eぶらあぼ 2018.11月号
35/207

32©Johann Sebastian Hänelエフゲニー・キーシン ピアノ・リサイタル11/6(火)19:00 サントリーホール11/14(水)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール他公演 11/2(金)横浜みなとみらいホール(045-682-2000)    11/10(土)大阪/ザ・シンフォニーホール    (ABCチケットインフォメーション06-6453-6000)マリス・ヤンソンス(指揮) バイエルン放送交響楽団との共演11/26(月)、11/27(火)各日19:00 サントリーホール曲/リスト:ピアノ協奏曲第1番問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp/エフゲニー・キーシン(ピアノ)コンチェルトとソロで至高の芸術性を披露文:後藤菜穂子 11月にエフゲニー・キーシンが4年ぶりとなる来日を果たし、マリス・ヤンソンス指揮バイエルン放送交響楽団との豪華な共演に加え、東京で2回のソロ・リサイタルを開く。 バイエルン放送響との演目はリストの華麗かつ甘美なピアノ協奏曲第1番。今季彼はこの協奏曲にフォーカスを当てているが、意外なことに彼にとって新しいレパートリーなのだという。ファンにとっては聴き逃せない機会だ。 実際、彼の2018/19シーズンはこの協奏曲とともに開始。9月5日、6日にヘルシンキでフィンランド放送響、同10日にブレーメン音楽祭でドイツ・カンマーフィル、同14日にはアムステルダムでコンセルトヘボウ管(指揮ヘンゲルブロック)のオープニング・コンサートと演奏を重ねた。コンセルトヘボウ管との公演を放送で聴いたが、輝かしく躍動感に満ちた演奏で、色彩豊かなオーケストラとともにスケールの大きな演奏を築き上げた。技巧的なパッセージでの切れ味はもちろん、第2楽章での深みのある抒情性も印象的で、シーズン早々彼の好調ぶりをうかがわせた。 来日公演のあとも、1月にクリヴィヌ&スイス・ロマンド管、さらにはヤンソンス&ベルリン・フィルとも同曲で共演する。いずれレコーディングの計画もあるのかもしれない。 さて、キーシンはここ数年、私生活においてさまざまな変化があった。13年にはイスラエル国籍を取得して自らのユダヤ人としてのアイデンティティを強固なものにし、イディッシュ語の詩を発表したり、朗読したりもしている。また昨年は幼なじみの女性と結婚し、新しい家庭を築いた。子どもの頃からピアノ一筋で、脇目もふらずに音楽家としての道を突き進んできたように見えるが、ここにきてパーソナルな面も充実し、音楽的にも深みが増してきたように思う。筆者が3月にロンドンで聴いた彼のリサイタルでも、自身のピアニズムをさらに極めようとする探究心と内なる意思の強さを感じた。 11月の東京でのリサイタルでは、昨シーズン各地で絶賛されたベートーヴェンのソナタ「ハンマークラヴィーア」とラフマニノフの前奏曲からのセレクションというプログラムが予定されていたが、新シーズンが始まり本人の気持ちに変化が出たのだろう、先日曲目が変更となり、前半はショパンのノクターン2曲とシューマンのピアノ・ソナタ第3番という組み合わせになった。この選曲はキーシンがこの夏のヴェルビエ音楽祭でお披露目した今季のリサイタル・プログラムの一部であり、現在もっとも力を入れている曲目といえるだろう。40代後半を迎え、公私ともに充実しているキーシンの今を聴いてほしい。菅野 潤(ピアノ) ドビュッシーへのオマージュ~特別ゲストを迎えて 第2回 詩とドビュッシー移りゆく色彩、匂い立つフランスの詩情を旋律にのせて文:笹田和人 パリを拠点に国際的なステージ活動を展開するピアノの名匠・菅野潤が、作曲家没後100年に贈るシリーズ「ドビュッシーへのオマージュ」。第2回は「詩とドビュッシー」をテーマに。フランス歌曲のスペシャリスト、ソプラノのマリア=ドローレス・アルデアをゲストに迎えて、ヴェルレーヌやボードレールの詩による歌曲や、ピアノ・ソロ作品を紡ぐ。 桐朋学園大学卒業後、メシアン夫妻の招きで渡仏してパリで学び、その演奏が「正統的」と高く評価される菅野。一方で、 ベルギーのドキュメンタリー12/4(火)19:00 東京文化会館(小)問 コンサートイマジン03-3235-3777http://www.concert.co.jp/©吉田タイスケ映画『スネーク・ダンス』(2012年)の音楽を担当するなど、しなやかな活動が光る。一方、アルデアはスペイン出身、伝説の名バリトン、ジェラール・スゼーの薫陶を受けた。 今回は、アルデアとの共演で、「艶やかなる宴 第1集」などヴェルレーヌの詩に基づく歌曲や「ボードレールの詩による5つの歌曲」を披露。さらに、「ベルガマスク組曲」から〈前奏曲〉〈月の光〉、「前奏曲集」から〈音と香りは夕暮れの大気の中を漂う〉など5曲を、菅野がソロで色彩豊かに弾く。

元のページ  ../index.html#35

このブックを見る