eぶらあぼ 2018.11月号
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170CDCDSACDCDフレスコバルディ 鍵盤作品集/辰巳美納子Crystal Fairy/神林あゆみ死と乙女/ストリング・クヮルテット ARCOBARITONISM ―ロシア・チェロ作品集―/本堂誠フレスコバルディ:トッカータ第1巻 第8番、5つのガリアルダ、カンツォーナ第1番、バッサ・フィアメンガによるカプリッチョ、4つのコレンテ、ベルガマスカ、トッカータ第2巻 第9番、パッサカリアに基づく100のパルティータ 他辰巳美納子(チェンバロ)Vague/Portrait ~ Hommage à Poulenc/Anytime, Anywhere/AveMaria Medley/Fairy Evolution/Habanera/Solveig's Sang/Air on G String/Mon Amie La Rose/Anastasis/雪の結晶/It's A Beautiful Day神林あゆみ(ヴォーカル) 他シューベルト:弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」/ウェーベルン:弦楽四重奏のための緩徐楽章ストリング・クヮルテット ARCO【伊藤亮太郎 双紙正哉(以上ヴァイオリン) 柳瀬省太(ヴィオラ) 古川展生(チェロ)】ラフマニノフ:チェロ・ソナタ/ショスタコーヴィチ:同/グラズノフ:2つの小品本堂誠(バリトン・サクソフォン)羽石道代(ピアノ)コジマ録音ALCD-1172 ¥2800+税Pastel Blue LabelPOCS-1727 ¥2778+税アールアンフィニ(ソニー・ミュージックダイレクト/ミューズエンターテインメント)MECO-1050 ¥3000+税オクタヴィア・レコードOVCC-00143チェンバロの名手・辰巳美納子による、3枚目のソロ・アルバム。初期イタリア・バロックにあって、盛期を先取りする先鋭的な作品を残した、鬼才フレスコバルディに対峙した。当時使われたのは、5度よりも3度の純正を最優先した「中全音律」。しかし、演奏可能な調性は限定的だったため、解決策として、分割鍵盤の楽器が一部で用いられた。今回は、このタイプの楽器のレプリカを使用。創意が凝らされた、作品ごとの色彩の違いを表現し尽くしてゆく。特に、転調の多い「パルティータ」では威力を発揮、知性と愉悦の均衡を絶妙に保つ辰巳らしい快演が、凛とした響きを纏う。 (寺西 肇)清楚な歌声を持ち、クラシックからジャンルを超えて幅広いレパートリーを歌いこなし、ポールダンス、フラメンコ、ベリーダンス等とのコラボも展開。2013年からはクラシカル・クロスオーヴァーに傾倒して活躍中のハイブリッドなソプラノのデビュー盤が登場。オペラ・アリアからバロックの名曲まで、よく知られた旋律をダークでアンビエントなサウンドで鮮烈にアレンジ。オリジナルの歌詞を付けて独自の世界観を紡ぎ出す。フランスのポップスター、フランソワーズ・アルディの楽曲を中近東風のエキゾチックなアレンジでカヴァーした異色のトラックなども聴きどころ。(東端哲也)1996年に結成され、いまや全員が都内の名門オーケストラのトップを務めている四重奏団「ARCO」。意外にも16年ぶりとなるアルバムで、人気作「死と乙女」に挑み、彼らの成熟と意欲を伝える。近年は個を抑えて均質性を出す団体も多いが、彼らはバランスをとりながらも個を活かすことを重視。各人が所属オケ等で聴かせるソロの音そのままを楽しめ、演奏姿まで目に浮かぶよう。その上で生み出される熱い一体感で名作の魅力に迫るスタンスも、四重奏の佳き伝統を感じさせてくれる。併録のウェーベルン20代の甘美なロマンあふれる小品は嬉しい発見で、深い共感による好演が聴ける。(林 昌英)藝大とパリ国立高等音楽院で学び、3つの国際コンクールと日本管打楽器コンクールで優勝した気鋭サクソフォン奏者のデビュー・アルバム。バリトン・サックスでロシアのチェロ・ソナタを演奏した前代未聞(?)の内容だ。これは、“意欲的なチャレンジ”といったレベルではなく、“音楽と楽器の魅力をいとも自然に表出した”驚くべき録音といえる。とにかくフレージングが滑らかで表現力が豊か。同楽器独特の低音の妙味とアルト顔負けの高音の豊潤さ、陶酔的なまでの節回しなど、終始感嘆させられる。しかも原曲の良さを再発見させる音楽力が並でない。ぜひご一聴を! (柴田克彦)
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