eぶらあぼ 2018.11月号
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29アンドレアス・オッテンザマー(クラリネット) with 郷古 廉(ヴァイオリン) & ホセ・ガヤルド(ピアノ)“アンディ”登場! ソロとアンサンブルで興奮の一夜を文:江藤光紀12/1(土)17:00 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 http://www.toppanhall.com/ オッテンザマーといえば有名なクラリネット一家。昨年惜しくも亡くなった父エルンスト、長男ダニエルはともにウィーン・フィル首席として、音楽の都のクラリネットの系譜をつないでいる。次男のアンドレアスは破格で、チェロからこの楽器に転向し、21歳にしてベルリン・フィル首席に就任。音楽の芯をしっかりと保ちつつ、自在な演出力で聴き手を魅了する抜群のセンスが、精悍でがっちりとした風貌と相まって、現在スター街道を爆走中だ。 来日機会も多いアンドレアスだが、トッパンホールでの12月1日のコンサートは、企画力で名を馳せる同館らしい興味深い一夜になりそうだ。ピアノはブエノスアイレス出身で、ソロだけでなくクレーメルやペレーニら超一流ソリストからも篤い信頼を得るホセ・ガヤルド。ここに日本ヴァイオリン界のライジング・スター郷古廉が加わる。 前半は没後100年のドビュッシーをそれぞれが演奏(クラリネットのための第1狂詩曲、ヴァイオリン・ソナタ)した後、プーランクの上質のウィットを効かせた小品集「城への招待」をトリオで。後半はブラームスの短い編曲ものを挟みつつ、バルトーク「ルーマニア民族舞曲」(ヴァイオリン)、ヴェイネル「2つの楽章」(クラリネット)と東欧の民族色を反映した作品を重ね、バルトークのトリオ「コントラスツ」で結ぶ。ベニー・グッドマンが委嘱したジャズのテイストも含む曲だけに、アンドレアスの変化球も楽しめそう。 初共演となるアンドレアスと郷古、若い才能が触発しあう化学反応は予測不可能。とはいえ通り一遍のものにはなるまい。左より:アンドレアス・オッテンザマー ©Katja Ruge/Decca/郷古 廉 ©Hisao Suzuki/ホセ・ガヤルドローレンス・フォスター(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団巨匠の滋味溢れるサウンドと新鋭のフレッシュなピアニズム文:江藤光紀第597回 定期演奏会 トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉11/16(金)19:00、11/17(土)14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 http://www.njp.or.jp/ すごく個性的というわけではないけれど、いつも音楽がしっかりと拵えてあって、聴衆の期待を裏切らない職人的なアーティストは、年を重ねるほどにいっそう味わいを増すものだ。ローレンス・フォスターはまさにこうしたタイプだろう。指揮者デビューは18歳。そこから数多くのオケやオペラ座を率いてきたが、ほとんどがいわゆる大都市の名門というよりは地域密着型の団体で、それはオーケストラ・ビルダーとしての手腕が確か、ということを意味している。来年秋からはポーランド国立放送響の首席指揮者兼芸術監督の仕事がスタートするが、80歳を目前にして同国トップ団体の一つを任されるあたり、次の“人気長老指揮者”の候補に挙がってきそうだ。 そのフォスターが新日本フィルの11月定期でピアノ協奏曲と交響曲、それぞれ2番を組み合わせたブラームス・プロを振る。どちらの曲も生真面目で力のこもった1番に対して音楽が自由に呼吸している点が魅力だが、気宇壮大なピアノ協奏曲第2番に対し、交響曲第2番はリラックスした親密な感情が表現されていて、コントラストも効いている。ありそうで意外にない組み合わせが、ベテランの選曲の妙だ。 新日本フィル音楽監督・上岡敏之が絶賛したピアノ独奏のヨーゼフ・モーグにも注目だ。30歳をちょっと超えたところだが、ドイツ人らしいフォルムはもちろんのこと、色彩感を伴う柔らかさやポップなタッチも自在に弾きこなす幅の広いセンスの持ち主。昨年末にはブラームスの協奏曲第2番のCDもリリースしており、実力のほどを測るのに絶好の機会となろう。ヨーゼフ・モーグ ©Thommy Mardoローレンス・フォスター ©Marc Ginot
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