eぶらあぼ 2018.10月号
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226リコーダー&コルネット奏者の濱田芳通をリーダーに、瑞々しくしなやか、歌心に溢れた古楽を聴かせる精鋭集団「アントネッロ」。彼らが“歌心の祖”と位置付けるのが、没後400年を迎えたイタリア初期バロックの巨匠ジューリオ・カッチーニだ。その作品の特集第2弾では、今に伝わる2つの歌曲集のうちのひとつ『新音楽と新書法』(1614年)を取り上げ、ソプラノ阿部雅子とテノール中嶋克彦の鮮烈な歌声で堪能する。アドリエン=フランソワ・セルヴェは、“チェロのパガニーニ”と呼ばれた、19世紀ベルギーが生んだ名奏者で作曲家。我が国で屈指の名チェリスト、林裕はセルヴェ協会の一員として、その作品紹介にも力を注ぐ。今回は、所有者から貸与された、セルヴェ愛用の名弓を使い、「トロヴァトーレによる華麗な大二重奏曲」など2曲を核に、ビエネ、ホルマン、ポールテンら「チェロのベルギー楽派」に連なる佳品を。ピアノは佐竹裕介。19世紀前半を駆け抜けたドイツの詩人、フリードリヒ・ヘルダリーンは生前、高い名声を得るには及ばなかったが、20世紀に入ると、先鋭的な作風と語法が一躍注目を浴びることに。20年にわたってデュオ活動を続けるソプラノの長島剛子とピアノの梅本実は今回、プフィッツナーやヒンデミット、リゲティ、ブリテンら、その詩の世界に魅了された大作曲家たちが旋律を付した作品を特集。深遠な精神世界を掘り下げてゆく。2つの感性の邂逅に、期待感も高まる。2014年にロン=ティボー=クレスパン国際コンクールで第2位となり、緻密な演奏が注目を集める才媛ヴァイオリニスト、青木尚佳。そして、名だたる巨匠の薫陶を受け、世界を股にかけて活躍するイタリアの名ギタリスト、エマヌエーレ・セグレ。今回の共演では、サラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」をはじめ、パガニーニやシューベルト、アルベニスなど彩り豊かな楽曲を、時に熱く、時に繊細に。月の10ベルギー セルヴェ協会招聘記念林 裕(チェロ)ヤン・スンウォン(チェロ)~リスト&ショパン プログラム~土曜ソワレシリーズ「女神との出逢い」 第276回 青木尚佳(ヴァイオリン) エマヌエーレ・セグレ(ギター)アントネッロ 第12回定期愛しのカッチーニ Parte Ⅱ珠玉のリサイタル&室内楽ジュリアード弦楽四重奏団長島剛たけこ子(ソプラノ) 梅本 実(ピアノ)ヘルダリーンの詩による歌曲 Vol.210/2(火)14:00 19:00 兵庫県立芸術文化センター(小)10/4(木)14:00 19:00 名古屋/今池ガスホール10/23(火)19:00 紀尾井ホール10/13(土)17:00 フィリアホール10/3(水)14:00 19:00 JTアートホール アフィニス10/24(水)19:00 ヤマハホール10/22(月)19:00 札幌/ふきのとうホール10/31(水)19:00 東京文化会館(小)文:笹田和人ヤン・スンウォンはソウル出身、巨匠ヤーノシュ・シュタルケルに師事し、ソリストや室内楽奏者として国際的に活躍する名チェリスト。滋味豊かな音色が、聴く者の心に染みる。今回はイタリアのピアニスト、エンリコ・パーチェと共演。まずは「エレジー第1番」や「慰め」からの4曲など、ピアノ作品からの編曲を含めたリストの傑作を。そして、「ソナタ ト短調」「序奏と華麗なるポロネーズ」とショパンの佳品に対峙する。1946年の創立以来、比類ない芸術性と尽きぬ探求力で、聴衆の心を揺さぶり続ける「ジュリアード弦楽四重奏団」。名門・ジュリアード音楽院の教授らにより結成、慎重なメンバー交代を重ねつつ、70年以上も“弦楽四重奏の最高峰”の座に君臨する。今回はハイドンの第82番「雲がゆくまで待とう」、バルトークの第3番、ドヴォルザークの第11番を。芳醇な響きを堪能する贅沢が許されるのは、わずか333人の聴衆だけだ。青木尚佳 ©井村重人エマヌエーレ・セグレ長島剛子梅本 実©Claudio Papapietro

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