eぶらあぼ 2018.9月号
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863大テノール シネコンサート 初公開! 『3大テノール 夢のコンサート』銀幕にいま甦る奇跡の競演文:岸 純信(オペラ研究家)9/1(土)~9/21(金) 休映日9/3,9/10,9/18各日13:00『3大テノール 夢のコンサート』各日15:00『3大テノール 世紀の競演』**1990年ローマでの初共演コンサートを収録した作品のアンコール上映東京都写真美術館ホール問 樂画会(がくがかい)チケットデスク0120-954-618 http://gakugakai.com/ ここ30年のクラシック界の大ヒット、それは、新しい作曲家の登場でも人気曲の発表でもなく、“3大テノールの夢の競演”であったと思う。1990年、サッカーW杯決勝戦の前夜祭として、オペラ界が誇るスーパー・スター、ルチアーノ・ パヴァロッティ、プラシド・ドミンゴ、ホセ・カレーラスがローマでガラ・コンサートを開催したのである。この催しの背景には、闘病生活から奇跡的に回復したカレーラスの復帰を祝うべく、パヴァロッティとドミンゴが力を貸すという篤き友情が存在した。その後、コンサートの模様を収めたCDが発売され、空前の大ベストセラーとなったが、実は、筆者もそちらを買い求めた一人であった。「長所って、並べると分かりやすいな…」と聴きながら頷いたものである。 この9月、東京都写真美術館ホールで上映される『3大テノール 夢のコンサート』は、90年の発表記者会見の模様から、記念すべき第1回の舞台裏や本編の抜粋、そして2002年まで世界各地で開催された圧倒的なパフォーマンスなど、選りすぐりの見どころをぎっしり詰め込んだ貴重な映像である。〈フェデリコの嘆き〉や〈星は光りぬ〉といった名アリアは勿論、サルスエラの名曲やカンツォーネなど、親しみやすい名旋律をずらりと並べ、オペラの初心者層にも分かりやすく纏められたこの映像で、輝かしいパヴァロッティ、豊麗なドミンゴ、引き締まったカレーラスと三者三様の美声を堪能してみよう! 歌声が紡ぐ絆コンサート HIBIKU世界で活躍する歌手3人がオペラの名曲を披露文:東端哲也9/8(土)13:30 新潟県民会館問 新潟日報社 ふれあい事業部025-385-74709/19(水)19:00 神奈川県民ホール(小)問 HIBIKU実行委員会090-2238-2020 音楽シーンが充実の9月は、東京以外でも魅力的な公演が目白押し。新潟県民会館と神奈川県民ホールで開催される「HIBIKU」は世界で活躍する3人の歌手が名曲を紡ぐコンサート。 ソロではまず今年、東京芸術劇場のビゼー《真珠採り》(2月)や軽井沢大賀ホール《春の音楽祭》(4月)の出演も記憶に新しいテノール、ジョン・健・ヌッツォが十八番のプッチーニ〈誰も寝てはならぬ〉を披露。日本人には長野五輪での「第九」ソロ(小澤征爾・指揮)が未だに忘れられないロシア生まれのバス、デニス・セドフによる〈中傷はそよ風のようなもの〉(ロッシーニ《セビリアの理髪師》で音楽教師バジリオがバルトロに吹聴するユーモラスなアリア)も聴きどころだが、特に新潟公演では同県出身のコロラトゥーラ・ソプラノ、今井あいによる〈サマータイム〉(ガーシュウィン《ポーギーとベス》の名高い子守唄)が大いに盛り上がりそうだ。他にもナポリ民謡や日本歌曲まで盛り込んだ充実のプログラム。加えてモーツァルト《ドン・ジョヴァンニ》から、主人公が村娘のツェルリーナを誘惑する場面の二重唱〈お手をどうぞ〉やグノーのオペラ《ファウスト》フィナーレの三重唱など、ステージで繰り広げられる魅惑のアンサンブルも聴き逃せない。 当日は多くの声楽家と歌曲リサイタルで共演を重ねている栄長敬子がピアノ伴奏を担当。オペラ・コンサートが初めてという方も気軽に足を運びたくなるような内容になるはずだ。ジョン・健・ヌッツォデニス・セドフ今井あい左より:プラシド・ドミンゴ、ホセ・カレーラス、ルチアーノ・パヴァロッティ
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