eぶらあぼ 2018.9月号
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68©Peter C. Theisアンドレイ・イオニーツァ チェロ・リサイタル9/19(水)19:00 浜離宮朝日ホール問 パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831 http://www.pacific-concert.co.jp/アンドレイ・イオニーツァ(チェロ)名作と名器が導く“音の旅”にお連れします取材・文:寺西 肇Interview 2015年にチャイコフスキー国際コンクールを制し、一躍スターダムを駆け上がったルーマニア出身のチェリスト、アンドレイ・イオニーツァ。2年ぶりの来日リサイタルで、メンデルスゾーンとプロコフィエフのソナタを軸に、個性的なプログラムを披露する。「新たな一面を、皆さんにお見せできれば」。鮮烈な音楽創りで、聴く者すべてを魅了する俊英は語る。 「チェロを弾いている時、私自身の中から、音楽が自然と話しかけてくる感覚に捉われます。そして、一種の流れのようなものが、体の中を駆け巡るように感じます。演奏家にとって、自らの意識に忠実であり、内なる芸術の声に耳を傾けることが、最も重要だと思います。これこそが、芸術家にとって、最も確固たるものだからです」 今回は、メンデルスゾーンの第2番とプロコフィエフ、2つの大作ソナタを大枠に据えた。 「チェロのレパートリーでは、総じて東西ヨーロッパの対比が明確。特に、ドイツ・ロマン派と、20世紀ロシアの偉大な作曲家の手になるソナタは、その象徴と言えるでしょう。これらの作品はチェロを語る上で、欠かすことができません」 そして、「自分が大好きな作品のひとつで、最も知的に書かれた傑作」と評する、マルティヌーの「ロッシーニの主題による変奏曲」を。さらに、「シチリアーノ」「夢のあとに」「蝶々」とフォーレの小品を組み合わせる。 「燦々と光り輝くメンデルスゾーンから、重々しく深奥なプロコフィエフの世界へ。皆さんを“音の旅”にお連れしたいのです」 「音楽に新たな視点を与えてくれる、頼れるパートナー」というピアノの薗田奈緒子とは、2年前の来日初リサイタルでも共演している。 愛器はドイツ音楽財団から貸与を受けた、クレモナの銘器ロジェリ(1671年製)。 「こんなに素晴らしい楽器を、弾けることに感謝しています。芳醇で深い響きを持つ、この楽器の持つ更なる魅力を探求する毎日です」 チェロを始めたのは8歳から。 「ピアノを弾いていたのですが、先生から弦楽器を勧められました。すると、最初のレッスンから、チェロに恋してしまったのです!」 ベルリン芸術大学で学び、14年には難関・ミュンヘン国際コンクールで第2位に。そして、その翌年のチャイコフスキー国際コンクール優勝で「新しい人生が幕を開けた」そうだ。 「新しい生活スタイルに慣れる必要がありました。旅も多いですし、どのステージでも大きな責任が伴います。しかし、それは私がずっと求めてきたこと。愚痴を言ってはいられません。また、ソリストとして成功できたとしても、バランスのとれた生活を維持できなければ、全く意味がありません。人生においても成功できた時こそ、音楽家としての成功も得られると思います」田村麻子(ソプラノ) × 神﨑えり(ピアノ) ジョイント・リサイタル聖母への祈りと即興のイマジネーションを旋律にのせて文:東端哲也 米国を中心に世界の歌劇場で活躍するソプラノ、田村麻子と、作編曲だけでなく、即興演奏家としても知られるピアニスト、神﨑えりによる魅惑の共同ステージが音楽の友ホールに登場。第1部は田村の代名詞であるアルバム『ジュエルズ・オブ・アヴェ・マリア』の収録曲としてもお馴染み、様々な作曲家による「聖母マリアへの讃歌」を神﨑の伴奏でたっぷりと。有名なバッハ=グノーやシューベルト、カッチーニの作品はもちろんのこと、フランクやピアソラなどによる佳曲も聴きどころ聖なる母の愛と祈り 10/1(月)18:30 音楽の友ホール問 TiSEg LLC. コンサート企画03-6876-6472 http://tisegconcert.strikingly.com/田村麻子 ©Yoshinobu Fukaya_aura.Y2だ。第2部ではプレミアムシートの客席から募った、「母の愛」「祈り」の題目で連想される言葉を繋いで作った文章などを用いて、歌とピアノで即興演奏を披露。ここでは言葉から受けるイマジネーションをめぐる、二人の呼吸や絶妙な掛け合いが楽しめるはず。加えて、二人で書き下ろしたオリジナル新曲〈聖なる母の愛と祈り〉の初演も目玉。特別な夕べになりそうだ。神﨑えり
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