eぶらあぼ 2018.11月号
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164CDCDCDCDストラヴィンスキー:ペルセフォーヌ/ラザレフ&日本フィルメッセージ/佐藤祐介&中川俊郎太陽と愛/ジュゼッペ・サッバティーニモーツァルトの4つのピアノ・ソナタとファンタジー/中井正子ストラヴィンスキー:メロドラマ「ペルセフォーヌ」アレクサンドル・ラザレフ(指揮)ドルニオク綾乃(ナレーション)ポール・グローヴス(テノール)晋友会合唱団日本フィルハーモニー交響楽団 他中川俊郎:断編残簡(17の小品)、ピアノのための19の展開、ソナチネ第1番~こどものためのピアノ曲集「聞こえなくなった汽笛」より、ソナチネ第2番~こどものためのピアノ曲集「どこでも大発見」より、ソナチネの遺跡(石)佐藤祐介(ピアノ、語り)中川俊郎(ピアノ)トスティ:魅惑、最後の歌、もう君を愛さない、かわいい口もと、夜明けが光と闇を分かつように、さらば!/プッチーニ:太陽と愛、あのいつわりの約束、そして小鳥は/カルディッロ:カタリ/デ・クルティス:帰れソレントへ、泣かない君 他ジュゼッペ・サッバティーニ(テノール)マルコ・ボエーミ(ピアノ)モーツァルト:ピアノ・ソナタ第8番・第10番・第11番「トルコ行進曲付き」・第12番、幻想曲ニ短調K.397中井正子(ピアノ)収録:2018年5月、サントリーホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00680 ¥3000+税録音研究室(レック・ラボ)NIKU-9018 ¥2800+税収録:1994年4月、津田ホール(ライヴ)マイスター・ミュージックMM-4042 ¥3000+税コジマ録音ALCD-7224 ¥2800+税ギリシャ神話の春の女神ペルセポネの再生を描いた“音楽物語”のライヴ録音。ナレーションとテノール独唱に、活躍顕著な合唱を伴う編成も相まって演奏機会のなかった作品が、日本フィルの第700回定期演奏会を機にラザレフの指揮で日本初演され、かつ貴重な録音が残されたことをまず喜びたい。音楽自体は新古典主義的ながら美しい叙情味を湛えており、作品へのシンパシーに充ちた名匠のもとで展開されるナチュラルかつ詩情豊かな演奏も出色。ナレーションと独唱も曲の魅力を引き立てているし、精緻なニュアンスに富んだ合唱陣はこの上なく素晴らしい。(柴田克彦)バリバリの現代音楽からパスティーシュ、おしゃれなCM音楽までジャンルでくくれず、かといって通り過ぎるにはなんとも気になる中川俊郎は、筆者には困った作曲家だったが、この表面的には人を食った自称“ヒーリングCD”に強い歴史意識が通底しているのをみて、謎が少し晴れた。膨大な量の、過去の音楽遺産の断片―それは旋律の直接の引用だったり、スタイルの模倣だったりする―が降ってくる。しかし単なるデータベースのサーフィンではない。自らトリックスターと化すことで、情報の等価空間にさざ波を立てる危険でまじめな遊びなのだ。佐藤祐介のピアノもその遊戯の意義を汲んでいる。(江藤光紀)10年ぶりの歌手復帰には驚いた。9〜10月の来日に合わせて、津田ホールでの1994年のライヴの再発。当時36歳。コントラバス奏者だった彼が本格的に声楽に取り組んだのは30歳の頃。2年も経たずにローマやミラノに主役デビューしていったのだからモノがちがう。このライヴも、6年の声楽キャリアとは到底思えない成熟した声を駆使して、かなり情熱的に歌っている。トスティでは楽譜から溢れ落ちそうな露わな情熱が新鮮。後半のナポリ民謡が圧倒的にいい。50歳での指揮者転向プランは随分前から公言していた。今度はどうなるのだろう? (宮本 明)中井正子については、ドビュッシーやラヴェルの全曲録音・楽譜校訂などのイメージが強いかもしれないが、このモーツァルト・アルバムにより、ウィーン古典派の小粋で闊達な音楽語法を伝えるピアニスト、という印象も新たに持たれることだろう。アルバムは、モーツァルトが母を亡くした直後に書かれた短調のソナタ第8番で始まり、第10、11(トルコ行進曲付き)、12番、そして「幻想曲 K.397」を収録。モーツァルト時代の楽器の響きや様式表現についてのアクティヴな研究成果を取り入れたと思しき、生き生きとした音の立ち上がりと瑞々しいテンポ感に彩られた一枚。(飯田有抄)

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