eぶらあぼ 2018.11月号
36/207
33高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団武満の出世作と、彼を見出した巨匠の傑作2作を併せて文:山田治生第320回定期演奏会11/16(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 http://www.cityphil.jp/ 東京シティ・フィルの11月の定期演奏会は、常任指揮者・高関健の指揮で、ストラヴィンスキー&武満徹という20世紀プログラム。まずは、「詩篇交響曲」。合唱は、もちろん、東京シティ・フィル・コーア(合唱指揮は藤丸崇浩)だ。彼らは、今年7月の東京シティ・フィルの定期演奏会(飯守泰次郎指揮)でブルックナーのミサ曲第3番を好演したばかり。「詩篇交響曲」は、ストラヴィンスキーがボストン交響楽団の創立50周年を祝して1930年に旧約聖書をテキストとして書いた、彼にとっての初めての大規模な宗教的作品。ストラヴィンスキーの新古典主義時代の代表作であり、東京シティ・フィル・コーアが高関の指揮のもと、どんなハーモニーを作り上げるか注目である。真ん中で、武満徹の「弦楽のためのレクイエム」が演奏される。57年に書かれた若き武満の出世作。59年に来日していたストラヴィンスキーが偶然、この曲の録音を聴き、武満の才能を絶賛。武満徹の名前を世界に広めるきっかけとなった作品でもある。最後に、「ペトルーシュカ」(1947年版)が演奏される。「ペトルーシュカ」は、ストラヴィンスキーの三大バレエのなかで二番目に書かれた作品。謝肉祭のペテルブルクでの人形芝居小屋が描かれている。1947年版は、新古典主義に転じたストラヴィンスキーが、4管編成の1911年版を3管編成に編曲し直したもの。若い世代の奏者の加入とともにますます充実度を高めている東京シティ・フィルの管楽器陣の妙技が楽しみだ。高関 健 ©大窪道治沼尻竜典(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団ベルクとマーラーの濃密で劇的なる世界文:山田治生第706回 東京定期演奏会12/7(金)19:00、12/8(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jp/ 日本フィルの12月の東京定期演奏会には、沼尻竜典が登場する。オペラでの活躍が著しく、2013年から17年までドイツのリューベック歌劇場の音楽総監督を務め(現在は首席客演指揮者)、日本では07年にびわ湖ホール芸術監督に就任し、現在《ニーベルングの指環》全4作上演に取り組んでいる。オーケストラでは、トウキョウ・ミタカ・フィルハーモニアを率い、名古屋フィルや群馬交響楽団のシェフを歴任。日本フィルとの関わりも深く、03年から08年まで正指揮者のポストにあった。 今回は、沼尻が最も得意とする後期ロマン派から新ウィーン楽派にかけての作品を取り上げる。ベルクの「歌劇《ヴォツェック》より3つの断章」(第1幕2&3場、第3幕第1場、第3幕第4&5場)では、沼尻のオペラ指揮者としての実力が発揮されるであろう。メインはマーラーの交響曲第1番「巨人」。この9月にびわ湖ホールで交響曲第8番「千人の交響曲」を振るなど、マーラー指揮者としての評価も高い沼尻が「巨人」をどのように描くのか、楽しみだ。 「歌劇《ヴォツェック》より~」では、ソプラノのエディット・ハラーが独唱を務める。イタリア生まれだが、ワーグナー歌手として知られ、バイロイト音楽祭、ウィーン国立歌劇場、バイエルン州立歌劇場で活躍。日本フィルとも13年の《ワルキューレ》第1幕(ピエタリ・インキネン指揮)でジークリンデ役を歌い、絶賛を博した。今回の“マリー役”にも期待したい。エディット・ハラー沼尻竜典
元のページ
../index.html#36