eぶらあぼ 2018.9月号
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78エストニア国立男声合唱団“合唱大国”が誇る名門合唱団が待望の初来日文:宮本 明9/23(日・祝)14:00 すみだトリフォニーホール問 テンポプリモ03-3524-1221 http://www.tempoprimo.co.jp/ 合唱ファンにはよく知られているように、バルト海に面したエストニア、ラトビア、リトアニアの「バルト三国」は、世界的にもまれに見る合唱の国だ。ロシア統治時代から、彼らの民族意識・愛国意識の象徴こそが合唱で、国民的行事として大規模な合唱集会が開かれてきた。エストニアではソ連時代末期の1988年、首都タリンで「歌う革命」と呼ばれる合唱イベントに30万人が集まり、独立の気運を高めた。 その合唱大国を代表する「エストニア国立男声合唱団」が待望の初来日、日本のファンの前でヴェールを脱ぐ。プログラムは、前半がラフマニノフ「徹夜祷」(抜粋)、シベリウス「フィンランディア賛歌」、シューベルト「水の上の精霊の歌」、メンデルスゾーン「晩課の歌」など。中でも「フィンランディア賛歌」が楽しみだ。第二の国歌としてフィンランドで愛される歌だが、伝統的にエストニアは、かつての宗主国ロシアよりも、50kmほど海を渡った対岸フィンランドとの文化的な繋がりが濃く、彼らにとってもその誇りを共有できる歌なのだ(N響定期ではシベリウスの大曲「クレルヴォ」も歌う)。そしてメインの後半は、エストニアを代表する合唱作曲家ヴェリョ・トルミス(1930~2017)の作品集。民俗音楽を源泉とする土俗的なエネルギーに満ちた響きを聴かせる。 首席指揮者・芸術監督のミック・ウレオヤは1970年タリン生まれ。彼自身もこの合唱団の出身。なお、トルミスの代表作「古代の海の歌」では、山脇卓也率いる日本の「合唱団お江戸コラリアーず」が共演。団名はややお茶目だけれど実力は一級品だ。ベルリン・フィル ブラス・トリオ凝縮された最高峰サウンドの真髄文:柴田克彦9/29(土)18:00 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール問 渋谷区文化総合センター大和田03-3464-3252 http://www.shibu-cul.jp/ 金管三重奏を聴いたことがありますか? と、あえて問う理由は、金管アンサンブルの中でも、五重奏や7~10人の合奏に比べてメジャーではないから。愛好家の間で行われてはいる。だが何せ3人…。鑑賞用となれば、完璧な奏者が揃って初めて成立する。そこに登場するのがベルリン・フィル ブラス・トリオ。世界の最高峰ベルリン・フィル(BPO)の面々ゆえに極上の形で条件をクリア。この初来日で、3本の絶妙なハーモニーやスリリングな応酬、迫真的な個々の妙技といった金管三重奏ならではの魅力を、存分に知らしめる。 メンバーはまず首席トランペット奏者のガボール・タルケヴィ。強靭な音色と技巧を誇る世界のトップ奏者だ。ホルンは、20歳でスロベニア・フィルの首席の座を射止め、2011年にBPOへ加入したアンドレイ・ズスト。彼はかのバボラークの抜擢で水戸室内管と共演し、大きな注目を集めた。そしてトロンボーンは、デンマークのオケ入団から僅か7年でBPOに登り詰めたイェスパー・ブスク・ソーレンセン。PMFへの出演などで日本でもおなじみの存在だ。この現代のリーダー格と新世代二人の新鮮なコラボは、金管三重奏の新たな可能性を切り開くに相応しい。 プログラムは多彩。同形態の大定番であるプーランクのソナタやネリベルの三重奏曲はもちろん王道の聴きもの。このほかピアノ(児嶋一江)を交えた楽曲や全員のソロ曲もあるなど、様々な角度から楽しめる。なお若手演奏家(金管五重奏)のための公開マスタークラス(公演当日・同会場16:00)も開催されるので愛好家は要注目。ここは最高峰オケのエッセンスをぜひ体感したい。
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