所属しており、各々の実力の高さとアンサンブル力は折り紙付きの彼らは、16年より第一生命ホールでシューベルトの後期作品に取り組むシリーズを開始しており、今回で遂に最終回となる。核となる曲はシューベルトの弦楽四重奏曲第15番。 「オーケストラのようなダイナミックさがある」と同時に、「様々な節目で演奏してきた」という大切な作品であり、フィナーレを飾るにふさわしい。またこのシューベルト・シリーズで特徴的なのが、シューベルトの作品と絶妙にリンクするウィーンの様々な作品が並ぶ点にある。今回はモーツァルトの弦楽四重奏曲第15番とウェーベルンの「6つのバガテル」を選曲。「同時に演奏するプログラムにもストーリーを感じてほしい」ということで、前回(17年)のプログラムとリンクするように選曲されている。「僕たちのやりたいことを助けてくれるホール」だという第一生命ホールでのシューベルト・シリーズ集大成。体力、構築力、表現力が必須な難曲揃いだが、いまの彼らの最高の演奏で聴かせてくれるに違いない。©Satoshi Oono
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