eぶらあぼ 2018.11月号
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30©Marco Borggreveファジル・サイ&新日本フィルハーモニー交響楽団11/9(金)19:00 すみだトリフォニーホール問 トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212 http://www.triphony.com/ファジル・サイ(ピアノ/作曲)異能の音楽家が自作のシンフォニーついて語る取材・文:伊熊よし子Interview 類まれなる才能を発揮し、ピアニストとして作曲家として世界各地で活発な活動を展開しているファジル・サイが、自作の交響曲第2番「メソポタミア」の日本初演を「ファジル・サイ&新日本フィルハーモニー交響楽団」で行う。サイは同公演でベートーヴェン「皇帝」のソリストも務め、「メソポタミア」のピアノパートも弾く。指揮はトルコ出身のイブラヒーム・ヤズィジ。 交響曲第2番は2011/12シーズンに書かれたもので、10章で構成された約55分の大作。 「メソポタミアの文化、歴史、宗教、戦争などを音で表現した作品です。私はトルコ在住ですが、この地域は日々さまざまな脅威にさらされている。昔からメソポタミアは偉大な文化や歴史や伝統を誇っていましたが、現在は戦争やテロが氾濫し、人々は心安らぐ日々からはほど遠い過酷な生活を強いられています。私は音楽で平和を希求したかった。自分がいま何を感じ、何を求め、何ができるかを考えたとき、自分の感情をすべてひとつのシンフォニーに託したいと思ったのです」 作品には珍しい楽器がふんだんに使用され、その一つひとつに意味が込められている。 「たとえばテルミン。電磁波によって幻想的で摩訶不思議な音が出る楽器ですが、私はこれを“天使の声”として用いた。戦争の記録のような作品にひと筋の光が必要だったからです。ほかにもトルコの打楽器クドゥムやあまり知られていない楽器が登場してきます。各々に役割が課せられている。日本のみなさんが新たな体験をし、少しでもメソポタミア地方の現実に目を向けてくれたらと願っています。ベートーヴェンもチャイコフスキーもショスタコーヴィチも、みな戦争の悲惨さを音楽で訴え、自己の感情を作品で表現しました。私も強い感情をこの曲に込めています」 ファジル・サイはさまざまなところから委嘱を受けたり、自身が演奏するために年に4~5曲のペースで新たな作品を世に送り出している。すでに発表した約80曲の作品のうち、管弦楽作品は40曲ほどにものぼる。 「作曲はなんといっても経験が物をいう。特にオーケストラ作品は、各楽器の音が自分のなかにすべて響いてくるまでは書けない。いまも協奏曲や器楽曲などを書いていますが、自分の体のなかにCDが回っているみたいなのです。そうなって初めて楽譜に起こすことができる。私は子どものころから人生すべて音楽。音楽以外のことには興味がないし、他のことに費やす時間もない。でも、ドビュッシーとサティを組み合わせた新譜を出したようにピアノの演奏はもちろん優先事項。ピアノに向かっているといろんなアイディアが湧き出てくる。私の創造の源泉かも。いまは日本の歴史にも目が向いています」新宿文化センター × 東京フィルハーモニー交響楽団フレッシュ名曲コンサート 千人の交響曲若き鬼才がホールに新たな歴史を刻む文:山田治生 2016年に東京フィルの首席指揮者に就任したアンドレア・バッティストーニは、同フィルとともに意欲的なプログラムに取り組んでいる。特にオペラなどの大規模な作品の演奏には目を見張るものがある。これまでに演奏会形式で《トゥーランドット》、マスカーニ《イリス》を取り上げ、今年11月にボーイトの《メフィストーフェレ》を振る。 そして来年1月には、新宿文化センター開館40周年記念事業の一環として、マーラーの交響曲第8番「千人の交響曲」を東京フィルとともに演奏する。2019.1/19(土)17:00 新宿文化センター問 新宿文化センター03-3350-1141 http://www.regasu-shinjuku.or.jp/アンドレア・バッティストーニ ©Takafumi Ueno独唱者が、ソプラノの木下美穂子、今井実希、安井陽子、アルトの中島郁子、小林由佳、テノールの福井敬、バリトンの青山貴、バスのジョン・ハオと豪華。合唱は、新宿文化センター合唱団。新宿文化センターは、これまでに、開館20周年にインバル&都響で、25周年にベルティーニ&都響で、マーラーの同交響曲を取り上げてきた。新たな「千人の交響曲」伝説が加わるのは間違いない。
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