eぶらあぼ 2018.9月号
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8585安達朋博 ピアノリサイタル日本デビュー11年目、ブラッシュアップされた演奏に期待大!文:宮本 明9/25(火)19:00 杉並公会堂問 日本クロアチア音楽協会03-6869-5641 http://www.jcms-tokyo.com/ 日本クロアチア音楽協会を起ち上げ自ら代表を務めるなど、クロアチアの音楽作品の普及と紹介を背負って活動するピアニスト安達朋博。昨年の日本デビュー10周年を記念したサントリーホールでのリサイタルも成功だった。この9月、恒例の杉並公会堂での演奏会を開く。多岐にわたる彼の活発な活動のなかで、「自分に課題を課し、自分自身の発展のため」と位置づける里程標が、毎年のこのコンサート。「この数年間は、テクニックを改造したり、プールで体幹を鍛えたり、ほかのジャンルのものも聴いたりしてきましたが、自分なりに取り組んできたことを生かして、久しぶりに弾く曲でまた新しい自分磨きをしたいと思っています」と語る。 7月に閉幕したFIFAワールドカップではクロアチアが大躍進。見事準優勝を果たした際には彼のもとにも多くの祝福メッセージが届いたそう。それだけ彼の活動にクロアチア愛が浸透している証左だが、もちろんクロアチア音楽だけを演奏しているわけではない。同国の女性作曲家ドラ・ペヤチェヴィッチの2曲のピアノ・ソナタを毎年交互に弾くのは恒例で、今回は第1番。しかし他は、これまでサロンでしか弾いたことがないというモンポウの珍しい「ショパンの主題による変奏曲」、そしてショパンの「幻想ポロネーズ」とシューマンの「フモレスケ」という多彩なプログラム。「作品の内側にあるものにまずは自分自身が共感し、共鳴する音を目指して、皆様と良い時間を共有したい」という入魂の選曲を聴こう。びわ湖ホール オペラへの招待《ドン・ジョヴァンニ》意欲的な指揮と演出、フレッシュな顔ぶれで織りなすドラマ・ジョコーソ文:笹田和人9/15(土)、9/16(日) 各日14:00 びわ湖ホール(中)問 びわ湖ホールチケットセンター077-523-7136 http://www.biwako-hall.or.jp/ 手ごろな価格で本格的な舞台を味わえる上、開演前には演出家による解説もあり、「初心者にも気軽に楽しめる」と好評のびわ湖ホールのシリーズ「オペラへの招待」。今回はモーツァルトの傑作《ドン・ジョヴァンニ》全2幕(イタリア語上演、日本語字幕付)を取り上げる。このところ快進撃を続ける園田隆一郎の指揮(レチタティーヴォの通奏低音も受け持つ)も魅力だが、シリーズ初登場となる気鋭の演出家伊香修吾にも注目。オーケストラは大阪交響楽団が起用された。 イタリア人作家ロレンツォ・ダ・ポンテの台本に基づく同作は、モーツァルトが31歳の1787年、プラハで初演。稀代のプレイボーイの、恋の遍歴と悲惨な末路を劇的に描くドラマ・ジョコーソ(悲喜劇)だ。今回の上演では、タイトルロールに迎肇聡(むかい ただとし)と五島真澄、騎士長に松森治と林隆史、ドンナ・アンナに飯嶋幸子と藤村江李奈ら、びわ湖ホール声楽アンサンブルのメンバーによる、フレッシュな実力派のダブルキャストで臨む。 「モーツァルトの、いわゆる“4大オペラ”の中で、最も捉えがたく、近寄りがたい印象を受けていたのが《ドン・ジョヴァンニ》。今回、改めて楽譜に向き合い、このオペラの手強さを感じています」と伊香。「この作品には、あえて明確に描かれていない部分もある。それを観客にどれだけ“感じて”もらえるか、挑戦したいと思います」。そして、「多様な楽しみ方が存在する昨今ですが、オペラは劇場空間でこそ、本来の魅力を最大限に発揮できると信じています。目の前で息づく舞台を楽しんでいただければ…」と力を込める。左より:園田隆一郎 ©Fabio Parenzan/伊香修吾/迎 肇聡/五島真澄左より:松森 治/林 隆史/飯嶋幸子/藤村江李奈
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